78.私─私、食べる、そして──。
「お、お前達はなんなんだ!」
「私は世界を愛する者だよ!」
「な、何をとち狂った事を言っている!?」
「ははは、可笑しいのは君たちだよ。その装置で何をしようと言うのかな?」
「世界を生み出すのだ! そして、そこから無限のエネルギーを得るのだ! 足りない際の贄は、この中心に座している!」
「ッ! 愚かな!」
「なんだと、獣人風情が!! 貴様らは魔力が少ない糧にもならない存在! 口を開くな!」
「人類至上主義者か…」
「この私をそんな愚かな存在と同列に扱わないで貰いたい! ッ! く、来るな! 私に指一本でも触れてみろ! お、おい──」
グチャッとウルがヤッてしまった。
「ウル、少しは建設的にだね」
「主…でも、流石にこれは無いだろ?」
「まぁ、そうだね」
チラッと横を見れば、起動させる為の魔力を補う為なのか、人に関わらず、色んな種族の子供達が寄せ集められては犠牲になろうとしていた。
「おい! 死にたくなかったら、俺に着いてこい!」
「ウル、そっちは任せたよ」
「ああ」そう言いながら、ウルは子供たちを助けては研究施設から離れていく。
「さて、君たちの知識と記憶、経験は私が頂くよ。残しておいて、再利用されても危険だからね。この装置もそのまま、食べちゃうかな。素材が残るのも再利用されたら不味いからね」
バクンッ──と暴食スキルを発動させては喰らい尽くす。
──対象の記憶、経験、スキルを得ました。
「他にも資料とかも隠滅しないとかな。えっと、あっちか。パスワードは…後は秘密の場所も──」
全てを喰らっては私は研究施設を後にして、国家が混乱し始めた時には、多数の国から有志を集っては対策に当たっていた団体が対応に来たのは私が抜け出してからだった。
「後は、人類側で上手く揉んでもらうかな」
「主…」
「お帰り、ウル。どうだった、ちゃんと渡せたかな?」
「あぁ。彼ら師団の通り道に子供たちは放り投げできた」
「まぁ、上出来なのかな? 後は──」
──称号を得ました。
──【獲得条件を満たしました】
──世界の調律者の称号を得ました。
──【獲得条件を満たしました】
──その世界を献身的に救う姿勢に世界、私はアナタに報いる事にしました。
──七元徳スキルを得ました。
──謙虚、慈愛、寛容、勤勉、節制、純潔のそれぞれのスキルは呼応する大罪スキルと同列に扱われます。
「ん? 私はアナタに報いる?」
「世界、世界か。そうか、君は神様ではなくて世界だったのか。私の声が聞こえているかい?」
──。
今は意識をしたら、確かに感じる。
そうだ。
元からこの気配には包まれて居たんだ。
「世界。私はあの世界を呑み込んでしまって、亜空間にあの【世界は存在】している。君も似たような者なのかな?」
──。
「…教えて欲しい。他言は、古竜ちゃんとウルちゃんにはしちゃうかも、だけれども」
──世界を私を救った褒美として特権を使用します。
──私達は世界。世界はそれぞれリソースを割かれては生命を育て、そして循環させます。
──これには深い理由は有りません。私達の産まれも分かりません。
──ただ、最終的には世界は1つから始まりました。
──アメリア。アナタが求める存在はその最初の世界に居るのでしょう。
──このルールも、私の存在意義も形創られたものと言えます。アナタの中にある世界は今はアナタの物です。自由にして良いでしょう。
──リソースが尽きかけています。アナタへの報酬はこれで終わりま……。
「なるほど」
「主? どうした? 急に独り言を」
「いんや、色々とスッキリしたというか。うん、私は世界に認められたようだよ」
「へ?」
「ふふふ、詳しい話は世界の中心で話そうじゃないか。人が安易に立ち入れないように少しだけ、強めの結界を古竜ちゃんとも張りたいしね」
「う、うん?」
「ほら、行かないと置いていくよ」
「あっ、待ってくれ主!」
ウルの声を背後に聞きながら私は歩き始める。
なるほど、古竜ちゃんは世界を救ったんだ。
だから、称号を得られたんだと納得した。
そして、私の心は晴れやかになった気がする。
大罪と美徳のスキルがお互いに干渉しては混ざり合っている影響もあるからかも知れない。
「んー! 世界は素晴らしい」
私は、食べて、そして──人になれたと思う。
世界が私を受け入れてくれたと私は誇らしく嬉しくなっては歩く足取りが心無しか早くなったような気がしたのだった。




