幕間 雨の降る小屋にて
気が付けばあの禄でもない場所にまた立っていた。
何が何だか分からないまま自分はまた大人に虐げられていた。そして同じように二人と逃げ出した。だけどやっぱり私は一人になって彷徨う私をあの人たちはまた拾ってくれた。
◇
周りの音が聞こえないくらいの酷い雨だ。雨を防ぐ程度はできる小屋の中は森の中の木々に囲まれて夜ということもありとても暗い。そんな場所で声が響く。
「殺さないでくれ!!」
そこには命を乞う男の姿が一つ。
「子供たちを逃がしたことは謝る、謝るから!次は失敗しない!」
男が必死に説得をするが男の向かい側にいるフードを被った人間は何も語らない。ただいくつも転がる屍の中央に立って男のほうを見ている。
噎せ返る臭いが思考を濁すなか男はなんとか許してもらおうと言葉を紡ぐ。
男はこのフードの人間に依頼をされていた。少女と少年ようなものが描かれた紙を見せてこの子供を誘拐しろ。それだけ。依頼料はかなり高額でその後子供は好きにして構わない、逃走場所は確保してくれるという。そんなおいしい話食いつかないわけがなかった。実際子供を誘拐するところまでは簡単だったのだ。
しかしあのメイドのせいで。気づけば騎士に捕まっていた。
もう終わりだと思った時、奴がまた現れたのだ。何処から現れたのかそれは全てを理解しているかのように誰もいない道を進み、男たちは気づけば騎士の手から逃げ出せていた。何をしたのかは分からない。しかしフードの人間はかなりの魔法の使い手のようだ。そんなに実力を持っていながらなぜ自分で子供を捕まえようとしなかったのだろう。奴の後をついて行けば誘拐の計画に使われていたこの小屋に連れられた。それからは悪夢のようだった。
男と同じように金で雇われた者たちは惨たらしく殺され気づけば男一人しかこの場に立っていなかった。このままだと自身も殺されるのは時間の問題だ。
「金も先に払ってもらった分も全部返すから!」
「次は全員殺す!あの邪魔をした子供もだ!」
頭を抱えて震える男を見てどう思ったのだろう。一瞬の沈黙の後、風の切る音がして男は悲鳴を上げる隙もなく絶命した。
フードの人間は死んでいった者たちの懐にある金を回収すると机にどっかり座り膝に両肘を着いて手を組む。
考えるのは二人を助け出したあの子のこと。
「どうしてでしょう……」
そうぼそりと呟くと死体の後処理をすることもなく小屋から去っていった。
雨は止んだのにまだ彼女は泣き止まない。