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2日目 いざ入寮


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー…翌日。


「紅平、おはよ」


「おはよう、翡翠」


下駄箱で靴を履き替えていると翡翠が挨拶をしてくれた。同じく靴を履き替えながら翡翠が尋ねる。


「で、寮の話はどうなったの?」


「あ、うん。いいって。父さんも母さんも」


「よかったじゃん」


翡翠が微笑む。昨日の時点で入寮希望の紙は記入してきた。担任にそれを渡す為、翡翠と分かれ、職員室に向かう。




ーー…職員室に向かう途中、すれ違った生徒が何か紙を落とした。だいぶ急いでいるらしく、気づかずに走って行く。俺は大声で呼び止めた。


「ちょ、ちょっと!落とした!落としたよこれ!!」


俺は素早く紙を拾い、パタパタと振った。それを聞いた生徒は大げさに前のめりで止まり、俺の方を向く。


「あー!」


体の向きを俺の方に変え、走って来る。かなり足が速いみたいで、すぐに俺の目の前に立った。息切れ一つしていない。


「あざっす!」


ブン、と音がするくらい頭を下げ、紙を俺から受け取る。


「それ、入寮希望の紙だよな」


俺は生徒に尋ねる。先ほど拾った時、入寮希望の文字が目に入った。この生徒も入寮するのか。


「あ、はい!なんで、職員室に行こうと」


「…職員室こっちだけど…?」


俺は自分が向かう方向を指差す。生徒は目をぱちくりさせ、自分が来た方向と俺が指差す方向を交互に見て、大げさに口に手を当てた。


「タ、タイムスリップしてる…!?」


「いや、してないしてない」


「職員室こっち!?ですか!?」


「うん…」


は〜と感嘆の声を上げながら今度は歩き出す。というか、この生徒ネクタイの色からして二年生なんだが…


(二年生なのに職員室の場所間違えるか…?方向音痴?)


「あ!ありがとうございました!」


生徒はお礼を言ってないのを思い出したのか、わざわざ俺の方に体を向き変えて言った。できた後輩である。


「いえいえ」


俺も生徒の後に続き、職員室に入る。担任は机でプリントの整理をしていたのでそのまま入寮希望の紙を提出した。




ーー…放課後。


「じゃあ今から寮の説明会なんだ」


「そう。だから今日部活行けないわ、ごめん」


「了解〜」


翡翠に断り、俺は教室を後にした。俺と同じく入寮希望者はそこそこいたらしく早くも説明会をすると、帰りのホームルームで担任から聞かされた。


(第二体育館だったよな…)


体育館ほど広くはないがそれなりに広い第二体育館を指定するあたり、それなりに入寮希望者がいるのだろう。そもそも男女合同らしいし。


ーー…内容としては人数的にあぶれる事はなく、今のところ希望者全員が入寮できるという。四人一部屋、メンバーは先生達が話し合って決め、学年、部活はバラバラ。兄弟姉妹は意図的に別になる。


掃除、洗濯は四人で決めていいそうで、担当制、当番制の規則はなし。食事のみ当番があり、メニューは自由。外食や買い物は先生からの許可が必要。


スマホやゲーム機の持ち込みは基本可能。起床、就寝、食事、入浴時間は固定。入浴時間は四人交代で、大浴場があるらしい。ちなみに部屋内にシャワールームもあるのでそこは時間の決まりはなし。


…等々、色々聞かされマニュアルも渡された。自由といえば自由だが、やはり寮だ。ちなみに寮長というのもいるらしいが、先生が決め、やる事は抜き打ちの部屋チェック(掃除してるかとか酒やタバコ等違法な物は持ち込んでないかとか)、週一回の点呼確認とか。


早速来週から入寮可能らしい。希望を出してからが早い、一年以上前からこういう計画があったんだろうなと思う。場所は学校の道路を挟んで向かい、坂を少し登った所だ。手前が女子寮、奥が男子寮。


正直、俺はワクワクしていた。今まで家から出た事なんてないし、泊まりなんかも小学生の頃以来だ。中学時代は引きこもっていたので修学旅行なんかも行ってないし。




説明会の夜から俺は荷物をまとめ始め、あっという間に入寮の日がやって来た。朝、登校してそのまま入寮だ。


「行ってらっしゃい、紅平」


俺を見送る母さんの顔は淋しげだった。父さんは朝早く出勤したので前日、頑張れよとだけ声をかけられた。教科書の入ったスクールバッグと、荷物の入ったキャリーケースを持って、玄関の扉を開ける。


「行ってきます」


次、この家に帰って来られるのは夏休みくらいだろうか。辛くなったらいつでも戻っておいで、と父さんと母さんに言われた。今のところそのつもりはないが、帰れる場所があるのは心強い。


ワクワクと不安が入り混じって、変な気持ちだが、新しい事が始まるのは間違いなくワクワクだ。キャリーケースを寮の隣にあるちょっとした物置に置いて、学校に向かう。

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