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祖母が見たミトリ様


低く柔らかな声が、温かい布団と同じ温度でメイを包んでいく。

祖母の白露が語るのは、「ミトリ様」の物語。


三鳥の家は古くから神と人をつなぐ鳥の姿をした「ミトリ様」という存在を意識して暮らしていた。

ミトリ様は、北斗七星を崇める信仰や古い伝承に、

「人に知恵を授ける鳥のような姿をした」

「亡くなると魂をついばんで、羽ばたくように運ぶ」

「己の分身」と記されているが、真偽はわからない。


あやかしと畏怖する人々もいたが、

名もなき民だった三鳥家は、一族の幼子にミトリ様が宿り、数々の神託を告げたことから

富と名声を手にする。


「わたしらは昔から、願い事があると、ミトリ様に神様に伝えてほしいと頼んだ」

祖母の生まれた頃、三鳥家では代々6歳の6月6日までにミトリ様に見初められると、

力を授かると伝えられていた。

そして力を持った者は、自分の望み通り生きることはできなかった。

運命という大きな意識にあやつられて、それを果たす場所へと導かれた。

逆らってとどまれば、どこか上の空となり、従えば孤独。

一族それぞれに力の種類は違い、器用に生きられる者もいたが、

不器用な者は、運命と折り合いをつけることができず、ひっそりと姿を消した。


祖母は子供の頃にミトリ様を見たという。


「初めてミトリ様をみたのは、神社の境内でね。

地面に小枝で絵を描いていたら、動く光が見えて。

最初は風が木々を揺らすからだと思っていたの。

それが遊んでって誘うみたいに、丸い光が肩や膝にくっついては離れるからうれしくなって、

『わーっ』て大きな声を出して夢中で走ったら、光がすうっと高く舞い上がって青い空に透けて、

その時にきれいな小鳥が見えたの。

きれいだったねえ。冷たいラムネみたいに透明でキラキラしていて、

胸の奥にシュワシュワって小さな泡が弾けたみたいになって、

あんなに嬉しいことはなかった」


扇風機のブーンという音が、大きくなったり、小さくなったりを繰り返している。


「それから?」


「石段のとこまで来たら、小鳥が梅の枝に舞い降りて、

だからそっと近づいて、ゆっくり手を伸ばしたの。

捕まえようとしたんじゃなくて、ただ触ってみたくてね。

もうちょっと、という時に羽がふわっと開いて、そのまますうっと消えてしまった。

慌てて空を見上げたけど、どこにもいなくて。

そうしたら、「パンッ」て誰かが手を打つような音がして、

まぶしかった陽射しやうるさいぐらい鳴いていたセミの声や、遠くから響いていた線路を走る列車の音が一瞬で止んで、

おばあちゃん、薄暗い静かな境内に一人で立っていたの。

あれは不思議だったね、あんなにうるさかったのに。

何度も辺りの音に耳を澄ませたけど、何にも聞こえなかった」


「その小鳥が、ミトリ様だったの?」

「さあねえ」

「誰かに言った?」

「言ったような気もするけど、覚えていないねえ」

「私も見られる?」

「どうだろうね、お前は山へ行ったり、そうかと思うと川で遊んでいて、

ミトリ様もお前を追いかけるのは大変そうだ」


メイが笑いながらうなずくと、祖母も笑った。


その時、蚊取り線香の匂いが急に勢いを失ったような気がして、気になっていたことを口にした。

「おばあちゃん、みんな鳥籠を持ってどこへ行ったの?」


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