出会い
ある薬の副作用から急激に歳をとってしまった、27才の私は見かけが70才のお婆さんになっている。
少しでも細胞が若返る方法はないかと、あちこちの病院(怪しい所も含めて)を訪ねたが、良い結果は得られなかった。訳の分からない、何が入っているのかも知らない薬を飲み体調を崩した事もあった。もう、駄目か、このまま若く成れないまま病に倒れるか、枯れ木のようにもっと年老いて、老衰であの世に行くのか。途方に暮れて10件目の病院を出て、公園のベンチで休んでいた時だ。
「ちょっと、宜しいですか?」と声を掛けられ顔を上げると、美しい女性が立っている。30代半ばというところか。黒髪を後ろで一つに束ねて、目鼻立ちのはっきりした顔立ち。優しい中にもどこか凛とした、知性を感じさせる。「何でしょうか?」と尋ねると「お隣りに腰掛けても宜しいですか?」と聞く。
それが私と妙子さんとの出会いだった。渡された名刺には医師とある。妙子さんは私がさっき訪ねた病院で非常勤で医師をしていて、私の話を聞いたという。
「2、3質問しても宜しい?」
「はい」
「やはり、若返りたいですか?」
「もちろんです」
「そうですよね。もし、若返る方法があるとしたら試してみたいですか?」
「えっ?そんなものがあるんですか?」
「あるには有りますが、簡単な事ではありません。今はそれだけしかお答え出来ない。唯効果はあると思います。実際、若返った人を知っておりますから。」
「本当ですか?」
「はい。本当の事です。最後にもう一つお聞きします。何歳まで若く成りたいですか?」
そう聞かれて私はしばらく考えた。
「27才に戻れれば一番嬉しいですが、そうなれば身体に負担が掛かり過ぎるのではないかと思います。もし、叶うのなら20才、いえ10才でもを構いません。健康でいられる年齢であれば本望です。」
「確かに。賢明なお考えだと思います。良く分かりました。兎に角、もう少し時間をかけて考えてみて下さい。一週間後の午後4時にここでお会いしましょう。その時もう一度お気持ちを聞かせて下さいね。」
そう告げると妙子さんは夕暮れの街に消えて行った。
家に帰るとどっと疲れが出たのか食事もせず、すぐに眠ってしまう。
翌朝、やっと落ち着いて昨日の事を思い出し考えてみる。妙子さんの言った、細胞を若返らせる秘策とはどんなものなのか。何であれ効果があるのなら試してみたい。このまま朽ち果てて行くのはやはり後悔が残りそうだ。実際、若返った人がいるならなおさら試したい。鏡が映し出す自分の姿を見詰めながらそう思った。
1週間後、私は妙子さんに会い気持ちが変わっていない事を告げる。「本当に27才に戻れなくても構いませんか?」「はい。よく考えましたが、そこまで戻る事を願うのは欲どおしいとも思うのです。上手くいえませんが、運命に逆らい過ぎるとバチが当たる気がして」妙子さんはニッコリ微笑むと「確かにそうかも知れませんね。美月さんのお気もちよく分かりました。それでは、例の秘策をお教えしましょう」場所を変えた方が良いとその後、妙子さんの自宅に向かった。
歩いて数分の静かな住宅街の一角。古いが手入れの行き届いた落ち着いた感じの家だ。応接セットの置かれた、庭の見える畳みの部屋で妙子さんはゆっくり話し始める。その話は驚くべき内容で、テーブルに置かれたコーヒーに手を付けるのも忘れるくらいだった。妙子さんは話し終えると、何か聞きたいことはあるかと尋ねる。すぐに答えられなくて、カップを手に一口、二口、コーヒーを飲むが味がよくわからない。しばらくして、最初に聞いた、秘策を実践して若返ったという人の事をもっと知りたくなる。「その人はあなたと同じ薬を飲み、同じように年老いた。でも、秘策のお陰で元の年齢まで若くなり今も元気にしています。」私はそれを聞き、安心した。しかし、その秘策が実践できるかどうか。とても、難しいというより不可能なこと。今の私には絶対無理なことなのだ。悲しいけれど、悔しいけれど . . ..




