75.私─世界の中心。
「ふぅ、高いな──そっか、あの時は飛んでいたから意識はしていなかったけれども。こんなに標高も高かったのか。それに魔力濃度も高い。普通の生き物や、魔物は生命活動も難しいだろうに」
なので、植物に限っては楽園なのかと思ったが、樹の実など、生存するのに他の生き物の手助けが必要な植物に関しては同じく生存戦略が大変というか、無理だろうと結論づけた。
「マナを栄養にしている。独自の進化が此処にはある形かな?」
うん。
生えている木々に手を付けては読み取ると不思議な巡りを感じる。
この世界の中心と言われてる山は中心に向けて、世界のマナを吸い上げてるような形で巡っており。そして中心から空へ向けて、浄化されたような綺麗なマナが解き放たれては世界へとまた巡っているような形を取っている。
「そうだよな。実例があるからこそ、あの世界は現実を模して作られたんだ。そして、現実と同じように破滅を辿ろうとして、その中のバグで私が産まれたんだ。全く、不思議な因果だ」
きっと、この先には居るのだろうか?
長い長い眠りに就いては世界を見守っている存在が。
自身はその強大な力故に活動を抑えられては自由を知らない孤独な竜が。
「そう、思うと私は自由なんだな。大罪スキルのお陰とも言えるのだろうか」
私も同格に近いのかも知れない。
けれども、私の場合は大罪スキルが私の自由を実現させていると言えた。
だからこそ、日常生活を送るだけでもスキルレベルが上がっていたのだと気付くのは直ぐだったけれども。
「まぁ、良いさ。色々とこの目で確かめよう。きっと、向こうも話し相手は欲しいだろうさ」
そう言いながらも私は歩みを止めないで登り続ける。
「これは絶景──」
麓まで辿り着いて見える景色は絶景と呼んでも良いだろう。
いや、これもあの世界で見えた景色と似通っているのだから、いかに私の情緒が育まれているのかが分かるというもの。
そして、やっぱり「湖があるな──」そこは湖が有り、木々が有り、マナも浄化されているのか澄んでおり、何よりも小鳥などの生き物の気配がする。
「流石に魔物は居ないか」
パッと見ても生き物の気配はそれくらいか。
そうなると、私の目指す場所は湖の横の洞窟みたいな場所だ。
きっと、私の確認したい。知りたい存在はそこに居るはず。
「後、もう一息かな」
よいしょっと、気合を入れ直しては歩き始める。
疲れなどは無いが、気持ちの問題だ。
きっと、まだ人が踏み入れた事が無いことは無いのだろう。
踏み入れないと、あの世界はモデル出来ない筈だから。
だけれども、そんな空気すら、気配も感じない位、穏やかで清浄な世界へと、確かに私は足を踏み入れるのだった。




