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VRMMO【Parallel World】   作者: BLTサンド
第1章 Prologue
24/28

P.23 「類は友を呼ぶ」

【レオナルドの工房】


他の店は素人目ながらも、普通に何を売っているかは分かるものだ。


武器であったり、衣服であったり、食品であったり、何を取り扱っているかは一目で判る。


だが、この店は────まさに凪市場らしい、その言葉を体現した外観であった。


品の並びに統一感が無いのだ。


最初は武器を取り扱う店かと思ったが、どうやらそうではない。


三日月の様に湾曲した剣、フジツボが付いた鎧。

ただの煤けたマントに、ヒールが異様に高い女性ものブーツ。

挙げ句の果てには、冷凍カジキに、リンゴにしか見えない果物、というかリンゴである。

他にも鍋の蓋や、水風船が。


取り敢えず気になったので声をかけると、店の真ん中で木を削りながら箱の上に鎮座していた男が胡乱(うろん)げに顔を上げる。


「あの、すみません」


「……なんだ、冷やかしなら、さっさと去るのだな。我は暇では無い」


「いや、明らかに暇そうだったろ」


その奇怪な店の主人は芝居がかった言い回しをする男だった。


「センスのいい付け耳をしているから客かと思いきや。全く」


「付け耳?……ああ!」


店主の言葉にハジメは自分が付け耳をしている事を思い出す。


……無駄に精巧だから違和感無くて、すっかり忘れてた!


「ヤベエ!早くモッフィーさんの所に行かなきゃ!」


ハジメの中で焦りが再燃し、しかし、予想もしない所からそれに反応する声があった。

店主の男が、ハジメのこぼした言葉に作業の手を止め、ハジメを見上げる。


「……待て、今モッフィーと言ったか。それはケモノのそうこ店主のモッフィーか?」


「へ……?」


「あの『何でお前みたいな絶対カタギじゃねえ坊主がこの店に居んだよ』と、邂逅一番に言いたくなってしまうあのモッフィーか?」


言い過ぎじゃない?

同意はするけど。


「そうですけど…………あっ!」


……何で気が付かなかったんだ!


レオナルド。

そう、レオナルドだ!


俺はこの人を知っている。


「────トライエムの製作者」


アイテムボックスからトライエムを取り出すと、店主の男は作業の手を止め、トライエムに目が食いつく。


「それはMMM(トライエム)!……ふむ、という事は……ならば貴様、我が友シオンが言っていたテイマーギルドの新人か!」


「やっぱり……」


目の前の男が、トライエムの製作者にして、シオンの友人。


「シオンの後輩であるならば、自己紹介をしなくてはな。我が名はレオナルド・カルロ!同じくプレイヤーにして、シオンの親友。そして、ハジメへと譲渡されたトライエムとダブルエッジの生みの親である!」


饒舌な自己紹介、クセが強い。

レオナルドなりのロールプレイの一種なのか、それともコレが素なのか。

だが、それよりも気になるところが。


「あの、ダブルエッジも貴方が」


「レオナルドで良い。そして答えは『Yes』。ダブルエッジも我が手掛けた作品だ」


その言葉を聞いた時、ハジメの頭は自然と下がっていた。


「ありがとうございました」


「む、急に何だ」


レオナルドは急なハジメからの感謝に訝しむ。


「あなたの、レオナルドさんの武器のおかげで人を助けることが出来ました。その感謝を言いたいとずっと思ってました」


レオナルドは一瞬呆気に取られ、


「…………フ、フハハハハハハ!そうかそうか!直球過ぎる言葉にこそばゆくもあるが、発明家冥利に尽きるというものよ」


膝を叩いて、レオナルドは豪快に笑みを作った。

そして、続けてハジメへとある質問をする。


「ダブルエッジはまだ持っているか?」


「はい、ありますけど……」


クリムゾンベアとの戦闘後大破こそしたものの、破片は出来る限りポチ達と集めていた。

捨てる気になれず、アイテムボックスに入れておいたのだが、ここで取り出す事になるとは。

レオナルドは受け取ると、壊れたダブルエッジを慈しむように触れて観察する。


「そうか……役目を全うしたか」


「……あの、ダブルエッジの予備って無いですか?」


「いや、アレは思いつきで手掛けた作品であるからな。これひとつしか無い」


「そうですか……」


ダブルエッジには腕こそ砕かれたものの、命を助けてくれた武器でもある。

あの武器があれば再度の窮地の際に助けになるという考えの他にも、愛着が湧いていたので出来れば欲しかっただが。


見るからに落ち込むハジメを見て、レオナルドはそんなハジメに提案をする。


「ふむ、そうであるな。ならば代わりとなる物をここからひとつくれてやろう」


「そ、そんな悪いですよ!」


「なに。新人に優しくするのも


「お、それじゃ俺も〜」


「貴様は倍の金額払え」


「何で!?」


ユエンとレオナルドがとやかく言い争う中、ハジメは改めて商品を物色する。

だが、遠目で見ても分からんかった商品は、手に取り間近に見ても全く分からん。


……それにしても……これを全てこの人が作ったのか。


職は【鍛治師】か何かか?

それにしては格好が【鍛治師】らしくないし、それにこの冷凍カジキなんやねん。


1番気になったので、取り敢えず触れる。


……ヒンヤリする。


夏には持ってこいかも。

そして触ると本物の魚ではなく作り物だと分かるが、ほのかに香る生臭い匂いがリアル。


「……わふ?」


「どうしたハチ?……あ、右のヒレが動く」


ハチが何かに気付いたのか、そのまま冷凍カジキ抱き枕(仮)の右ヒレを引っ張る。



キュル……キュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュル!



カジキの頭部先端の角がドリルのように回転し出した。

どうやら抱き枕ではなく武器の類、なのか?


「……こっちは」


ふと気になり、左ヒレを引っ張る。



〜〜〜〜♫〜〜〜〜〜〜♩



子守唄を歌い始めた。


「「「「…………」」」」


3匹と1人は黙って角を回転させながら子守唄を歌う冷凍カジキを見ていた。


……抱き枕兼護身用武器?


冷凍カジキの両ヒレを再度引っ張り停止させ、そっと置く。

結局どのような場面を想定して造られたのか分からん。どの層向け?


そして、他の商品を物色するがピンと来る物には出会わない。


いや、そもそもだ。

これは我儘な話だが自分の1番求めている武器は何か分かっている。


ハジメはレオナルドの手元にあるダブルエッジだった物を見る。


……あれのおかげでクリムゾンベアも倒せたし……!


「あ!………すみません、レオナルドさん。これ見て頂けませんか?」


「ん、構わないが?」


そう言ってアイテムボックスから扱いに困っていた品を取り出す。

ハジメがレオナルドに渡したのは、


「これは───クリムゾンベアの爪に、骨か。鮮度も良い、質は……うむ、悪くない」


レオナルドは受け取った骨と爪を指で軽く弾き音を聞くなど、つぶさに観察する。

そのレオナルドに対して、ハジメは頭を下げる。


「厚かましいことは承知の上でお願いします。これでダブルエッジの修理をして頂けませんか!勿論お金は出します!」


「ふむ?ん〜〜〜〜〜」


そのハジメの懇願に、レオナルドは沈黙し考え込む。

芝居がかった言動は(ナリ)を潜め、その表情は真剣そのもの。


かと思ったが、いきなり火がついたかの如く立ち上がり叫ぶ。


「……面白い。いやはや、良いではないかその発想!」


「「うおっ?!」」


レオナルドのいきなりの大声と挙動に驚くハジメとユエン。

そんな事を気にせずに、自分の世界に入ったレオナルドはハジメの肩を掴み顔を覗き込む。


「ハジメ、2つ問おう!一応だが、利き手は右か!そして、このトライエムも使う事になるが、それでも良いか!」


一応こちらへの確認のようで、疑問形ではなくレオナルドの言葉は「これで決まりだ」と言わんばかりに確定事項の確認だ。


「み、右利きです。トライエムの方はお任せします」


「心得た。では、こうしてはおれん!」


そう言うや否や、腰掛けていたファンタジーには異色のアタッシュケースを手に取り、鍵を外し開ければ響く金属の擦れる音。

見れば、アタッシュケースの中から幾つもの鉄製のアームが伸び、並べてある商品を掴んではアタッシュケースの中へと引き摺り込む。

 

店の品よりも一層異色な光景にハジメ達は思わず固まり、対してレオナルドは手慣れた手つきで宙を指が行き来し、



『プレイヤー【レオナルド・カルロ】からフレンド申請が来ました。受理しますか?』



ハジメの視界にその文字が表記された。


「フレンド申請を受理しておいてくれ!明後日には出来るだろうが、作り次第連絡をする!では、さらばだハジメ!」


ハーハッハッハッハッと高笑いをしながら嵐のように去っていくレオナルドを、2人はただ見送るしかなかった。


「な、何だったんだアレは?」


「さあ……。でも、一つだけ」


武器の注文を請け負ってくれた事に安堵しつつ、ハジメはレオナルドからのフレンド申請を【Yes】をタップし受理する。

そして、今迄のことで理解した事がある。


「シオンさんの知り合いってのは、何となく納得した」


あの人の知人に一般人枠は居るのだろうか。

戦闘用抱き枕魚介シリーズ

【カジキンα】


夏や亜熱帯地にでの野宿。

『暑くて眠れない!』そんな事ありますよね。

そんな時にはコレ、【カジキンα】!

ヒンヤリするし、しかも、就寝中に襲撃されてもこれさえあればパジャマ姿で対応出来る!

熱を加えると焼き魚の匂いになるのが隠しギミック。


ちなみに、型にカジキをチョイスしたのは、これを作る前に昼飯のカジキのステーキの味に感動した為だ。深い意味は無い。

他に防御特化のカツオ型と抱き心地重視のナマコ型がある。

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