28.売られた喧嘩は買わねばならぬ
よく言うよね。
売られた喧嘩は買わねばならぬって。
到着しました、新西の国の王都らしいですよ。
お城が見える小さな宿屋をまるっと貸し切って、二日は旅の疲れを労ってダラダラと過ごさせてもらったのよ。
この辺りは農作物が豊富ではないのか、或いは特産物なのか、芋もどきな野菜……多分野菜が常に入っているんだよね。
主食なり主菜なり副菜なり必ず一つは入っている。
ドイツの芋事情みたいなものだろうか。
往復で一ヶ月以上掛かるし『仕事』が終わったら早々に帰りたいってのもあるしね、姐さん達を始め姐さんズのパトロンさんや、私のパトロンズに館の従業員用のお土産も買っておいたし遣り残しはないかな?
そんなに時間あったわけでもないから、質より量なのは否めないけど許してくれるでしょう。
で、本日は例のお客さんとご対面の日なんですけどね。
ところで、お客さんってどんな人? とついてきてくれたオーナー弟に聞いてはみたけどちゃんと教えてくれなかったのよね。
まぁ、オーナー兄弟が押し負けるくらいなんだから、そうとう良い身分な人なんだろうとは思ってましたよ。
思ってましたが、何で偉そうな女性が一杯乗り込んで人の体を芋のように洗うんですかね。
何気に不愉快ですよ? オーナー弟よ。
デリケートなお肌や髪だって乱暴に洗われたし。
股ん中にいきなり指突っ込まれてうひょっ! とか言っちゃったし。
中で爪を立てられそうになったときは流石に足が出ましたけどね。
いくら温厚な私でも怒るわよ! 真っ裸で泡だらけで威厳も何もあったもんじゃありませんがね!
人の大事なところに何する気なんだ。傷ついたらどうしてくれるんだ。病気だ? ふざけるな。プロを舐めんな! 定期的に医者に診てもらってるわ!
毛じらみ、蚤、ダニ、十年くらい前から対策済みだっつの。雑草一本生えとらんわっ!
というかオーナー弟今すぐここに来い! こんな話聞いてないんだけど! 肝心な商売道具を乱暴に扱うって何なの? どうしてもって言うから来てやったのに! 来てやったのに、何この扱い! 帰れというなら喜んで帰るんだけど!
頭きたんで呼びつけたオーナー弟へ捲くし立てたら、高慢女の一人が『んまー!』みたいに文句言ってますけど知ったことですか。
日本ほど医療が発達してるわけでもないのに、デリケートな部分にちょっとでも傷つけて化膿したらどうしてくれるのよ。
このあと『仕事』もあるというのに冗談じゃないよ。
言っておくけど、傷ついてたらマジで帰りますから。『仕事』なんてしたら確実に余計な雑菌入るんでしたくありません。宇宙を形成していると言っても過言ではない菌の温床地を馬鹿にすんじゃないわよ。股間がブラックホールとかシャレにもならんわっ。
その辺はオーナー弟も商売柄分かってるんで高慢女に文句を言ってくれた。
いいぞ、もっとやれ。
結局、高慢集団は結局は使いだし色々と権限もないようで、すんごい嫌な顔で謝りはしたけどね。
あとは自分で泡を流すことになりましたよ。
着替えも高慢集団が用意してきた服を着付けされました。
何だかなぁ。
もう! 何で自分で支度しちゃいけないわけ?
はい? 暗器を隠してないかの身体検査?
…………。
帰っていいかな? 駄目? あ、駄目なのね。
行きたくないーっ!