アビガンの副作用の可能性の一つに肺炎があることはちゃんと認識したほうがいいだろう
さて、アビガンの副作用は少ないという意見もあるのですがそれは何と比較した場合かが問題ですね。
確かにHIVや肝炎ウィルスの抗ウィルス薬よりは催奇性は小さいはずではあるのですが。
そしてアビガンの副作用の可能性は催奇性のみではありません。
とまあ重大な副作用として異常行動が確認されていて、その他にも類似薬の副作用の中には肺炎も入ってるんですよね。
一応催奇性以外のクリティカルな副作用は未だ報告されていないとはされていますが、新型インフルエンザ薬としても従来の治療薬では効果がないか不十分なときに限ってのみ使用が認められている存在です。
ちなみに1918年のスペインかぜも5月の流行当初は他の新型インフルエンザと同じく死亡率は無視できる程度で、同年1月から8月の死亡率は前年の季節性インフルエンザより低かったのです。
しかし1918年9月後半から致死率3%と重症化率が跳ね上がったのですが、この現象が弱毒性ウイルスから強毒性ウイルスに変異した結果であるとされて、新型インフルエンザや新型コロナの恐怖につながってもいるわけですね。
しかし突然の死亡率上昇はウイルス変異の強毒化ではなくではサリチル酸ことアスピリンをウイルス疾患に使用したのが理由でした。
1918年9月13日には公衆衛生局長官が、9月26日には海軍が、10月5日にはアメリカ医師会雑誌が「外国ではアスピリンで症状改善に成功している」とアスピリンをスペインかぜに推奨し大量のアスピリンを用いた結果兵士は肺水腫とそれに続く重症肺炎で死んだわけです。
アビガンを何故使わない? という理由の一つが現状では有効性と安全性が確立されていないからなのですね。
患者も医療従事者もどの人が治療薬かプラセボ薬を飲んだかがわからない状態で試験を行う二重盲検ランダム化比較試験で有意なデータが出ているわけではないということも考えるべきなのでしょう。
ぶっちゃけアビガンを投与して回復した症例をいくら集めても、アビガンのおかげで治ったのか、それともアビガンを使わなくても治ったのかの区別がつかないわけで、だからランダム化比較試験により優位な差が認められ、なおかつその際の副作用が小さいことも必要なわけです。
実際新型コロナウイルス感染症の特効薬になるのではないかと大きく取り沙汰されていた抗マラリア薬の「ヒドロキシクロロキン」が、標準的な治療では効果がなく、むしろ死者を増やしていた恐れがあるという結果も出てるわけですしね。