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「他の者について、何か注意点はございますか?」


 他は大体大丈夫じゃないかな……一応スパイはいるけど。念の為に全員の事をチラチラ言っとくか。


「三年の城之内は裏があると思う。二年の大蔵は特に問題ない。小野寺先生は……」


 私は、「小野寺ティーチャーは問題ない」とは言えなかった。

 問題あるだろうよ、あのロリコン。

 いや、草の者には支障無いよ? 働いているって事は、全員大人でしょう? 幼児でなければ、気を付ける心配は無い。無いけど、問題はあるんだよ!

 言葉を濁す私に、十三が怪訝そうな表情になっていく。何か重大な問題でも?って空気になってくる。

 違う、違うんだ十三。重大問題だが、方向性が違うんだ!


「……問題あるが、関係ない」

「? はい」


 十三は首を傾げつつ、了承してくれた。

 良いよ……良いんだ、十三。調べればすぐに分かる事だから。その時に私の気持ちを知ってくれれば……。

 念の為、攻略済みの谷田も含めて監視が付く事になった。紫朗の注意通り、ルネは複数人数体制にしてくれるらしい。

 ……草の者、どんくらいいるの?


 家に着くと、十三は十三パパに話を通しに行った。

 私はホッとしつつ、夕食まで部屋でくつろぐ。


 ん? あれ?

 何で私の部屋のカレンダーにも、昨日の日付に丸ついているんだろう? メイドさんがつけたのかな? 昨日の事って、メイドさんにも重大な事だったのかしら?

 首を傾げつつ、ベッドにごろりと転がる。


 分かっている事を整理しておこう。


 「君尻」におけるキャラ攻略は、それぞれ難易度がある。難易度の難しい方から、紫朗>十三>小野寺ティーチャー>殺人鬼ルネ>二年大蔵>スパイ城之内>ドエム谷田となる。

 この攻略難易度が、ほぼそのままキャラを落とせる順番だ。紫朗を落とすには十三を落としている必要があり、十三に近付くには小野寺ティーチャーを落とさねばならない……と、こんな感じに続いている。


 ただし、殺人鬼ルートだけ特殊だ。難易度の位置に関係なく、彼の殺人現場に居合わせる事でスタートする仕組み。

 殺人鬼の位置は、ヒロインが朝の支度をしているシーンで分かるようになっている。背景音声っぽくニュースが流れており、その内容がルネの事件なのだ。何度か聞いた後に予測を立て、先回りして彼と出会う。

 ゲーム内ではこのニュース内容はランダムで、何種類か用意されていた。最初の一回でどのパターンか分かる為、覚えるのも難しくない。


 殺人鬼ルートを最初にすると、ライバルたちを殺してくれるので、攻略は楽になる。

 特に真性ロリコンのティーチャーは難易度が高く、ティーチャーが最終目的ならば、殺人鬼ルートを通った方が楽だ。


 実は、小野寺ティーチャーには思い人がいる。

 相手はちゃんとした成人で、「ありすちゃん」の愛称で生徒にも可愛がられる、国語教師だ。

 彼女は、小野寺ルートのライバルキャラでもある。

 ティーチャーが恋した時点でお分かりの通り、外見がロリだ。お約束のロリババァ。実年齢は小野寺ティーチャーより上という、意味不明な設定まである。

 合法ロリであるありすちゃんは、胸が慎ましい程度のヒロインでは、勝ち目のない相手だ。ありすちゃんレベルの合法ロリなどそうそう見つかるわけもなく、小野寺ティーチャーの愛は深かった。


 殺人鬼ルートだと、ライバルキャラで最初に、ありすちゃんが殺される。

 その後、次々とライバルたちが殺されていくのだ。


 私は身震いした。

 自分が殺されないから殺人鬼ルートはどうでも良いと思っていたけれど、そうもいかないわコレ。うっかりしたら千代も二三ちゃんも殺されちゃうじゃん……阻止しなきゃ。


 ライバルたちが助かるには、条件がある。


・ライバルルートを選ぶ

・殺人鬼ルートに入らない

・十三ルートを選ぶ

・紫朗ルートを選ぶ


 この条件のうち、ライバルルートは潰れた。既に谷田が落ちている以上、ドエム谷田のライバルキャラが仲間にならない。ちなみに、谷田のライバルは陸上部マネージャーです。分かりやすいわー。

 殺人鬼ルートも、十三・紫朗を狙ってきたから避けないだろう。この二人を落とすには、殺人鬼ルートもこなしつつ、殺人鬼ルネにライバルたちを殺させない必要がある。


 十三と紫朗はライバルキャラを殺されると、激怒して犯人を探し出すのよ。そして裏にヒロインが居た事を突き止めて、絶対許さないの。


 うん、そうなったら私も絶対許さないわ。そうならないようにしなきゃ。

 すっごい嫌だけど、紫朗が狙われるしかないかな……。

 あのヒロインが、十三で満足するとは思えないもの。十三落としたら紫朗までくるでしょう。実際、もうそんな感じだし。

 というか、キープ機能。おい、キープ機能お前だよ。お前がいるから絶対全員落としにくるに決まってんだろ。ちっくしょう。

 現実だとどうなっているんだろう、キープ機能。バブル時代のキープ君しか想像出来ないんだけど。大体あってそうで嫌だな。


 取り合えず、当面は様子見。

 今は紫朗が狙いっぽいから、ライバルたちは安全……なはず。


 いやいやいやいや、待って私。

 このままいくと、ルネが最初の殺人に入るよね? 一度殺すとどんどん殺すよね? ライバルたちに手を出すのは、それが原因でヒロインに会うからだし。

 今なら止められるのでは……?

 ルネを人殺しにしないで済むなら、そっちの方が良いじゃない。殺人鬼とか怖すぎでしょ! そんなの無いのが一番!


 ランダムルートは複数とはいえ、最初の一件でその後のルートが決まる程度のものだ。何度もやっていれば覚えてしまう。もちろん、私もだ。

 というか、草の者がルネを見張っていれば、殺せないんじゃないの? 一応、法に触れるから隠そうとしているし。見張りに気付かなかったとしても、草の者が止めるのでは?


 おや?

 既に殺人鬼ルート潰している?


 もちろん、確定ではない。何しろあのヒロインは、ゲーム上に無かったような動きをしている。私自身も二三ちゃんが池に落ちないように動いたし、ゲーム通りに行かないところは他にも出ると思う。

 でも、今のところ近隣で物騒な話は出ていない。予想外に殺人が早かった、という展開にはなっていない……多分。

 見張りをつけるのが間に合っていれば、殺人は防げるはず。


「紫朗さま、お食事の時間です」


 十三の迎えで、私は思考を止めた。

 時間経つの早いなぁ。考え事が多いから、時間が足りないよ。情報が入るようになったら、もう少し楽になるかなぁ。


「紫朗さまが上げた人物に、それぞれ草の者を付けました。通常は二人ずつのローテーションですが、鈴原ルネには『は』の者を全員付けております」


 食堂に向かいながら、十三が状況を説明してくれた。

 なんか、予想よりすごい事になっている。何人いるんだよ、草の者。

 っていうか、草の者たちローテーション組んでるのか。そうだよね、じゃなきゃ一人っきりで作業なんて、ブラックすぎて駄目だよね。

 ん? って事は、もしかして……。


「『い』の十も『へ』の五も、チーム名です」


 十三が勝手に察して答えを言った。

 くそぅ、今ちゃんと自分で思いつきそうだったのに! 答え先に言うなよ! 今のは絶対わざとだろ、分かっていて言っただろ! ドヤ顔しているって分かっているから、絶対振り返らないからな、くっそぅ!


 ぷんすこしてたら、食堂に辿り着いた。

 今日はイケメンダディがいない。マミィと二人だけの食事です。

 相変わらず美しいマミィと、マッチョシェフのお料理、大変素晴らしいですね。絵になります。

 だけどマミィも大概無口なので、二人だととっても静かなのよね。マミィとの食事って、「画像をお楽しみください」みたいな感じになっちゃう。

 実際十三はお楽しみだし。

 お前、もうちょっと抑えろよ。口角上がってんぞ。

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