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裸でゴメンあそばせ?  作者: 市太郎
裸でゴメンあそばせ?
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01.因果応報


 よく言うよね。

 親の因果が子に報いとか、因果応報とか、何の因果でこうなったとか?

 つまりはこれっぽっちも身に覚えがないのに、現在進行形である果報の何たるや。

 それとも、情けは人の為ならず巡り巡って己が為とやらの逆バージョンですかね。

 昔しでかした悪さが巡り巡って自分に還ってきたとか。

 そういう場合は、天に吐いた唾が戻ってきたというべき?

 人生二十五年生きてきて、反抗期には親と派手に喧嘩もしましたし、小狡いことをしてしまったりとか、見栄で小さな嘘をついたりとか、そんな悪さならしてきましたよ。

 えぇ、私も若かったもんだと反省すべきところではありますけどね?

 だからといって、これは無いだろうって思うんですよ。

 私、そんなヒドイことしてきちゃいましたか? ってね。

 これはいったい何の天罰なんだろうかと。

 もう本当に世を儚んじゃおうかとか、どう考えても自分のせいとは思えず、親とか先祖とか前世のせいじゃないかとか。

 (てん)ぱり過ぎて危うく頭が宗教方面に傾倒しそうにもなりましたが、今は諦念しちゃってますよ。

 普通にOLをしてまして、ちょっと飲みすぎた週末の飲み会で、近所の公園を通り過ぎたところまでは覚えてるんだけど、それ以降の記憶がない。

 気付いたらここどこ状態。

 コンクリとかアスファルトなんて見慣れた物は一切なく、倒れていたのはカラッカラに乾燥しきってひび割れた地面。

 目の前を乾涸びた枝の塊がコロコロと風に吹かれていく様子を呆然と見詰めていたっけなぁ。

 未だにあの枝の絡まり具合とか鮮明に覚えてるもんね。

 状況が把握できなくて、最初は西部劇のセットかと思ったし。

 というか思い込もうとした、が正しいか。

 二日酔いで気持ち悪いし、体フラフラだし、訳分からないし、日差しきついし、脱水症状で死ぬかと思ったね。

 日差しはちょうど真上から照りつけていて、じんわりと滲んでる汗に風が吹くと一瞬ひんやりとして気持ちいいのよ。

 さすがにリアル過ぎて怖くなってきたから、日差しを遮る場所を求めて歩き出したまでは良かったんだけど、障害物と思わしき影が遠いのなんの。

 ヒールの細いパンプスで長距離歩けとか無理だし。

 というか私、事務職で営業じゃないから普段から歩くこと少ないんだよね。

 趣味だってインドアだし、通勤以外で電車なんか乗るの嫌いだし、オフは全部車で移動ですよ?

 どれだけ歩いたかは分からないけど、そうたいして歩かないうちからへばっていたのは確実だったと思う。

 で、今にも倒れそうな頃合に現れたのが何と三両の馬車。

 まじで、西部劇に出てくるような馬車。

 馬が引く幌を被ったアレですよ。

 かなり朦朧ときてたからうっかり助かった! とか思っちゃったけど、普通に考えれば日常で馬車なんて有り得ないし。

 その時の状況からして、日本在住だったのにいきなり荒野とか既に有り得なかったわけなんだけど、更に有り得ないのが馬車から出てきた連中ですよ。

 盗賊? 山賊? 今更、連中の職業なんて詳しく知りたいとも思わないけど、死にそうな女を普通犯すか?

 まぁ、普通じゃないから賊をしてんだろうけどね。

 で、連中に手加減なく輪姦(まわ)されて、売られた先がここ場末の売春宿。

 珍しい容姿をしているからって、結構いい値段で売れたらしいですよ。

 というのも、何言ってるかさっぱり分からなかったので後から姐さんたちに聞いた話ね。

 とうぜん、日本語じゃないし、ろくに喋れないけれど英語でもないし、中国語でもない。

 まるっきり聞いた事のなかった発音なんだよねぇ。

 いかにも荒野ですって場所を一人で歩いていたときから薄々は思っていたけれど、連中と対面したときには流石に日本じゃないし、地球でもないってことは気付きましたよ。

 だって、連中の顔というか体とかね、動物が混じってるんですもの。

 馬車を引いてた馬だって大きさは馬みたいだけど馬じゃないし。

 今にも死にそうだったのに連中のナリを見た途端、元気よく悲鳴上げて逃げ出しちゃったっけなぁ。

 直ぐに捕まったけどね。

 顔が獣相だったり、体が二足歩行できちゃう動物だったり、人間の体で動物並の体毛とか、角とか耳とか羽とか鱗とか、要はノーマルな人間が少なかったりするから、私みたいな平凡な容姿でも珍しいんで高く売れたんだけどさぁ。

 何でこんな目にあっちゃってんだろ、私。

 まったく、何の因果でこんなことになっちゃったのかしらねぇ。

 さすがに三年も経てばそれなりに言葉も覚えたし、一応は衣食住も安定しているし、この世界の常識なんかも覚えてきたけど、こう暇ができると考えちゃうよね。

 何でだろうって。

 窓枠に頬杖をつき、日が沈みつつある見慣れた通りを見下ろしながらつらつらと物思いに耽っていたら、妹分がお客さんが来たことを知らせにきてくれた。

 灰吹きへキセルの灰を落とし、重い腰によいこらせなんて言っちゃいますよっと。

 お客さんを出迎えにいかないとね。

 さて、もうそんなに若くはないんだけど今夜も頑張りますか。


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