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愛の船  作者: 悠木 泉
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告白

 病室の大きな窓から、五月晴れの空を見ていたら、このままで良いのかという思いが湧いてくる。このまま何もせず朽ち果てて行くのは悔いが残りそう。ダメ元を承知で、星斗さんに事情を話して、協力を頼もうかと思う。

たった一つの希望は、彼が物事に動じない所だ。

驚くような事を聞いても落ち着いて、冷静に、臆することなく聞けて対処出来る気がする。それが出来なければ、救命士は勤まらないと思う。彼に賭けて見よう、賭けるしかない。

 星斗さんに時間が貰えるかを先に聞く。午後なら大丈夫というので、言葉を考えながら待つ。やがて、来てくれた彼の顔を見ると、やはり、迷う。どうせ断られるのだから、びっくりはさせるだろうが話すだけ話そうと決心する。

 星斗さんは黙って、けれど時々頷きながら聞いている。

「驚かせてすみません。勿論断って頂いて構いません。無理な事を頼んでいるのですから。今の話は聞かなかったことにしてもらったら良いですから。」

星斗さんは、私の声は聞こえたはずなのに何も言わない。いつも通りのやさしい表情だが。しばらくして、口を開く。「何か人に言えない事情があるような気はしていました。お話良く分かりました。明日まで考えさせて下さい」

「本当に御免なさいね。驚かせて。」私はあとの言葉が見つからず何も言えない。

「一つだけ聞かせて下さい。なぜ、僕にそんな大事な事を話されたんですか?」

「あなたなら真摯に、冷静に、受け止めて頂ける気がしたんです。その力があると思いましたし。」

「そんな風に思って頂いて嬉しいです」にっこり微笑むと彼は部屋を出て行った。


 僕は美月さんからの話を聞いて、すべての謎が解けたと思った。70才の人の学生時代にコンビニもコンビニコーヒーもなかったはずだし、「アナと雪の女王」を見ることも、その主題歌を聞くことも出来ない。それなのに美月さんは楽しそうに話すし、友達と携帯で、連絡していたと言っていたし。車椅子に乗る時、手を取ろうとすると、少し戸惑った様子だったし、手を取るとはにかんでいたし。彼女の言う通り27才なのだと思う。だからと言って、自分が協力する事はないのだが、打ち明けてくれた以上、人として、救命士として力になりたい。こうして、ここで出会ったのも、僕に好意をもってくれたのも縁があっての事だろうから。それに、彼女が入院した時に比べて若くなったような気がする。心臓の方が落ちついたからかもしれないが、かなり良くなっているし、今は杖なしで部屋の中を歩いている。僕と短時間でも一緒にいて話をしている事が、効を奏しているならいいけれど。


 私は美月さんから、退院した事と秘策に協力してくれる男性が見つかったというメールをもらった。すぐに彼女のマンションに出掛けた。

「妙子さんに嬉しいご報告が出来ました。」

「本当によかった。私も嬉しいです」美月さんから、星斗さんの事を詳しく聞く。信頼できる良い人で安心する。

週一回、会ってお茶したり、食事したりすると言う。今日ここに来たのは、大事な事を話すためでもある。

「星斗さんに会う前にお話しておくことがあります」

「はい。」

「以前、秘策のお陰で若返った人がいると言いましたね。実は私のことなんです」

「妙子さんの事」美月さんは驚いてはいるが、真っ直ぐに私をみて「お話し聞かせて下さい」と言った。


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