ルミドールのお話
カリン一行の前に黒い謎の影が現れ、声を発し驚いていた数分前のこと。
紫色のふわっとしたウェーブがかかった髪の少女、ルミドールは深く考えていることがあった。
自分は1人でかかったから当然といえば当然なのだが、圧倒的な差で完敗した。
自分を殺そうとした相手を警戒もせずにそこに放置して会話をする……圧倒的な強者なら分かるのだが、先ほどの質問からの分かるが初心者のようだ。しかしLVを見てみると最高LVのLV20
この世界では誰しもステータスというものがある。生まれてからの経験によって上がっていき、最高でレベルが20になる。
これは世界中でも稀有な存在であり、そう簡単に見つかるようなものではない。
確か世界中に10人いたかいないかのはずだ。ルミドールはその全員の顔、名前を覚えているが、この中では1人も一致するものはいない。
そう考えると新しくLV20の者が生まれたということであろう。
しかし先ほどにも考えたとおり、ステータス確認は基本中の基本。LV20にもなる熟練冒険者たちは知っているのは当たり前である。しかしそれを知らない。
ステータス確認魔法はどんなに隠蔽してもわかってしまう。
そう、ルミドールが考えていることは1つ。この6人は矛盾しているのだ。その全てが。
その時、頭に激痛が走った。何が……と、私が思った時、もうすでに私は彼らに聞いていた。
「あの……あなた達は、なにものなんですか!? ここの世界の……いや、人間ですか? あなたたちは……」
そう聞くと、代表のような黄色の髪をした同じく少女の人が出てきて、優しい口調で言った。
「私たちは【日本】……と言っても分からないか……まぁ、ここの世界の人じゃないよ。なんで分かったかは聞かないでおくけど……」
そう聞いた瞬間、また私の頭に激痛が走った。
しばらくの沈黙。今度はあちらから話しかけてきた。
「だいじょうぶ?」
死のリスクを伴いながら敵対したものなのに、なぜこんなに優しく接せられるのだろうか。
しかし今、もっと気になることが浮かんできたのだ。
「わすれてた……何で忘れていたんだろう……」
「どうしたの?」
私は貴族として生まれた。この世界はモンスターがはびこっており、魔法が飛び交う…そんな世界で私は今までずっと生きてきた。
違う。そんなのじゃない。私は今までずっと忘れていた。私の故郷は日本。
私の世界では魔法などなくて、工業というものがあった。
何で忘れていたんだろう。魔法なんてないんだ。私は何故か記憶がないのだ。
最後に覚えているのは……そう、トラックにひかれたこと。
私が何故ひかれてしまったのか。それも思い出した。
私は中学生の時、ずっと一人ぼっちでよくいじめられてきた。
私はその学校に転校する前に、幼稚園からずっと一緒だった友達にもらったうさぎのお守り。小学三年生までずっと持っていた。唯一の友達から貰った物なので、大切にずっと持っていた。
それをいつものいじめっ子がとって、道路に投げたのである。
私は車の信号が赤だったので急いでお守りを取りに行った。
しかし、すぐに車専用の信号が青に変わってしまい、背の低かった私は気がつかれずにトラックに轢かれ……
死んだ。
そして……ルミドールとしてもう1度生きることになったのだ。そう、この世界で記憶をなくして。貴族として……だ。
「みなさ……」
私の過去を打ち明けようとした時私は見た。
圧倒的な絶望を持った闇が目の前にいるのを。
それは幼い外見の男の子だった。