616話 呪いの連鎖
預言石というものがある。シュリット神聖王国の至宝だ。
始まりの最高神官、アズライールの時代より受け継がれた聖教会の秘宝とされている。それに触れることができるのはその時代の最高神官だけ。預言石の間に入ることができる人物ですらごく一部だ。
「私は今より祈り、問いかけます。あなた方も祈りを」
そう言いながら最高神官は預言石に触れた。
彼と共に預言石の間に入った高位神官の二人も無言で祈り始める。それを見て最高神官も心を鎮め、そして溢れる言葉を祈りとした。
「……主よ。偉大なる力の主よ。星盤祖の名が褒め称えられますように。どうか星々の光の如く私たちを照らしてください。私たちは英雄を見ました。あなたが遣わされた英雄です。彼らは命を尽くし、偉業を成し遂げようとしています。魔神を討ち、平和をもたらそうとしています。」
祈りを続けていると、預言石は自然と光を放ち始めた。脈打つようにゆっくりと点滅し、最高神官の祈りを聞き届けているようにも見える。
「どうか。どうか導きを。星の導きを、私に与えてください。英雄たちのことを教えてください」
言葉の一つ一つが重い。
短い祈りにもかかわらず、最高神官は額に玉のような汗が浮かんでいた。
預言石は一瞬だけ強く輝き、そして一切の光が失われる。それからしばらく、沈黙が続いた。最高神官はゆっくりと手を引き戻し、項垂れる。
あまり良い預言ではなかったということは聞かずとも分かった。
「どのような預言だったのですか?」
沈黙を破り、右隣りにいた神官が訪ねる。
すると最高神官は手を振り上げ、そのまま拳を叩きつけた。預言石を載せた台座が揺れる。
「……預言は次の通りです。次の聖守、十一代目聖守の名はセントミリア。聖都に生まれた子である」
「それはッ!」
「聖守様は討たれた、ということでしょう。隻腕の英雄も、六聖たちも。これよりヴァナスレイに行きます。聖石寮にこのことを伝えなければなりません」
「民衆への告示はどうされますか?」
「王政府、聖石寮と協議してからになるでしょう。二人もそれまではこのことを秘密としておくように」
最高神官の足取りは重い。
だが歩みを止めることは許されない立場だ。ヴァナスレイへと急ぐため、準備を進めた。
◆◆◆
聖石寮の本拠地、ヴァナスレイへと急ぎ戻ったルークは手荒い歓迎を受けることになった。そこに歓声も喜びも一切なく、向けられたのは恐れと怒りのみ。
理由は簡単だ。
嵐唱との同化が進み過ぎたルークは化け物にしか見えなかった。そんな姿で聖守たるネオンを背負っていたのだから、武器を向けられても仕方のないことだった。
ただルークは抵抗しなかった。それどころではなかったからだ。隻腕の英雄から一転、化け物と呼ばれることに心を痛めつつも、うわ言を繰り返すネオンを引き渡した。
『ネオン……無事なのか』
大人しく牢に繋がれたルークはただ呟く。
王に対する仕打ちではないが、全てはネオンのためだ。下手に抵抗しても状況を悪くすると考え、大人しくしておくことにした。
『君に何があったんだ……ネオン』
冷たい地下で、ルークはただ想い人のことだけを考え続けた。
◆◆◆
ヴァナスレイへと到着した最高神官は、そこで驚くべき事実を知った。聖守ネオンが山水域から戻ってきたというのだ。彼女が魔神に敗北したと思い込んでいた彼は驚愕のあまり言葉を失ってしまう。
星盤祖の予言は何だったのか。
まずは事情を知るため、ネオンと面会することにした。休息を入れることもなく、まずは場を整えるようにと聖石寮に要請する。勿論、最高神官の他は預言を知る高位神官二人だけという極めて小さな面会の場を希望した。
「聖守様……あぁ、聖守様だ」
ネオンはヴァナスレイ聖石寮本部の寝室に寝かされていた。幸いにも最高神官たちが到着した段階で目を覚ましたらしく、会話もできる状態らしい。
そして彼女の姿を目の当たりにした最高神官は安堵した。
聖守は生きている。あの預言は間違いだったのだろうと思い直し始めた。
「聖守様、お加減はいかがでしょうか。ヴァナスレイに運び込まれた当初はうわ言を繰り返し、倒れるように眠ったとお伺いしました。幾つかお尋ねしたく、お疲れとは思いますがどうか私の話に付き合っていただけないでしょうか」
「……えぇ。私からも言うべきことがあります。言わなければならないことが」
「感謝します。まずは確認をさせてください。魔神は……討たれたのですか?」
尋ねるだけで自然と声が震えた。
ネオンの返答は時が引き延ばされたと思うほど待ち遠しい。
「あの魔神は討ちました」
ネオンの答えに安堵を漏らした。
「ですが滅びてはいません。次は私が魔神となります」
そして凍り付く。
意味を咀嚼し、それでも理解が追い付かない。震える声で、最高神官が訪ねた。
「どういう意味、でしょうか」
「そのままです。魔神は……一つの概念ともいえる存在でした。私は魔神を討つと同時に呪いをこの身に受け、理解したのです。あれを討った者は次の魔神となる。そういう呪いだと」
「つまり、つまり初代聖守様と同じになってしまったのか」
思わず漏らしてしまった言葉だった。ネオンを含め、高位神官たちも問い詰めるような視線を向ける。それに気が付いた最高神官は、ほんの少し俯き、両手で顔を覆った。
しばらくの沈黙の後、彼は口を開く。
「歴代の最高神官にのみ伝えられる口伝があります。聖守様……ネオン様が討った魔神とは、初代聖守スレイ・マリアス様です」
誰一人として口を挟むことなく、次の言葉を待つ。
最高神官は酷く慎重に言葉を選んでいるようであった。
「初代聖守様は魔神を討ち果たし、死に際の魔神は呪いを吐き出しました。それはネオン様が仰られたものと同じ、次の魔神を生み出す呪いです。私たちは初代様を呪いから解放するために戦っていた。そう、考えていました。しかしそうではなかったのだと、今、ようやく知りました」
「私に呪いが移ったからですね」
「これは深い絶望です。私たちにはもはや、本当の意味で魔神を討つことができないのかもしれません。いずれはネオン様も魔神の意識に侵され、三代目の魔神になり果ててしまうはずです」
魔神討伐はシュリット神聖王国にとって悲願の達成かと思われた。このために様々な無茶を通してきたし、何代にもわたって準備をしてきた。
その全てが無駄だったと思い知らされたのだ。
神官たちの皆、希望を見失ってしまう。
(そういうことですか。預言はこれを意味して……)
最高神官を含め、彼らは預言の意味を理解した。
ネオンは死んだのではなく、聖守としての資格を失った。だから新しい聖守が預言されたのだと。
「魔神を討ち果たしたとき、その魔石から鎖が現れ、私の中に吸い込まれました。あれが呪いだと、今ならば分かります。そして――ッ!」
ネオンは胸を抑えて蹲った。
それは心を狂わせるほどの憎悪である。炎のように燃え上がり、胸の内を焼き尽くそうとする。気を抜けば今にも暴れてしまいそうなほどだ。だがネオンは耐えた。
「――そして抑え込めなくなるのも時間の問題です」
「ネオン様、痛みはありませんか? それが呪いですか?」
「人を憎む熱が燻っています。正気でいられる時間も長くは残されていません。私はここから離れなければなりません」
意思は堅く、もはや誰の言葉も彼女を止めることはできなかった。
「まずルークを解放してあげてください。彼は関係ありません。嵐唱との取引で異質な姿となりましたが、真に英雄です」
どうすればよいのか、最高神官としても上手く言葉にできない。だがこのまま去らせてはならないということも理解していた。彼女の言葉が正しいのだとすれば、いずれ魔神として再誕してしまうのだ。
ネオンの呪いを解くことは、魔神との闘いの終着をも意味する。
「……私たちは英雄たちを見捨てはしません。魔神の呪いを研究し、必ず解いてみせます。あなたが国を去る必要はないのです」
感情的な理由、損益を考慮した理由、様々な理由がある。だが最高神官としては彼女を見捨てる選択肢を選べるはずもない。
「どうか諦めないでください」
「……可能、なのでしょうか」
「聖守様の御心次第です。聖レベリオ=アスランに王子殿下方、姫殿下も残されているのでしょう? 諦める必要はない……いえ、諦めてはならないのです。どうか本当のお気持ちを私たちに伝えてください」
魔神という存在の正体が知れた今、ここで連鎖を止めなければならない。その最大の機会が訪れた。そんな理由も隠れてはいる。だが最高神官の本音としては、偉業を成し遂げた聖守の果てをこのような悲劇にしたくなかった。ただそれだけだった。
ネオンは初めこそ黙っていたが、やがて嗚咽混じりに吐露する。
「……ただ、会いたい。ルークと、子供たちと。私が私でなくなる前に」
「魔神にはさせません。地を離れ、天に至るその時まで人であるよう私たちは力を尽くします」
ネオンの本当の願いを聞けた最高神官はすぐに動いた。彼女の帰還はひとまず秘匿され、公的には聖守ネオンの死として公表される。聖守、隻腕の英雄、六聖たちは魔神と相討ちになったというカバーストーリーによって真実は隠された。
魔神を倒した聖守が次の魔神になるなど、とても発表できる話ではなかったからだ。
真実は聖教会、聖石寮、王政府の一部でだけ共有され、歴史の闇に埋もれていった。
◆◆◆
ネオンはヴァナスレイから少し離れたアーランドという街に移された。そこにある聖石寮の地下に秘密の研究施設が設置され、魔神の呪いについて研究が進められたのだ。
公的には二人の死が発表され、大きく揺れている。
特に聖レベリオ=アスラン王国は偉大な王を失ったことによる混乱も大きかった。こうなることも考えて事前に準備をしていなければ、再び乱世が始まっていたかもしれない。
『二人はよく治めてくれている。心配するなネオン』
ルークは嵐唱との同化が進み過ぎた結果、人とはかけ離れた姿になってしまった。身体の半分は皮膚が黒ずみ、ひび割れた模様が鱗のようにも見えている。頭部からは角も生えて、魔族と間違えられても仕方のない風貌だ。
声も嵐唱のものに変貌しているため、ルーク本人を示す部分はほとんど残っていなかった。
だから死んだことにして、王位もまた子供たちに譲っていた。今は聖教会や聖石寮の密かな戦力として、世界を飛び回っている。魔神戦で亡くなった六聖たちの大聖石も、後にルークが回収していた。
「国はあの子たちに任せればきっと大丈夫です。ルーク、ありがとう」
『気にするな。ただ二人はあまり仲が良くなかったからな……変なことにならないか少し心配だ』
「国を支える臣下も多くいます。よくない方向へと向かえばきっと諫めてくれるはずですよ」
『そうだな。あの子たち、臣下たちを信じよう。俺たちは歴史の表から去った身だ』
「ええ。呪いが消えたとしても表には出られませんね。死んだことになっているみたいですから」
地下は決して快適な空間とは言えない。湿気が多く、火の光もなく、空気も澱んでいる。外の情報も常に人を介して知る以外、入ってこない。息が詰まるような生活のためストレスも蓄積される。
「……耐えてみせます。せめて子供たちに再会するまで」
『ああ。俺が支える。どんなことがあっても』
最初の二年間、ネオンにはまだ気力が充実していた。
ルークも強く励ましていた。
◆◆◆
四年が経ち、未だにネオンの呪いは解かれていなかった。聖教会や聖石寮、また王政府までが研究に噛んでいる一方、秘匿性ゆえに関わる人物は少ない。また資金の流れから不審に思われないようにするため、大規模な投資も難しい。
遅々とした動きは少しずつネオンにも伝わり、精神は蝕まれつつあった。
「うぅぅ……ああああああああああああああッ!」
ネオンに襲い来る憎悪の波。そして身を焦がすほどの怒り。魔神を討ったその時から波のように押し寄せる。その頻度は少しずつ増えており、今では日に何十回と狂気の火に焼かれていた。
初めの頃は正気を失ってもルークが励まし、支えた。しかし今はもう限界だ。張りつめた糸は、いつ切れたとしても不思議ではない。
「うぁ……ぁッ! ニンゲン、滅ぼ……」
ネオンは壁に強く頭を打ち付ける。気を緩めればあっという間に魔神の意思が身体を乗っ取ろうとする。何度も何度も、積み石の壁が崩れるほど頭を打ち付けた。そんなことをすれば死んでも不思議ではない。だがネオンは傷一つなかった。
まるで魔神に備わった防御能力のようであった。
ルークが力ずくで抑え込んでも、それを上回るほどの力で暴れまわる。
「……ここ最近はこの有様なのです。この調子では解呪の研究が実を結ぶよりも早く発狂してしまいます。今ではルーク様でなければ抑えられないほどで」
「なるほど。以前よりも酷くなっておられるようだ」
「何か応急策がなければ持ちません。どうかお頼み申し上げますアルマーニ・スウィフト殿」
最高神官はある人物を連れてきた。聖レベリオの重鎮、アルマーニ・スウィフトである。より正確には彼が管理する神器・聖杯を必要としていた。
「よろしい。まずは落ち着くのを待ちましょう」
そう言いつつ、ほんの少し目を逸らす。
壊れていくネオンの姿はとても見ていられない。だからといって殺すこともできない。世界を救った英雄を殺すなどもってのほか。救済と割り切るにしても、結局は魔神の呪いをどうにかしなければ同じことだ。ただ連綿と呪いを引き継ぐだけになってしまう。
何より、ルークはそれを認めないだろう。
ひとしきり暴れたネオンはようやく正気を取り戻し、ルークの腕に身を預ける。
「わたし、もう……たたかえ、ません。ころして。るーく」
『諦めるな! 俺がいる。俺が――ッ!』
ルークは口を噤んだ。
それを繰り返し言い続けて四年だ。四年間、ルークは何もできなかった。ただ壊れていくネオンを見ていることしかできなかった。己の言葉には何の価値もないと、己で認めてしまう。
『どのような代償も受け入れる。アルマーニ殿、頼む』
「分かりました。しかし以前も試しました通り、聖杯で呪いを解くことはできません。あくまでも封印です。時を止め、これ以上呪いが強くならないように留める。それだけです。しかもその封印には――」
『ああ、分かっている』
アルマーニは聖杯を手にして、差し出した。するとルークはその上に手をかざす。
『聖杯よ、応えよ』
願いは一つ。
ネオンを蝕む呪いを、彼女の時間ごと止める。それはまさしく封印だ。代償となる魔力はルークが代わりに負担するという異質な契約である。
『聖杯。かつて解呪を願ったとき、不可能だと言ったな。そして代わりに封印を提案した。俺自身を魔力源として継続的に時を止める封印術。それならば可能だと』
ルークは聖杯に語りかけつつ、嵐唱と同化する。目的は第三の眼だ。大量の魔力を生み出し続ける装置として、それを必要とした。
『覚悟は決めた。だから頼む』
聖杯の使用者はルークではなく、アルマーニだ。故に声はアルマーニへと届く。答えがどうなったのか、それは彼自身から語られた。
「叶う、と聖杯は申しました」
『そうか。よかった』
ルークはネオンを抱えたまま、その場で腰を下ろした。二人を包むようにして魔術陣が浮かび上がり、それらは糸のように絡み合う。
少しずつ意識が鈍くなっていくのを感じた。
それでルークは最高神官に向けて最後の言葉を紡ぐ。
『本当の意味で魔神を消し去る日が来ることを、願う』
「いつの日か、必ず。私が無理でも、必ず引き継ぎます」
『封印は無限ではない。俺の中に代価がなくなり、嵐唱との同化が止まれば封印も維持できない。その時は俺も元の俺ではなくなって――』
時が停止した。
サンドラ帝国の脅威を終わらせ、魔神を討った二人の英雄は眠りにつく。
「術は完成しました。ルーク様の魔力で維持されています」
「感謝するアルマーニ殿」
「いえ。隠居した私にできる最後の恩返しでした。ルーク様には返しきれない御恩があるのです。私も解呪の研究には出資いたしましょう」
「感謝します。ルーク様のお言葉通りであれば、いずれ解ける封印です。早く方法を見つけなければ」
魔神不在の平和が訪れる。
それはシュリット神聖王国にとってまさしく黄金期であった。だが人々は知らなかった。シュリットの地下に、次の魔神は眠っているということを。その魔神は以前よりもさらに恐ろしい存在であることを。
"九と九と九が重なる日、魔神は再臨する。雷を手に持ち、大風を呼ぶ厄災の主が来る。故に終わらせなければならない。その日が訪れるまでに、成し遂げなければならない"
最高神官は死の間際、そんな預言を残した。
聖教会、聖石寮、王政府の一部高官のみが知らされ、秘匿された。それが意味するところは、知らされるほどの人物であれば察しがついた。
◆◆◆
運命の日は訪れた。
暗黒暦一九九九年、第九の月の九日。
アーランド市の地下に存在する秘密の研究所で、事は起こった。
「緊急連絡! 緊急連絡! 例の封印が遂に消えた!」
「やはり今日だったのか。預言の日は。私たちは間に合わなかった」
「項垂れている場合じゃない。目覚めるぞ――厄災の主が!」
抱き合い、眠るようにして動かなかったかつての英雄たち。およそ百六十年かけても、彼らは解呪する術を見つけることはできなかった。
ルークの腕の中で目覚めたネオンは、まず周囲を見渡す。
広さはあるが閉塞した空間。そこにいる数人の人間。そして粘土板や木版に刻まれた魔術陣と思しき紋様。それらを一通り眺めたネオンは、抑揚のない声で告げる。
「――滅しましょう。愛しきあなたのために」
厄災は目覚めた。
いや、厄災は完成してしまった。
「私の愛しき人。あなたさえいれば、他は何もいらない。消してしまってもいい」
全てを焼き滅ぼすほどの憎悪、また怒り。それらは容易く愛のカタチすらも歪めてしまう。
魔神は、そのかつての人格を失っていた。
「だから行きましょう愛しき人」
『……ああ。愛しき人』
それはネオンだけでなく、ルークもまた同じである。封印の魔力を供給するため、第三の眼が必要だった。嵐唱との百六十年にも及ぶ同化は、少しずつルークを変えていった。
今の彼は嵐唱と完全に溶け合っていた。
すなわち、魔神バアルであった。
「愛しき人」
『愛しき人』
二人の魔神はお互いのことをそう呼ぶ。ネオン・ゼブルでもなく魔神。ルーク・レビュノスでもなく魔神。長い封印は二人をより深いところまで繋げて、一つとした。
「始めましょう。私たちを」
新しい魔神は二人で一つ。
その力は絶大であった。また復活と同時に大量の鎖が解き放たれ、研究員たちを捕らえていく。そこに魔力が注ぎ込まれ、存在を上書きした。
廻炎魔仙、八怪魔仙、疽狼魔仙、邪妖魔仙、九尾魔仙、死兎魔仙。七仙業魔の内、睡蓮魔仙を除く六体が一度にすべて復活を果たす。それらは傅き、新たな魔神に忠誠の意を示した。
「私たちは永遠に一緒。そうであれば、他はいらない。他は消してしまってもいい」
『そうしよう。他はいらない』
この日、アーランドという都市は完全に消滅する。歴史を積み重ねた大都市は、たったの一日で跡形もなく消滅してしまった。二人一対の魔神は十五代目聖守グランベルをも殺し、さらにアーランド周辺にまで壊滅的な打撃を与える。
シュリット人は訳も分からず、ただ怯えた。
聖教会、聖石寮、王政府が共同で新たな魔神の出現を発表するまでは、事態を理解することもできなかった。公表された魔神の名を聞き、人々は恐れ慄く。その名を恐怖の代名詞とする。
――魔神、バアル・ゼブル
しっかり全員不幸にしないと気が済まない持病が…
というわけで4章・聖杯は完結です。
少年漫画っぽいストーリーにしたいなぁと思いつつ、かなり苦戦して書ききりました。そのせいでネオンの名前は「十代目聖守だから原子番号10番Ne=ネオンでいいか」とかクソ適当な名付けしてます。ファーストネームを「ゼブル」にする案もあったんですが、女の子っぽくないのとバアル・ゼブル化が推測できそうだったので止めました。
ただ今回はシュウの活躍が少なくて、そこは反省ですね。シュウ、ダンジョンコア、アトラク・ナクアの三つ巴暗躍合戦の構図だったんですが、想像以上に影薄かったです。
続く5章は結構出番ある予定にしています。
5章・最後の王
明日から公開します
魔族篇4章世界地図(封魔連合成立時期)
魔族篇4章世界地図(サンドラ帝国侵攻中)
魔族篇4章世界地図(戦後)
しれっと登場した七代目聖守はマジモンの化物です。こいつほぼ1人で七仙業魔を壊滅させ、スレイを追い詰めました。




