♯05
「今ガラスが割れる音が…」
「人だかりがあるな…あそこか?」
ある教室の前に大勢の人が集まっていた。
どうやらその教室の窓ガラスが割れたようだ。
「まさか…いや、今は逃げよう」
「はっ…えっ!?」
長谷は私の腕を引っ張って走りだした。
「あっあの…もうすぐ授業が…」
「それどころじゃないだろっ!!!!!!」
ガラス…?いや、まさかそんな偶然…
原因はどうにせよ学校のガラスが割れる事なんて逃げ出すくらい珍しいわけでは無いはずだった。
それでも私は偶然じゃない何かをどこかで確信していたのだ。
走りながら長谷は携帯電話を開いて掲示板を開いた。
見覚えがあったので、それは彼の父親から見せられた掲示板と同じものらしかった。
「なんですか…え…【速報】『戦争開幕』…!?」
「そうだよ…都市伝説とされていた『都道府県戦争』が本当にあったんだ…!」
私は大きく目を見開いた。
そして制服のスカートのポケットの中に不自然な感触があることに気づいた。
ポケットの中を取り出してみる。
不思議な感触の正体は青色のビー玉のような石だった。
(…まさかこれが心珠!?)
「…やっぱり。」
「やっぱり?」
「…信じてもらえるか分かりませんけど…いきなり急に暗い場所に飛ばされていて、いきなりよく分からない声が聞こえたんです【都道府県戦争を始める】って…その時私は気を失ってる事になってましたけど…」
「そう…だったのか…」
私と長谷が靴箱に到着しようとしていた時、2人は校内アナウンスが入る音を聞いた。
【『都道府県戦争』の開幕と、この校舎に2人以上の能力者の存在を確認したため、これより校舎内にて戦闘開始を宣言します。】
「あの声…」
「知っているのか?」
「わ、私を橋から突き落とした上…『都道府県戦争』の開始を宣言した声…」
「まさか黒幕が放送室に…?」
すぐにパニックになった生徒が大きな波のようになって私たち
に襲い掛かってきた。
「くっ…これだけ多くの生徒が居ると危険だな…」
「でも…あと…少しです…!!」
波に逆らいながら私たちは進み、かきわけながら2階に上った。
さすがに生徒は殆ど校舎から出たらしく、殆ど人気は無かった。
「ここが放送室か。」
扉のノブをひねってみると、不用心にも鍵はかかっていなかった。
「開けるぞ…」
「はい…!」
「「せーの…!!!!!」」
ガチャ、と開けると、そこには1人の人物が立っていた。
茶色の長髪で細身だが、体つきから見て男性…青年くらいだろう。
このような状況を見て逃げもしないという事は一般人…とは考えにくい。
「お、お前が…」
「あなたが…」
「都道府県戦争」の黒幕…?
2人が声を発してから、ようやく青年は、ゆっくりこちらを振り向くと、
「ううん?違う。」
と、ギザギザの歯をチラリと覗かせ光らせながらながら、
「俺は千葉県代表の能力者 舞浜 花生――――だぜ。」




