♯01
あれは…確か、うん。そうだ。
夜道にて、私は帰宅する途中だった。なんだっけ…そうそう部活帰りだ。
人通りも多い道で、彼女たちの他にも確か散歩をする者やランニングをする者もいたはず。
「はあ…この前のテスト悪かったな…」
私は、橋の上を渡りながら、ふと水面を見つめた。
その前の日の雨のせいか、水面はいつもより高くなっていて、流れも激しかった。
「ここから落ちたら楽になるかなーなんてね。」
私は、当然冗談の気持ちで、へらへら笑いながら橋の上から身を乗り出してしまった。
しまった、のだ。
刹那、
「ん」
後ろからきてた
バイクに乗っていた何者かが
「わっ」
私の背中を押し、
「え…」
私を落とした。
「ひ、人が川に落ちたぞ!!!!!!!」
誰かが叫んだ。
聞こえたのはその言葉だけだった。
私は流れが急になっていた川に流されていった。
水面で仰向けになりながら何とか見えた景色。
誰かはパニックになりながら水面を見つめ、
誰かは私を突き落とした犯人を追いかけようとしていた。
しかし、バイクに乗っていた犯人を再び誰かが捉える事は出来なかった。
そして私はようやく気がついた。
(あれ…苦しくない…)
自分が水中でも呼吸が出来ている事を。
(ど、どういう事…?)
そして私は、呑気に、ある川岸に流れ着いたのだ。
「何で…私…」
その時、私の目の前にバイクが止まった。
そのバイク、ひどく見覚えがある。
…ああ、思い出したくない。
「あなたは…」
【おはよう】
ボイスチェンジャーにかけたような気味の悪い声が聞こえた。
「私を殺すつもりだったんですか」
【殺す?】
「だって突き落として…」
【死んでないじゃないか】
「それは…」
【おはよう、横須賀まりん】
「えっ…」
気味の悪い声は、呆然する私を無視するように再びバイクに乗って去って行った。
それから私が警察に保護されるまでは時間がかからなかった。
こうして私は『目覚めた』のだ。




