母との思い出の場所
私は鎮痛剤で痛みを抑えるだけ
という方法で、今まで過ごしてきた。
父の想いからだ。
母のように苦しんでほしくない、
という想い。
私もそれに同意した。
私の場合、苦しみよりも
『母に早く会いたい』……
そんな想いからだ。
でも、〖死〗というものが近づいてくると、
さすがに怖かった。
きっと……父と離れるのが
嫌だから。
でも向こうには母がいる。
だから私は、自然と自分の死を
受け止めていた。
『死にたくない』と、
思うことはなかった。
『 美琴さん……あなたの命は──
──残り3日です。』
そう医師に言われた時でも、
私はただ『そうなんだ』と思うだけ
だった。
******
医師に『自由に過ごしていい』と言われ、
私は夜に、あの公園に一人で行くことにした。
その公園は、母との思い出の場所だった。
私が5歳の時、母と一緒に
たまたま見つけた。
近所のお祭りに行った帰りで、
確か夜の9時だった。
それから毎日のように9時になったら、
そこへ行くようになった。
でも、私が10歳になると
塾やピアノなどの習い事で
行かなくなってしまった。
──そんなことを考えていると、
いつの間にか、私は公園の前まで
来ていた。
「……変わってないなぁ……。」
母との思い出の場所……そこは──
──〖桜ノ宮公園〗。
遊具がブランコしかない、一見、
寂しい場所。
でもそのブランコの周りには、
しだれ桜が何本も植えられていた。
ブランコに座り空を見上げれば、
空を囲むように咲き誇っている。
──私はゆっくりとブランコに近づき、
そして座った。
上を見上げてみると、
そこには満天に広がる星たちが、
しだれ桜に囲まれ輝いていた。
「……もうすぐで……会えるよ……。」
そう呟き、私はただ
星たちを眺めていた。
──その時だ。
「…どうして、泣いてるの…?」
そんな声が聞こえたのは。
いかがでしたか?
次回から、翼との日々が始まります。
楽しみに待っていただけると嬉しいです☆
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