落とし穴
その日はなんだか憂鬱だった。
確かに現状には満足してないし、それなりに不満もある。しかし、何か特別嫌なことがあったわけではなかった。
だけど、なんとなく気分が優れなくてなにもするのにも億劫だった。
それでもなんとか身を起こし、歯を磨いて、着替えて、軽く朝食を済ませて家を出た。
その瞬間落とし穴に落ちた。一瞬何が起きたのかわからなかったが、とっさに上を見るともう地上の光さえも見えなくなっていた。
随分、深い穴のようで全然そこにつく気配はなかった。
(いつまでこうしてればいいのだろうか)
とりあえず、現状に身を任せることにした。
そんなに居心地は悪くない。
このまま落ちるとこまで落ちてしまおう。
私はそう思った。