歩道。
歩道に、女の子が独りいる。
「どこへも行けない」と、その女の子が呟いた。
すると、歩道のマンホールが回転した。
「下へは降りたくない」と、女の子はまた呟いた。
すると、死んだカラスが落ちてきた。
「もっと下へ落ちればいいのに」と、女の子は人間と話すようにカラスに言った。「マンホールの下へ落ちればいいのに」。
死んだカラスは、起き上がり、さらに死のうとした。けれども、カラスの思いは叶わなかった。
「考えが甘いのよ、あんた」と、女の子はそう言おうとして、それはさっき母親に言われたことだと気付いた。
女の子は、母親から離れるために、歩き出した。
もっともっとずっと母親から離れるまで歩き続けた。