◆三日目・声◇
◆三日目・声◇
その日、義母がやってくると、手にはいくつもの荷物を持っていた。
「登美子さん、ずいぶん荷物を頼んだのね。玄関前にこんなに置いてあったわよ」
登美子は義母が腕に抱えた、いくつもの荷物を見て固まった。善意で持って来てくれたのは分かるが、複雑な気持ちになった。
数が多いので、後で開けようとそのまま物置にしまった。捨てて欲しいとは言えなかった。
義母は手際よく世話をしてくれ、昼の三時には用事があると言ってこの日は早めに帰った。
ひとりで過ごす時間的なゆとりが出来た。荷物は七つもあったが、全て開けることにした。
あの声はせず、特に何も起こらない。開けたダンボールを全て畳み、キャリーカートに乗せ、マンションの一階にあるゴミ置き場へ向かった。
部屋へ戻る途中の廊下に、置き配の荷物がいくつも置いてあった。
部屋へ戻り、空気の入れ替えをしようと窓を少しだけ開けた。カーテンを揺らし、ひんやりとした風が流れ込む。
さささささ……。
目の前の床を擦るような音。音はしたが、何もない。
ギィ……バタン!
玄関扉の開閉音。義母は帰ったばかり。鍵を閉め忘れたかと肝を冷やし、誰かが入ってくるのかと待ち構えた。
しばらく経っても誰も来ない。玄関口へ恐る恐る向かって廊下を確認したが、誰もいない。玄関扉に近付いて鍵を確認した。チェーンもしっかりとかかっていた。
なぜ開閉音がしたのか。ふと恐ろしいことを思いついてしまった。誰かが入って来て、出ていけないように鍵をかけたのでは……と。
さささささ……。
背後でまた音がした。気配を感じて動けなくなった。その音は部屋や廊下を往復しているように音を繰り返している。
目の前はチェーンと鍵のかかった玄関扉。一瞬で飛び出して逃げることは出来ない。背後に迫る気配。
廊下を繰り返し何かが移動しているような音。登美子は震える身体を支えるように、扉に片手を突いた。
トットット……。
急に音が変わり、廊下を軽快に走る足音のようなものが聴こえた。その音は登美子の背中で止まった。
唾を飲み込み、全身に力が入った。
トットット……ト。
「おかあさん」
子どもの声がした。
シャワーの音……あの日、ダンボールに入れて運んだ物……過去の記憶がいくつもフラッシュバックした。
登美子の視界が暗く狭まり、身体がぐらりと揺れた。意識が朦朧とし、膝の力が抜けて崩れ落ちた。
しばらくして目を覚まし、首を振って左右を見回した。耳を澄ましたが、迫ってくるような音と声はもうなかった。
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