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歌姫

作者: 森 go太
掲載日:2026/10/21

 君は救いの歌を歌ってくれる。

 内側から闇を引っ張り上げて、汚れを丁寧に削いでくれるような歌声で、僕を安心させて欲しい。

 君の歌声を初めて耳にした時、僕は人間ではなく、魔物だった。

 醜く草木の中に隠れ続け、光を知らないゴブリン。それが僕の本質だ。僕には何も無い。目を見張るような魔力も、周囲を惹きつけるカリスマ性も、何度やられても立ち上がる闘志も。何かがあるとしたらーーそれは生きているという事実だけだ。僕がこの世界に存在していても、誰も僕のことを必要としない。いてもいなくても変わらない。それが僕だ。その認識は今も変わらない。君の歌と出会えた今もーー。


 しかしそんな僕を、君の歌は許してくれる。

 本当に申し訳なくなるくらい優しく、

 柔和な歌声で。


 何言ってるの。


 貴方は顔の泥を拭わずに


 貴方は今、私の歌を聴いてくれているじゃない。


 背を曲げて立っているけれど


 歌は誰かの耳に入らなければ、


 たとえ泥を拭わなくても、貴方は素敵だと


 歌として成立しないの。


 そう言ってあげることができたなら


 だから今この歌は紛れもなく、


 少しでも貴方は頬を緩めて


 貴方が完成させたのよ。


 笑顔になってくれるでしょうか




 …今僕は、人間に戻ることができた。

 君の歌の魔法のおかげで、たった一瞬だけでも。

 それにどれだけ救われているか、

 今後の僕の行動で、

 証明していきたいと思う。

 そしていつかは、君の歌に救ってもらうんじゃなくてーー

 純粋に楽しみながら、君の歌に聴き入りたいんだ。

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― 新着の感想 ―
 森 go太さん、こんにちは。 「歌姫」拝読致しました。  ゴブリンに向かって歌う、歌姫。  こんな、俺のために。  聞いてくれることが嬉しいのよ。  歌は、そうやって成立するの。  ゴブリンの…
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