第3話 「異空間において」
「せん・・・・・・ぱい! 行かないでください!」
夢か。俺は、昨日のことを思い出す。昨日、先輩が目の前から消えた。そのことがあまりにもショックすぎて、夢で見る始末。かなり参っている。寝汗もびっしょりだった。さぞかし、ベットも濡れているんだろうと目線を下に向けると、そこにはベットが無かった。
替わりにあるのは、真っ白な床。いや、真っ白というよりも変に虹色の光沢がある真珠のような肌触りの床だった。
周りに目を向けると、床と同じようなものが見えた。そして、その真ん中にガチャガチャがぽつんと立っていた。ガチャガチャか。小学生の頃はよく遊んだものだ。
「よし、回してみるか」
そう思い、回し手に手をかけた。そこで、ふと気づいた。ガチャガチャの周りに何かある。手に取ってみるとそれは骨だった。他には眼球のようなモノまであった。それを見た瞬間に、俺は【消失事件】のことを思い出した。
まさかな・・・・・・
ガチャ。
ガチャガチャから赤い球が出てきた。中には紙が入っているようで、振るとカサカサという音が鳴っていた。開けてみると、案の定二つ折りの紙が入っていた。コピー用紙のような普通の紙だった。
その紙には、黒い文字で『吸収』と書いてあり、俺がそれを読み上げると紙が燃えて消えた。それと同時にガチャガチャも消え、再び激しい頭痛に襲われた。
「また、頭痛かよ。次に目が覚めた時は異世界でしたとかマジで勘弁してくれよ」
目の前が完全にブラックアウトして、俺は意識を失った。
その様子を見守る存在があった。見守るだけで実際に干渉することは絶対にしないその存在は、地球では想像上の生き物とされ、この世界では実際に存在する生き物だった。
それは、神様。転生や転移をつかさどる神、イリーナだった。イリーナは現在、ある一人の転移者の相手をしながら、別空間で転移の儀式を行う一人の男を監視していた。
イリーナが干渉することができるのは、正式な召喚方法で呼ばれた異世界人のみである。その場合は、例のごとく様々なスキルやギフトを与え、「勇者」として異世界に送り出している。
しかし、今回監視している男はイリーナが干渉することができないケース。イレギュラーな召喚で転移してきた証拠である。しかも、纏っている魔力は、この世界で絶対悪とされている魔王のものだった。
「また、面倒なことになってきたわね。これは気合を入れてこの女の子を育てないと」
イリーナは、改めてスキルの構成を見直し始めた。
異空間編はとりあえず終わります。はい。1話で終わります。