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宰相ジョエル・マクラウド

 アレックス王子の執務室の前で佇立している近衛兵に挨拶をし、控えの間に入った。


 アレックスは、官僚のだれかと話をしている。


 執務室内からアレックス王子とだれかのくぐもった声がきこえてくる。


 ティーセットは、すでに運ばれている。それを控えの間のガラス扉からテラスへと運びだし、セッティングを始める。


 本日のお茶のお供は、マドレーヌである。王宮付きのパティシエのスイーツもまた、料理人たちによる料理の数々同様絶品なのである。


 ジャム、チョコチップ、プレーン、バナナ、ナッツ。


 お皿の上に五種類のマドレーヌが二人分並んでいる。


(すごく美味しそう)


 お腹の虫が騒ぎ始めた。


 そういえば、今日もまたランチの時間がとれなかった。


 毎日、多忙をきわめている。なかなか食事にありつけない。前の人生とは違う意味で、食事をとることができない。


 だから、アレックスのティータイムで飢えをしのいでいる。


 ここでお相伴できるので、そういう意味ではアレックスに付き合わされるのもありがたい。


 誘惑に打ち勝ちつつセッティングが終ったタイミングで話が終ったらしい。執務室の扉が開き、控えの間にだれかが出てきた。


 見送る為に控えの間に戻った。


 宰相のジョエル・マクラウドが訪れていたのだ。


 彼は、こちらを見ている。


 彼は、ハッキリいってかっこいい。知的な美貌に長身で筋肉質とルックスも抜群。やさしくて几帳面。それでいて自分というものを持っている。だけど他人にそれをおしつけたりしない。


 そう。彼もまた、わたしの一度目の人生のときの彼とは違う。


 アレックスや侍女長やわたしと同様に。


 ジョエルの娘は、アレックスやわたしと年齢が同じくらい。彼と彼の亡くなった奥様は、いわゆる政略結婚だった。ふたりが結婚し、すぐに娘ができている。


(ジョエルは、アレックスやわたしより二十五、六歳くらい年上だったかしら?)


 ジョエルは、すでに宰相として才腕をふるっている。政治家として、一番精力的に活動している時期といえる


 とはいえ、彼はわたしが彼に殺される前七十歳を越えていた。彼は、その頃でもいわゆるシルバーグレイで渋カッコよかった。つまり彼は、政治家としても当主としても年齢に関係なくいつでも現役で精力的に活動しているというわけ。


 アレックスを幽閉して殺したり、わたしを口封じと冤罪に仕立て上げる為に殺すという悪だくみも、精力的に行っていたけれど。


 ジョエルは、アレックスを傀儡の国王に仕立て上げ、幽閉して以降ずっと権力を握り続けていた。彼がカニンガム王国の支配を続けていた。


 その彼の支配が、ほんとうにこのカニンガム王国の為になっているのか、あるいは正しいのかはわたしにはわからない。


 反乱とまではいかなくても、すくなくとも国民にとって彼の政治がいいかと尋ねられれば、それは「ノー」と言わざるえない。


 一部の特権階級にとってはいい政治である。が、ほとんどの国民にとってこのカニンガム王国のそれはけっして良いわけではない。つまり、住みやすい国ではない。苦しい生活や険しい人生を送る人たちがほとんどである。


 カニンガム王国の人たちは、不平不満を抱えている。だけど、彼、いいえ、彼らはそれをうまくあしらっている。


 その絶妙でいやらしいあしらい方こそ、ジョエルの真のスキルなのかもしれない。


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