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4日目 最後の一人



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー…午後七時。


入寮して初の食事の時間になった。今回は初日という事で先生達が出前を取ってくれていた。明日からは自分達で用意するように、との事。


「蕎麦だ〜!」


「引っ越し蕎麦ってやつですかねぇ」


一目散に出前の蕎麦を取りに走る如月とその後をゆっくり追う黒宮と俺。黒宮から箸を受け取る。


「…最後の一人、来ないな」


箸を割りながら言う。ズルズルと蕎麦を啜って如月が答える。


「忘れてるんですかね?今日から入寮って」


「おっちょこちょいすぎる〜まぁそれはそれでおもろいけど」


少し長めの髪を耳にかけながら黒宮が蕎麦を啜る。如月はというと既に麺を食べ終わり、スープをゴクゴク飲み干している。


「美味しかった!これおかわりありますかね?」


「少しならあるって先生が言ってただろ…」


「言ってたっけ?まあいいや!行ってきます!」


器を持ってさっさと蕎麦をおかわりしに行く如月を見送り、俺も蕎麦を啜る。すると、スマホが鳴った。翡翠からのメッセージらしい。食事中だから返信は控えるが、内容だけ確認する。


『寮どう?』


?と首を傾げた猫のスタンプと共にシンプルなメッセージ。後で返信しよう、とスマホをポケットに入れる。


と、気づくと黒宮の姿がなかった。代わりに如月がおかわりを持って戻ってきており、ズルズルと再び蕎麦を啜っている。


「黒宮は?」


「ん、おかわりみたいです」


意外だ。あの感じだからおかわりとかしないと思ってた。偏見だったな。如月が麺を飲み込んで言う。


「あとの一人、どんな人なんですかね〜」


「予想つかないよな…でも如月は誰とでも仲良くなれそう」


「そうですかね?紅平先輩は誰とでも仲良くなれないんですか?」


すごい質問だ。そして答えづらい。肯定しても否定しても変な空気にならないか…?


「あはは、すごい事聞きますねぇ」


会話を聞いていたらしい黒宮がおかわりを持って戻って来た。如月が首を傾げる。


「すごい事?何が?」


「誰とでも仲良くなれません!って言わないでしょ。誰とでも仲良くなれます!は言うかもですけどぉ」


「…確かに!」


「んふっ、ヤバ、面白すぎ…燈也先輩は誰とでも仲良くなれそうですねぇ」


「??」


本当にわかってないらしい如月がまた首を傾げる。そんな二人を見ながら正直三人でもいいような…という気持ちになる。自分で言うのもなんだが、結構上手くやれてないか?これ。最後の一人がどんな人なのかで、どうなるかわからない。




ーー…時刻は午後八時を回った。


消灯時間は十時半。テスト期間は制限がなくなるそうだが、十時半になると自動的に電気が消える設定になっているそうだ。さすがは最新技術搭載の寮である。


そして、未だに最後の一人は現れていない。


(如月の言ってた通り本当に忘れてたりして…)


ちらりと如月のベッドに目を向ける。静かだと思っていたが眠っているらしい。先ほどまでそこそこ大きい音量で音楽を聴いていたみたいだがそれも鳴り止んでいる。寝落ちたのか。


その時。


「っはー!雨ヤベー!」


ドアを乱暴に開け、誰か入って来る。その姿はびしょびしょで、雫が滴っている。今、雨は降っていないので通り雨に遭ったらしい。


「…三雲朱雀…!?」


思わずその姿を見て俺はその人物の名前を呼んだ。名前を呼ばれた三雲が俺に視線を向ける。


「いや何でフルネームよ。てか…紅平クンじゃん、マジ?同室か〜」


俺はそれを聞いて固まった。同室。という事は、最後の一人はこいつだ。その会話を聞いていたのか聞こえたのか、如月のベッドがごそごそと動く。起きたのだろうか。


「んん…何…」


「お?紅平クン以外にもいたわ。見えなかった」


むくりと如月が体を起こす。そして、三雲を見るなり後ずさった。


「ひ!?濡れ…妖怪!?」


「失礼すぎんだろテメェ」


「あっ人間…いや、ご、ごめんなさい!!」


如月がその場で土下座する。上のベッドだからよく見えないが。三雲にも見えてないんじゃないだろうか。


「てかさ、拭くモンないの?」


「あ、じゃあこれ…」


俺は自分の鞄からタオルを取り出し、三雲に手渡した。三雲はサンキューと言いながらタオルで全身を拭く。


すると、シャワールームがカチャリと開き、シャワーを使っていた黒宮が姿を現した。よかった、全裸で出て来る事はなく、ちゃんと服を着ている。


そんな黒宮は目の前でびしょ濡れの三雲を頭から爪先までゆっくり見る。如月とは逆で全く動じない。


「…なんか、海とか泳いで来たんですかぁ?」


「なワケ〜!てかこの辺海ねーから!」


「ですよねぇ」


そんな二人を見て、俺はすごいなと思った。初対面だよなあの二人。開口一番それを言える黒宮もすごいがすぐ切り替えせる三雲もすごい。


「今シャワー使い終わったんだろ?俺使っていい?」


「え?先約ありますけど…燈也先輩が」


黒宮が如月に視線を移す。同じく、三雲も如月に視線を移した。二人に見られ、如月は負けじとばかりに視線を逸らさない。


「そこのオレンジ頭。順番変われ、俺と」


「ええ!?いや俺結構待ってたんですけど!?ノラ、シャワー長いんだもん!」


「そんな長かったです?」


「長いよ!三十分くらい経ってるよ!」


確かに三十分は経っている。というか二人とも大浴場に行けばいいのでは?と思うのは俺だけだろうか。まあ口出しするとややこしくなりそうだから黙っておくが。


…そんな黒宮と如月の会話をよそにしれっと三雲はシャワールームに入ってしまった。如月が叫ぶ。


「ああああ!!卑怯者!!順番抜かし〜!!」


「まぁまぁ燈也先輩、シャワールームは逃げませんよぉ」


「元々はノラのせいなんだけど!?」


そんな二人を見て、シャワールームに俺は視線を移す。まさか最後の一人が三雲とは…悪い人ではないのはわかる、わかるんだけど…


(なんか…やりづらいというか…話しにくいというか…)


一人悶々と考える俺をよそに、シャワーの音が少し部屋に響くのであった。

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