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DOG RACE  作者: miku
1/6

開口一番

                 

                   少年少女は囁き合う。


噂を。

今、はやっている噂を。

彼らを、語る、繋ぐ、広げ、また語る。


「知ってる?感染者ばかりの不良グループ・・・」「羽黒ってリーダー・・・」「カラスっていかれた奴が・・」


新しい噂は、泉から湧く水のように滾滾こんこんと生まれる。


「ううん、今一番新しいのは・・・」「・・・・そう、三人組の強盗団」「そいつらも・・・・」「キチガイばかりだな」「警察もお手上げ・・・・・」「・・・・・指紋も何も形跡が出ない」「姿なんて、誰も見たときが無い」



           「捕まらない様は、まるで幽霊・・のようだって」




                  第一区 某大手銀行


「ありゃ、気を失っちゃったよ」


「ヒャハッ!マジかよ?びびりすぎだろじいさん」


虎の着ぐるみはげらげら笑いながら、カウンターの後ろにひっくり返って落ちる。

落ちた後も、痛みに数度咳き込みながらも笑い続けていた。


「あ、さてと」


クマの着ぐるみはカウンターの奥に入っていき、馬鹿でかい金庫の前に立った。

着ぐるみの中で顔を嬉々とさせ、金庫の扉に手を置いた。


スッ


着ぐるみの布を残して、中身の腕だけが金庫の扉に吸い込まれる。

さながら幽霊のように着ぐるみの中身は金庫の扉に腕を入れた。


「おっ、あと少し、うぎゃ、ずれた!・・・・よしっ」


ガチャ・・・


重々しい音と共に金庫の扉を開く。

三人の目の前に広がるのは、予想以上の金と宝石の山。


「うっひょーーーーー!」


「ひゃっはぁ!すげぇなこの銀行。マジでだったんだな!」


「早く回収しましょう」


馬鹿笑いしながら、金を袋に詰める虎の着ぐるみとは対照的にてきぱきと行動するウサギの着ぐるみ。

そんな二人を横目に、クマの着ぐるみはカウンターに置いてある新聞に目を落とした。


「わ、うちら新聞に載ってるよw」


「どうせ三流だろ?」


「そやけど、なんかヒーローみたいに書かれてるわ」


クマの着ぐるみは困った顔をしながら、肩をすくめた。


「うちらはどう考えても悪人・・なのにな」






                   第一区 ファストフード店


いかにも不良と言った感じの少年達が数人でハンバーガーを貪っている。

平日だというのに、こんな所にいることからどうやら学校はサボってきたようだ。


「知ってっか?羽黒のチームに新人が入ったらしいぜ」


「マジかよ」


「ネコって奴でよ、そいつも普通じゃ無いってよ!」


「はっ、それうけんな」


「てか、ネコって、マジ笑えるよな?っべ、うけるわwww」


「だな、ははっはあっははは!ははぶべっぁ!」


一人が大爆笑した直後、後ろから何者かが笑った少年の頭を鷲掴み、テーブルにたたき付ける。

息を飲み込む少年達に、たたきつけた本人は淡々と言葉を紡ぐ。


「丸聞こえなんだよ馬鹿どもが」


「なんだお前!?」


「なんだお前?それは無ぇだろ」


自分たちと変わらないくらいのその少年は、フードを被り眉間にしわを寄せている。

ハンバーガーを食べていた少年は目を丸くして、フードの少年を指さした。


「あれ?お前って・・・」


「俺がそのネコだよ悪いか?」


ネコの言葉に少年達が色めき立つ。

立ち上がるとネコを囲み、少年の中の一人がネコの鼻先まで顔を近づける。


「やんのか?」


ネコは黙ってにらみ返している。


「やあ、ネコ!随分、顔が近い友達だね。カマ友達?」


場違いな声がし、ネコの顔が「ぐっ」と曇った。

少年達も「ああ?」と声をした方を見る。

これまた、同じくらいの少年グループ。

だが、ネコとは違い、その真ん中に立っている少年は誰もが知る人物だった。

幾何学模様の入ったヘアバンドに童顔というアンバランスな感じが、その人物を形成していた。


「羽黒!?」


「知っててくれるなんて俺有名人?」


おちゃらけた調子の羽黒は少年達に近づき、ネコの正面に立っていた少年の肩に手を置いた。

それはまるで、親しい友人のように。


「いやぁ、今日の所はお互い引こう?俺らも暇じゃ無くて」


「何いってんだ」


ぐっ


少年の肩に羽黒の指が食い込む。

苦痛に顔をゆがめるが、羽黒は力を緩めるどころが益々力を入れる。


「え?ちょ、ちょ、ちょちょちょ、イたっ、痛い!!」


少年が悲鳴を上げるが、羽黒はにこにこしたまま指を肩に食い込ませていく。

異常さに周りの少年達も何も言わず見つめている。


「『引いてやる』つってんの、お客様の迷惑だろうが」


「・・・・わ、わかった」


羽黒は手を離し、にっこりと笑った。

そして、周りの客達に頭を下げるとネコと仲間達を引き連れて店から出て行く。

改めて、店の中にいた者達はその異形さを再確認する。

その中の初老の男が汚い物言うように吐き捨てた。

羽黒達、感染者が言われ続けた言葉。

これからも言われ続けるであろう言葉。
















「化け物・・・・・!」





挿絵(By みてみん)

受験がくるので、GOBLIN OF CRIMSONが終わる前に書き始めてしまいました。

ちゃんと、ゴブリンも書きます。


自分勝手ですみません。

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