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欠陥魔術師と王の座  作者: 二一京日
1章 無属性魔術師
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プロローグ

これも「魔法学園の特異学生」と同じ、大賞に応募して、一次選考で落ちたものです。読んでください。

 ある場所にある、ある会議場。

 その中央の丸い机の周りには九つの席があり、それぞれに人が座っている。

 その人らは年齢もバラバラで、性別も半分半分ぐらい、ただ彼らには共通している点があった。

 それは魔術を扱う魔術師であること。

 そして、九人全員が魔術師の頂点と言われる第六階梯に位置しているということだ。

 その第六階梯の魔術師には『王』の名が与えられ、それぞれが極めた魔術属性と合わせての称号となる。

 魔術師が扱う魔術にはそれぞれ属性があり、全部で九つ。

 火、水、雷、土、草、風、陰、陽、そして無。

 魔術師は誰もが一つの属性は持ち、また、一つの属性しか扱えない。

 例えば、火の魔術属性を持つ魔術師は、水や雷などの属性を持つ魔術は扱えないのだ。

 しかし、無属性の魔術は例外的に、どんな魔術特性を持つ者でも扱える基本魔術となっている。


「さて、こうやって全員が揃うのはいつぶりだろうか」


 不意に話し始めた男は、この会議の議長の役割を持つ『火の王』だった。声の感じからするに、高齢であるのは間違いないだろう。


「私の記憶が正しければ、丸々一年ぶりですねぇ」


 答えるのは『水の王』である女性。『火の王』に対して、こちらはまだ若い印象を受ける。


「年に五回程度は議会を開いているのに、どうしてなのかね?」


 『土の王』である女性が苛立たし気に言う。こちらも『水の王』と同じくらいの年齢だろうか。


「そう言うがな、こっちにだって事情があるんだよ。そんな毎回出てられるかっての。年に一回出てやってるだけでも感謝してほしいぐらいだぜ」


 目の前の机に足を放り出して面倒くさそうに言った青年、『陽の王』に、となりの『陰の王』が苦笑しながら返した。


「さすがにそこまで生意気なことは、あまり言わない方がよろしいですよ」


 『火の王』と同じくらい高齢の女性である『陰の王』は、おっとりと窘めるように言っていた。


「まぁ、忙しいことは悪いことじゃないですからね」


 『雷の王』の女性は、『水の王』や『土の王』よりは少し年上だろうか。その声で『陽の王』を少しばかりフォローしていた。


「風の便りは儚く、熱い熱の前ではすぐに消え失せてしまうようなもの。空白という怠惰には悲観するばかりですが、そのための努力を惜しむべきではないと思うのです」


 『風の王』である男が詩人のようにゆったりと言う。


「相変わらず、理解しづらいなお前は」


 皆の声を代弁して『草の王』が突っ込むと、少しばかり笑いが起きた。

 そして、『無の王』は沈黙を貫いている。

 そんな様子の『王』たちを見て、議長の『火の王』は話を進める。


「もう春になり、それぞれ心機一転という形になっていると思う。昨年度までのそれぞれの業績もなかなか悪くはなかった。各自、各々の反省点をまとめ、その改善に努めるように」


 その言葉に、それぞれがそれぞれで返事をする。

 しっかりと答えるもの、間の抜けた返事をするもの、ただ頷くだけのもの、いろいろな人がいる。

 そんなこんなで会議は進んでいき、魔術師を束ねる魔術協会の昨年度までの動きやそれぞれの魔術師の働き、さらには魔術を悪用したテロリストに関する議題。

 年度初めであるため様々な議題があがり、それらを一つずつ議論していく。

 そして、会議開始から二時間以上経ち。


「ふむ、これで本日はいいだろう。緊急時の時はまた招集をかけることになるが、その時はできるだけ参加してくれ」


 その言葉に対しても各々の返事があった。

 そして、議会が終わったと見るや否や、そそくさと出ようと椅子から立ち上がろうとしていた『無の王』に対して、『火の王』が呼び止めた。


「ちょっと待て。お前にも言いたいことがある」


 名前を言われずとも理解した『無の王』は、浮かしかけていた腰を再び下ろした。


「なんでしょう?」


 訝しげに『火の王』の真意を聞く『無の王』は、鋭い視線を向けるが、向けられた方は笑って返した。


「そんな顔をせんでもいい。公的なことではなく、私的なことで呼び止めたのだ」


「そうですか」


「新しい年度になってどこも環境が少し変わるが、お主が一番環境が変わるだろうと思ってな。ちょっとしたエールを送ろうと思ったのだ」


「それはありがとうございます」


 声に抑揚のないまま返事をする『無の王』に『火の王』は言う。


「もう少し元気のいい様にはできんか?お主は若いのだから、もう少し弾けてもいいと思うが」


「人それぞれですよ」


「そうか。まぁ、いい。ただ、わしはお主に頑張れと言いたかっただけだ」


「そうですか。ありがとうございます」


 そう感謝を述べると、『無の王』はすぐさまその場を後にしてしまう。


「ふむ、彼はどうにかならないものか」


 それぞれが『無の王』に続いて帰り始めているときに『火の王』が唸ると、まだ席に座ったままでいる『水の王』が答える。


「彼のあれは今に始まったことではないじゃありませんもの。今更、という気も致しますが?」


「それはそうなのだが……うむ」


 明らかに心配そうな表情の『火の王』を見て、『水の王』はクスリと笑う。


「そんなに心配なさらなくとも、彼は自分でできる人ですよ。わかっていますでしょう?彼が私たちの予想を、軽々と超えていくことは」


「それはそうなのだが……うむ」


 『火の王』の心配は尽きないようだった。

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