お前が一般人と言い張るには、どう考えても無理があるだろ!
俺は目の前の惨状を見て言った。
惨状を創り出した当人に向けて。
「どこが一般人だ」
「いや、俺は正真正銘の一般人だ」
「嘘つけ!」
「嘘じゃない」
俺は、前の前の一般人といいはる何者かーーが持っている、禍々しいしいオーラを放つ大剣を指さしていった。
「お前が一般人と言い張るには、どう考えても無理があるだろ」
さっき、これからものすごい爆風が出たぞ。
そして目の前の地面にクレーターをつくったぞ。
モンスターに囲まれてたから命は助かってほっとしてるけど、別の問題でてきただろ。
それは目の前にいるこいつの正体だ。
俺は借金まみれの20代の男だ。
つきあっていた女性にはめられて、多額の借金の背負うことになった。
その額が額だし、人目を集めるような揉め事があったので、誰も普通の仕事ではやとってくれない。
だから、1年前に冒険者になることにした。
冒険者になって、地道にお金をかせいでいたんだが、うっかり迷子になってしまった。
見知らぬ場所で依頼のモンスターを数匹倒してくるっていう簡単な依頼だったんだけど、新しくやってきた土地だったし、地図も知らない間になくしていたから、大変だった。
そこで、親切な一般人の男が道案内してくれてたんだけど、途中でモンスターに囲まれちまったんだよな。
それで泡食ってたら、なぜか一般人であるはずの男が、どこからか禍々しい大剣を取り出して、モンスターを全部やっつけてしまった。
こいつどう考えても一般人じゃないだろ。
それによくよく考えてみれば、モンスターが出るようなところを、一般人が一人でうろついているわけないしな。
「正体言えよ、お前だれだよ」
「だから一般人だ」
「頭から魔族特有の角が生えだしてきてるが」
「これはあれだ。お洒落だ」
「現在進行形で伸びてるんだが」
「そういう仕掛けのおしゃれだ」
「背中には黒いツバサが生えてきてるんだが」
「これはマントだ」
「どう考えてもマントって生地じゃないし、バサバサ動いてるんだが」
「変わった生地でできた、自分で動くマントだ」
「お前、一般人といいはる魔族の馬鹿って言われたいの?」
「くっ。もはやこれまでか。途中まではいい線いっていたのに!」
「どこもいい線いってねーよ」
なんてくだらない会話を経て、一般人と言い張る何かは、魔族だということが分かった。
バレバレだったけどな。
さっさと言えよ、くらだないことに大分時間かけちまったじゃねーか。
まあ、こいつの気持ちも分からなくはないか。
魔族と人間は、一昔前には戦争をしていて、お互いにまだ禍根が残っている。
魔族の国と人間奥には、今ゆっくり少しずつ交流している最中だ。
とはいっても、好奇心が強かったり、向こう見ずな連中があるから、人間の国を堂々と歩いている奴もいるけど。
だからこいつもそういうやつなんだろうな。
「くっ、せめてツバサに! 背中のツバサに毛虫がついたのを我慢していれば隠し通せたものを!」
「いや、それ以前の問題だから。しかも毛虫が理由で、バサバサやってたのかよ」
こいつこんなんでよく今まで生きてこられたな。
さっきの見るに強いんだろうけど、禍根のある人間は大勢いるだろうに。
「はっぁ、もういいよ。助けてくれてありがとよ。ついでにお前はなんでこんなとこにいるんだよ」
「病気の家族のために、人間の国でしか手に入らない薬を買いに出ていてな。しかし、魔族だと分かると不要なもめ事を起こしてしまうから、変装していたんだ」
思ったより真面目で優しい奴だった。
アホだけど。
このまま放っておいたら、絶対揉め事に巻き込まれるだろうな。
目に見える。
人間達に囲まれながら、角をはやして、翼をバサバサさせているこいつの姿が。
ちょっと手助けしてやるか。
「はぁ、ったくしょうがねーな。助けてもらった恩があるから。薬くらいやってきてやるよ、どこの町だよ」
「そうか、それはありがたいが、実はリエットという町へな、ハディールという町から歩いて向かっている最中なんだが、まったくたどりつけなくて」
「正反対じゃねーか!」
この後滅茶苦茶反対方向まで行って、変装とけかけるこいつのフォローもしまくって、薬をかって、また魔族の国まで送っていくまで数か月も一緒に行動することになるとは思わなかった。
もうそこまでやったんなら、最後まで見届けてやるよと、ついでに魔族の国に入国してきて。ズッ友だと病床の家族に紹介されるというおまけつきでな。




