第8話 「ツンデレな姫とリア充な兄」
≪2日後≫
「やあ、息子たちよ。よく集まってくれたな。定時報告会議の前に、紹介したい奴がいるんだ」
そう言い、ゲミュラスは皆の注目を集めた。半分は興味が無さそうに、半分は食い入るように扉を見ていた。
「さあ、入りたまえ。紹介しよう、私の後継者となるタケル・ベルベディアだ」
その言葉を聞き、俺は扉を開けた。その瞬間、俺の首は胴体から離れ空中に跳んでいた。
「はっ???」
何が起きたんだ? 正直、事前に言われていたことだったから覚悟はしていたんだが、圧倒的過ぎて理解ができない。俺は、昨日ゲミュラスに言われた通り、扉を開ける瞬間に人間種から魔王種へと変更した。魔王種じゃないと一瞬で死んじゃうからと言われたら、誰でも言われた通りにするよな。
「なによ、弱っちいじゃない。父上、こんな弱っちいやつが後継者なの? 死んでないところを見ると、魔王化はしてるけど覚醒魔王化でしょ? この覇気のないオーラはもとが人間種だから? てか、こいつさっき城に入った時に感じた弱っちい人族のやつじゃん! ねえ、父上。こいつ、私にちょうだいよ。壊れないおもちゃとして一生大切にしてあげる! ねえ、あなたもそう思うでしょ?」
俺を弱っちいと連呼している小さい女の子は、ゲミュラスの娘で確か長女のニルニナ・ベルベディア。小学生にしか見えない外見で、深紅の髪、赤色の眼をしている。この見た目で、もう200歳とか言ってたな。たしか、火属性魔法を得意としてた魔法使いだったはずだ。でも、さっきのは剣で切られたはずなんだけど。
「まあ、そういうなよ。彼は、自分に何が起きたのか理解できていないようだよ。やあ、はじめまして。私の名前は、ティーチ・ベルベディア。ベルベディア家の次男だ。これからよろしく、異世界人さん」
彼は、魔族と人族のハーフで完全魔王。基本6属性の魔力適正を持ち、全ての魔法の神級を習得。称号『大賢者』を魔王にして所持する超絶エリートだ。しかも、イケメン。性格もいい。このベルベディア家で一番妻を娶っているのは彼だ。
「よろしくお願いします。ティーチさん。ところで、彼女、いやニルニナ姫は魔法使いのはずですが何をしたんですか? 速すぎてわかりませんでした」
ニルニナは、自分のことを「姫」と呼んだことがうれしかったのか、さっきのネタ晴らしを自らしてくれた。
「私のことを、姫って呼ぶなんて100年早いわよ! でも、特別に許してあげるわ! さっきのは正真正銘魔法よ。ただ、世間に広まってる魔法じゃなくて、自分で作り出した魔法だけどね。この魔法の名前は、火属性武器魔法【赤い蜂】よ。因みに、この魔法は初級の威力しか持っていないの。それにやられるような奴だったから、弱いって言ったのよ」
自分で作ったって、この人天才か? 武器魔法か、興味あるな。吸収したいけど、復活が先だな。早く戻んないかな?
「タケル君は、死ぬの初めて? 初めてなら、復活するのは12時間後だね。すぐ復活したいなら、復活させてあげられるけど、どうする?」
この人は天使ですか?
「ぜひ、お願いします!」
即答すると、ティーチさんは呪文を唱え始めた。
「我らが主よ、かの者を死地より誘い、この地へ導き給え【復活】」
突然、体の周りが輝きだし、一瞬で首が胴体についていた。目線の高さがニルニナだったのが、ティーチさんになる。やっぱり、この人イケメンだわ。
『主が復活状態にありましたので、誠に勝手ながら、吸収を発動し体中に巡らせておきました。その結果、聖属性神級回復魔法【復活】を習得しました。また、スキル:魔力同化とスキル:魔力応用を併用することで、先程の魔力から聖属性初級回復魔法が使用することができるようになりました。使用できる魔法は以下の2つです』
突然のアナウンス。どうやら、死んで復活するときになったら、勝手にスキルが発動するらしい。さっきの【復活】で習得できたようだ。あと、ティーチさんの魔力から初級回復魔法を二つも習得できた。これはお礼を言わなければいけないな。習得した魔法は、【小回復】と【回復】だ。どっちも使い勝手のいい魔法の様だ。
「ティーチさん、ありがとうございます。おかげで、新しい魔法を覚えることができました。それとニルニナ姫、先程の魔法をもう一度使用してもらえませんか?」
「いいけど、なんで?」
「私が強くなるためです」
「いいわ、それじゃ準備して。さっきと同じ速度でいくわよ」
ニルニナ姫はそう言うと、少し距離を開けてくれた。よし、スキル:吸収 発動!!
「お願いします、ニルニナ姫」
「飛び回りなさい! 僕たちよ! 【赤い蜂】」
うーん。やっぱり見えない。けど、体中にスキルを巡らしたからそろそろ・・・・・・来た!
『対象物:魔法、確認しました。吸収を開始します。
・・・・・・火属性初級武器魔法【赤い蜂】を習得することに成功しました。しかし、この魔法を使用する際の熟練度がありません。魔力:ニルニナからスキル:魔力同化を行いますか?
・・・・・・了解しました。
・・・・・・スキル:魔力同化により魔法行使に必要な熟練度を入手しました。魔力同化により、火属性初級火魔法【小さな灯】を習得しました』
よし、これでレア魔法ゲット! どこかで試し打ちしたいけど・・・・・・ん? さっきから、ニルニナ姫、ティーチさんもそうだけど、他の魔王さんからの視線がすごいんだけど。
「どうしたんですか? 何かおかしいことでもありましたか?」
「いや、自覚はしていないようだね。質問を質問で返すようで悪いけど、なぜ、タケル君の魔力から私やニルニナ姉さんの魔力波が感じられるのかな?」
あ、説明してなかった。ってなんで、ゲミュラスまで驚いてるの?
今回新しく魔法を習得したおかげで、多少なりともレベルが上がっています。それについては次回。
ゲミュラス:なぜ呆れた顔をしているんだ?
タケル:いや、何でもないっす。
ニルニナ姫&ティーチ:・・・・・・どんまい!www