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VRMMO【Parallel World】   作者: BLTサンド
第1章 Prologue
20/28

P.19 「ジャンプで良くある特訓」

お世話になった親方達に別れを告げ、早速ハジメ達は『ケモノのそうこ』を訪れた。


買って1日目で所々壊れてしまった武器を後払いで修理に出していたハジメ。

ようやくお金の目処がついたところで訪れた訳である。


お金がある事が精神的余裕を生み、意気揚々とケモノのそうこの扉を開ける。


「すみませーん。ハジメです。モッフィーさん居ます、か…………」


「………いらっしゃい」


そして、すぐに揚々とした意気は消沈した。


ハジメは言葉を失い、店主であるモッフィーはいつもと変わらない渋い声で出迎える。


入店開幕に出迎えたのは愛らしい名前と店からは想像も出来ない893フェイスの坊主男性。


まあ、それはいい。

既に知っているのだから。


だが、問題は別。


「なんすか、そのウサ耳」


頭にウサ耳を着けていた。

失礼ながら、壊滅的に似合っていない。


モッフィーさんが語尾に『〜だぴょん』なんて付けて無いのが、唯一の救いだ。


俺の質問に対し、モッフィーは動じずに受け答えする。


「試作品だ。【ケモナーの会】に頼まれていた物で。今、着け心地を確かめている。自分は髪がないから違和感あるが……髪のあるハジメも頼む」


いや、違和感の理由は坊主頭だけでは無い絶対に。


「え、あ……はい」


モッフィーはイヌ耳を手渡してきた。

ツッコミ所満載で戸惑っていたハジメは、思わず受け取ってしまう。


さわっ、モフモフ。


手触りがハンパなく良いのがなんか悔しく思いながらも、とりあえず被る。


「どうだ?」


「……いや、凄いですねコレ。全然違和感が無い」


どこぞのネズミーなランドなどで売られている被り物を想像していたが、中々どうして。

重くなく、頭にフィットしている。

キツい訳では無いが、頭を動かしても落ちるどころかズレない。


着けただけで素人ですら分かる、高クオリティ。

こう言うのを職人の作品と指すのか。


ポチ達が興味津々そうに見ているので、ハジメはしゃがんで見せてあげる。

すると、3人ともハジメの頭へ寄って観察し始めた。


欲しいのかな?


初めと違って、ちょっとテンション上がり、つい一つ欲しくなってきた。


「クオリティも高いですし。いくらぐらいで売るんですか?」


ちょっと気になったので質問すると、そっと紙を手渡された。

ポチ達と共にそれを覗き込む。


えーと、一、十、百、千、万、十万……んー?


「……モッフィーさん。桁2つ間違えてますよ」


「いや、これであっている」


「「「「……わっふぅ」」」」


予想を遥かに上回る値段が出た。

ぶっちゃけると、ハジメの鉱山での給料の10倍でも足りない。


しかも、そんな高価な物が、ハゲの頭と冴えない男の頭に乗っていると思うと、なんとも言えない気分だ。

すすきののバニーガール呼んでこいよ誰か。


イヌ耳(偽)をつつこうとしていたポチ達も値段を知った途端、ゆっくりと手を下げ、後ずさった。


「その………【ケモナーの会】はアホなんですか?」


「失礼だぞ、ハジメ。彼らはアホではなく、度を超えてるだけだ。異常な方向に」


「モッフィーさん。フォローしてるようで貶してます、それ」


モッフィーからすれば、その【ケモナーの会】とやらは金ヅル、もといお得意様なのであろう。

ハジメは一体どんな変人がいるのかと、未だ見ぬ【ケモナーの会】に疑問を抱くのであった。


関わり合うことは無いだろうが。


「それはそれとして、例の物。できたぞ」


そう言ってモッフィーさんから手渡してきたのは、注文していたコボルト用の武器。


それを受け取り、ポチ達に手渡す。

ポチとポン太の剣と弓は酷使させた為に欠損が見られ修理。

ハチの盾に到ってはクリムゾンベアの攻撃でひしゃげて修理不可能。

一から新しいのを注文した次第だ。


「満足いったか?」


「勿論ですよ。前のポーションもそうですけど、モッフィーさんには本当にお世話になります」


ハチの盾がもし少しでも耐久度が低かったらケールの命は無かったかもしれなく、今思ってもゾッとする。

因みにだが、ケールは命に別状は無く後遺症も無かったが、見舞いに行って家の扉を開けたらケールと巨乳なケールの幼馴染が顔を赤らめ、どこか慌てた様子で出迎えた。

もげればいいのに。


「……そうだ。ハジメ、この後の予定は?」


「いえ、特に無いですが……?」


「なら、コレに行くといい」


そう言ってモッフィーさんが手渡してきたのは一枚の紙。

そこに書かれた内容は、


「『総本部ギルド初心者育成講座』?」


「そうだ。まだ戦闘慣れしていないギルメン(※ギルドメンバーの略)の為に訓練が開かれる。そして、それは2月に一度ギルドを統括する総本部ギルドで行われる訳だ。参加費はタダだから行くといい」


「訓練……」


モッフィーさんの突然の提案は、しかし、ハジメにとって渡りに舟である。


鉱山での金稼ぎ中、何度もあることを考えていた。


クリムゾンベアとの戦いには勝った。

しかし、それは結果論に過ぎない。


もし、クリムゾンベアが最後の仕掛けに掛からなければ。

もし、読みが間違っていれば。

もし、逃げ遅れて攻撃を喰らっていたら。

いや、そもそもの話として種が開花していなかったら。


あれは運が此方に傾いていただけだ。

一歩でも踏み外していたら、ケールは骸に、それどころか多くの村人にも被害が出ていたかもしれない。


………後悔はしたくない。強くならなくては。


「ホント、何から何まで助かります」


「こちらも商品を購入して貰っている。感謝の必要は無い。……それよりも」


モッフィーさんはウサミミを揺らして、こちらに渡した紙に視線を送る。


「行くならば急いだ方が良い」


「え、それってどういう……?」


モッフィーの言葉にハジメは開催場所から何まで記された紙に再度目を落とす。


そして、良く見れば、


「開催日……今日の午後3時ぃ!?申し込み締め切りは開始30分前まで────い、今の時間は!」


「午後1時半ジャストだな。ここから走ればギリギリ間に合う、と言った所か」


モッフィーは落ち着いた様子で言うが、ハジメにとってはそれどころでは無い。


「モ、モッフィーさん!これ代金、ありがとうございました!また来まあああぁぁぁぁ…………」

「「「わふぅぅぅぅぅ…………」」」


依頼した分の金額を渡して、脇目もくれずにダッシュ。

コボルトも追いかけ、感謝の言葉がドップラー効果が掛かって響く。


ポツンと残されたモッフィー。

そして、ウサミミを揺らしながらハジメから渡された貨幣の数を数え、


「……む、そう言えば」


ふた自分のウサミミが目に入り、ハジメが犬耳を付けたまま出て行った事に気付く。

どうしたものかと数秒考え、


「……まあ良いか」


金の勘定を再開した。

次話 20時に更新します

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