ちょっと自分を追い込んでみました(1)
「そうでした! 色々ありすぎてすっかり忘れて居ました! 私、クシャナっていいます! 一応、風などを司ってはいます」
「へぇ、思ってたよりも可愛い名前だったんだ」
なんかもっとなんちゃら如来とか、なんちゃら菩薩とかそんなの想像してた。
「かっ、かわっ!? そ、そそ、そんな事ないですよ!
既に反応が可愛い。
「そ、そんな事より、早速仕事に取り掛かりましょう! ね!」
話を逸らした……!
可愛い!
「えっと、今ある樫原さんのお仕事はちょっとだけです。ちょっと人類を作るだけですよ」
軽く言ってるけど、スケールがデカい!
「だけど私、そんな事出来ないけど」
「そこは安心してください! しっかりとバックアップしますので!」
そういう問題じゃない気がする。
「でも、それだけ?」
「はい、これだけですよ。既にマルチ用は作り終わったので、今はソロ用のストーリーの為の土台を作る段階です。まぁ実際、私達の仕事なんてそんなもんですよ。ストーリー自体は向こうの脚本家が作っていくので、『私達という存在がいる世界』というものにお話しをつけるだけですよ。向こうはこちらが本当の世界だなんて思ってませんけどねー」
そう言われてみればその通りだ。
私達がゲームをしているとき、キャラクター達はあくまでもそうインプットされたセリフを喋っているに過ぎないと、頭の中で変換していて、誰もこの液晶の中の世界が本当にあったなんて考える人なんていないだろう。
「そんなことはさておき、今から人類をちゃちゃと作ってしまいましょう!」
足元に大きな立体地図が現れる。
それは先程見た山や海などをそのまま写したものだった。
真ん中の輝いているところは多分現在地だろう。そして、この地図は七本の線で分けられていた。
「分かりますか? これがこの世界の全体図で、摩天楼から七本の線が伸びています。それで区切ってあるところの中心に、人類を生み出します。人類と言っても、やはり人間という種族だけではありません。そして、この地域の人種と、その長所、短所を考えていただくのが貴女の仕事です」
海の近くが私達の持ち場らしい。
「裏ボスの皆さんには、一人一つの人種を作っていただいており、貴女で最後ですかね」
何か一種族か……それなら、
竜人族!
数が少ないけどとっても強い!
特に防御力が高い!
回復もできる万能タイプ!
裏を返せば器用貧乏!
ってな感じでいいかな。
「オッケー! それじゃあ、ここに手を翳せばいいの?」
「はい。そうすれば樫原さんのお仕事はほぼ完了です」
じゃあやるかー!
翳した部分が数秒輝き翳した右手の甲に空にあった紋章が浮かび上がった。
「これは?」
「樫原さんがその地域の長になった証拠ですね」
地域の長かぁ……これを見せたらなんかしてくれるのかなぁ。
光は収まり立体地図も消えてしまった。
「樫原さん、お仕事お疲れ様でした。この後は特にやる事も無いので、そうですね……一応、データを送って、完了まではこちらで後数百年以上、もしかすると千年はかかってしまう可能性もあるので……どうしましょう」
数千年? 今数千年って言った?
「え? 数千年もかかるの? てっきり、数秒とかで終わると」
「時間を短縮すれば出来ますが、この世界の発展とかも見てみたくありませんか? それに、データとして送るには、まだここの生物の知識が不十分なので、それを彼らに蓄えてもらう期間でもあるんですよ」
やる事かぁ……そういえば、社長って私に何したんだっけ?
「あの」
「何でしょうか?」
「ステータス的なやつってどこかで見れたりします?」
レヴィアタンってどんな感じのステータスなんだろう。やっぱ魔法とかが高いのかなぁ。
「はい、ありますよ。見ますか?」
「見る見る!」
「じゃあついて来てください」
先程行った道とは真逆の方向へ進み、扉を開ける。
そこには、一枚の鉄板と、大きな半透明な球体が浮かぶ部屋があった。
「どうぞ、そこの板に手を置いてください。そしたら、上から順に名前、種族、レベル、体力、魔力、攻撃力、防御力、技量、記憶力、信仰、素早さ、そして、所持スキルが表示されます」
こう、手を置いて……?
ブォーン!
なんかゲーム画面みたいなのが出た……けど。
「えっと? 名前と種族は映ってるんですけど、その、本当に体力とかありますか? というか、アルファベット表示ですか!?」
「? どうしました? もしかして不具合でしょうか?」
「いや、映ってはいるんですけど……」
そう、映ってはいるのだ。しかし、映っていないのだ。
何がって? ステータスだよ。レベルとか体力とか魔力とかが。そして、説明になかったとあるステータスが増えてるんだよ。その名も………
筋肉:L
……
…………?
「「何で!?」」
ついハモってしまった。
すると突然、室内に聞き覚えのある声が響き渡る。
『それがプレゼントやぁ。とっても嬉しいやろ? ほな頑張ってぇな?』
気づけば、スキル欄に興味深いものがあった。
【筋肉】
常時筋肉の質がステータスに反映されるスキル。
筋肉鍛えれば鍛えるほど強くなる。
みんなで目指そう! 究極の肉体へ!
何これ?
Lって? きっとSが一番上だとして、Aがその下でしょ? ってことは?
L→J→I→……C→B→A→Sってこと? つまり?
後12レベルも上があるってこと?
じゃあ何? 筋肉が無い私ってとっても弱いの?
「樫原さん……」
「何?」
クシャナは晴れやかな笑顔でこう言った。
「筋トレしましょう!」
「嫌だ! ヤダヤダ! 筋トレって辛いじゃん! 前ちょっとやって死にかけたもん!」
「大丈夫! 貴女は不死身です!」
嫌だ! 絶対にやりたくない! 何か、何か無いかな!
あった! スキルの中のこの理力ってやつ!
「いいもんね! 私にはこの理力があるから!」
理力、発動!
『筋肉レベルが足りません。Bレベルにしてください』
必要レベル高過ぎじゃない?
じゃ、じゃあ、家事! 家事スキルなら!
『筋肉レベルが足りません。Bレベルにしてください』
嘘つけぇぇぇぇぇ!
この姿を見たクシャナはまた同じことを言った。
「筋トレしましょう!」
こうして、私の地獄の筋トレの日々が始まったのだった……