77.私─世界を巡る。
「正直、神様の存在は分からなかったな」
星空を見上げながら、私は言葉を零していた。
「けれども、折り合いはつけれたと思う」
あの世界でも一番古い存在と言われていた古竜に会えたのだ。
そして、あの時は一気に首を落としてしまっては彼との会話は会話じゃなく記憶として行われてしまった。
「彼は世界が好きなんだろうな」
そして、多分。自我が芽生えては、世界の為にその身を捧げた際に、称号を得られたのだろう。
「なら、与えた存在が。そういうルールを組み上げた存在が神様なんだろうな」
うん、その存在は分かった。
後は、私の折り合いだ。
あの世界の時は私を知るために、私は全てを喰らってしまった。
「けれども、今は違う。人として生を与えられては、人として生きていける。心がある。これが私の私としての誇りでも有り、矜持にもなる」
それに、大罪スキルとも向き合いたい。
この世界は好きだ。
色々とあれから世界を巡っては出会いを重ねて行った。
私は不老不死だ。
ステラ達も良い相手と巡り会えては子供を成しては人生を全うした。
私は数年おきに顔を見せては言葉を交わしていたけれども、死に目にも携えて良かったと思う。
けれども、子供達から見たら、私は部外者だろう。
むしろ、ずっと変わらない姿は怖いと思う。
私はそっと、離れてその後の幸せを見守る事にしていた。
「主。あっちに美味しい樹の実があったが、どうする?」
「ん? ああ、これから彼の下へ挨拶に行くんだものね。手土産かな?」
「……それもある」
「ウルはいつになっても食いしん坊だね」
「主程ではない」
少年から、青年位へとなる。そんな曖昧な時期だろう姿だ。
ウルはフェンリルに進化を果たしては、人化の術を覚えては最近はずっと人の姿を取っている。
「まぁ、のんびりと行こう。向こうは待っていないだろうし」
「主、それは間違えてる。アメリアはいつ来るかと、いつも俺は聞かされる」
「そうなのかい?」
「そうだ」
「あら、寂しがり屋さんだ」
「はぁ」と、ウルはその一言で終わらせるのかと目で訴えて来るが、そのくらいの感想しか出てこないのだから許して欲しい。
「それに、直ぐにはいけないかも知れないよ? 最近の人類はきな臭いからね」
「えっと、科学? 魔法? 文明が発展してるからか?」
「うん、そうだよ。戦争にも魔法科学は使われているし、そのリソースの奪い合いで世界は疲弊して来ているからね。そろそろ、世界の中心を狙うか。果ては世界を生み出しては無限のリソースを得ようとするんじゃないかな?」
「……」
「そんな心配な目で見ないでよ。照れるよ」
「俺は分からないよ。それが原因で主は苦しんだのだから。愚かな人類は放っておけば良いんじゃないか?」
「愚かではないよ。素敵だよ、彼らは。キラキラしてるし、素晴らしいと今も思っているよ。ウルだって、未だにステラ達の事覚えてるだろう? それからの出会いの日々だって」
「でも、戦争で死んでしまった奴も居る」
「……そうだね。けれども、そうだからといって私は希望を見捨てたくは無いかな。私は愛してるからね」
「主はとんだ、お人好しで、更に大馬鹿らしい」
「否定はしないさ。さぁ、行こうか。色々と今の文明の後始末を済ませたら、古竜ちゃんに挨拶に行こう」
「研究を壊して、止めるだけで。人類は止まるかは分からないよ、主」
「全てが私がやらなくても良いんだよ。それを止めようと動いてる人達も居るんだから、その重要な部分を壊してしまえば良いさ。私やウルは、あくまでも人類世界からはゲスト扱いなのだから」
「……分かった。でも、危険を感じたら主を引っ張ってでも、逃げるからな」
「ふふ。分かったよ」
そう言いながら、主は歩き出す。
進む先は世界の中心に近くに建国された国家だ。
最初は守護の為という名目で建国された国家だが、時代が移り変わる中で、その名目からかけ離れた理想を謳う国家になってしまった。
今じゃ、科学と魔法を掛け合わせた人類の叡智が全てがここにと謳っている。
そして、その強権を執行させては隣国を討ち滅ぼしてしまったくらいだ。
その理由も、その国家の魔力的リソースを得る為だ。
狂ってしまってるんだ。
だから、アメリアは…主はそれを止めに行くといって今歩き始めている。
俺も覚悟を決めては歩き始めたのだった。




