魔王
「じゃぁ、また顔出しますね~」
「はい!魔王様!」
大きな声で挨拶を言われ、自己紹介が三時間も行われた部屋からやっと抜け出したのである。かなり疲れた。今からプロフィールを思い出すのも嫌気が差すので、能力とかは必要になった時に思い出すようにしよう。感想を言うと。全員強そう。
しばらく魔王城の中を歩き、会議が行われているはずの場所へと向かう。
そうそう、ここの部屋。
コンコンっと、リズムの良い音が響き、ドアを開ける。
「おーい見にきたよー」
「ま、魔王様!?」
びっくりした様子でこちらを見るのはスミレ、ルミドール、そしてリルファイだ。
「ん!?ちょっと待って。なにか変な感覚……が」
言い終わる前に体が横に倒れる。
「う、う、ぐあ……これは……」
胸を押さえつけられているような、そんな感覚だ。
「魔王様!」
「ま、魔王様!!!!!!」
「い、医療班!」
苦しんでいると、頭の中に声が聞こえてくる。
「スキル、GM権限が消滅しました。精神攻撃魔法に抵抗します。抵抗に失敗しました。対象のあなたは精神にダメージを受けました」
「う、が!?う、ぐうぅぅぅぅぅ」
苦しみがもっときつくなった。
しかし、次の瞬間、体がふわっとした感覚に包まれた。
先程までの痛みはもうない。
周りをみるとここは見慣れた教室。声がする方に顔を向ける。
するとそこには「有田浩介」の姿があった。
自分だけじゃない。
紫月にこうきに京、ハヤトにふみかまで、全員がいた。
「あ……これって走馬灯ってやつ……?あぁ、もう私は死ぬのか……」
普段なら認められないはずのそれを、自分は本能で「死ぬ」ということを理解していた。
(でも……死ぬ前に、死ぬ前にもう一度だけ……幸せだったTRPGの記憶を……少しでもいいから……見させて)
そんな思いが、何故か充実したように満たされている心に響くのであった。




