7.私─山賊を食う。
私は歩いた。
私は歩きながら、多くを食べた。
動物、魔物。
草、樹の実。
毒草、薬草。
知識は曖昧にあった。
この捕食した存在が勉強不足だった。
私は補完した。
危険性、存在の明確性、利用価値。
学ぶのは楽しい。
喰うのは仕方ない。
弱肉強食と言うらしい。
なら、彼らは弱だ。
私は強だ?
強さとは何?
弱さって何?
この捕食したものは知らないらしい。
知りたい。
そんな時に獲物が現れた。
「おいおい、これはこれは! お頭ぁ!!」
「なんだなんだ!」
「こいつぁ! 隣街のあの有名な商家のお嬢様じゃないですかい!」
「ああ? 似てるなぁ! 似てるなぁ! でかしたぞ!」
「へへっへへ」
何なのだろう。
誰なんだろう。
「アナタは誰?」
「なんだぁ? 俺のことか、俺はこの辺りをテリトリーにしている山賊だ! その頭だ!」
「頭……」
「おめぇ、舐めてるのかぁ?! 頭はなぁ! 強いんだ! ここいらで一番強いんだ!」
「強いって、何?」
「お頭ぁ! なんだか、コイツおかしく無いですか!?」
「ああん? この辺りで帰りの馬車を狙う予定だったろうが! どうせ、1人で来たんだ! 見ろ! 服も所々汚れている! 何かあったんだろうさ。俺達が再利用してやらないでどうする? なぁ?」
「流石、かしらぁ。かしらぁ? その、楽しんでも良いですかい?」
「ばぁか! 壊さない程度ならいいぞ! だが、最初は俺からだ」
「わかってますよぉ! あぁ、女! おんなぁは暫く抱いてないからなぁ! あぁ! へへへ!」
「女、抱く。強さ……教えてくれる?」
「あぁ。教えてやるよ! その身体の隅々になぁ! その後は金と引き換えにお家に返してやるよ!」
「あぁ、たまらねぇ」
「やれ! お前ら! あぁ、楽しむまでは傷には気をつけろよ?」
そんな言葉と共に山賊達が襲い掛かって来た。
辺りにも隠れているのは嗅覚で分かる。
私は近付いて来る山賊の1人にアイテムボックスから、捕食していた剣を取り出してはおもむろに突き刺す。
ズブっと目の前の山賊に突き刺さった剣は頭を貫いてはビシャぁぁと盛大に血を吹かせていた。
ビクンビクンと貫かれた山賊はそのまま震えているが、バクンと食らう。
──幾らかの経験値とスキルを得ました。
共に私を襲おうとしていた山賊は目の前の光景に戸惑っては立ち止まっていたので、そのまま手のひらを前に向けては矢を放つと綺麗に両目に刺さっては血の涙を流しては大きな音楽を「ギャァァァ!」と流していた。煩いので食べた。
「な、なんだ? お前は?」
「強さ、教えてくれ、る? アナタはここら辺で一番強い?」
「お、お前ら! やっちまえ!」
目の前の大男が叫ぶと隠れていた山賊が全員出て来ては襲い掛かってくる。
そのまま私は彼らの剣、短剣、ダガー、毒の塗られた得物、全部を受け止めては絡みとる。
「な、なんだ? ぬ、抜けない……! や、やめ、ろ!」
そのままズブズブと彼らを呑み込んでいく。
──捕食完了。対象は人、モノ全てを捕食完了。
──幾らかの経験値、スキルを得ました。
物からも知識を、その構成を学べる。
ああ、知識は美味しい。
そして、やはり女子供は便利らしい。
彼らは子供の密売を奴隷へと落としては売っているらしい。
それを商売というらしい。
なるほど、なるほど?
興味深い。
けれども──「後は、あなた、だけ」
「ヒィッ! や、やめ、ろ──」
バクっと食べる。
美味しい。
──幾らかの経験値、スキルを得ました。
周囲には沢山の血が飛び散っていた。
消すのは面倒。
けれども、残しておくのも危険。
彼らの知識と記憶が言っていた。
パカラッパカラッと、その時遠くから、何かが来るのが聞こえる。
「お嬢様! お嬢様ですか!! 良かった! お怪我は……これは、いったい! お嬢様、何があったのですか!」
はて、コイツは誰だ?
「あぁ、何という。ショックで記憶が、そうなのですね。それにこんなに血まみれで、あぁ、何という事か! おい、お前! お嬢様を丁重に街までお送りするんだ! 残りの部隊は周囲の山賊達を探せ! 情報だとお嬢様を狙っていた輩だ! こんなに酷い血の量だ! まだ近くに潜んでいるはずだ!」
なるほど、私を探しに来たのか。
確かに山賊の頭と言われていた奴の記憶には私を誘拐してはキズモノにしては大量の金貨を対価にこの少女の親の商家とやらを没落させる計画が記憶にある。
人間の世界というのは深いらしい。
いや、欲深いと言うらしい。
欲とはなんだ?
性を発散させること?
それが良くなのか?
いや、食べること? 寝ること?
分からない。
答えが多いのか? 答えとは1つじゃないといけないのか?
私は保護されたらしい。
若い男性の前に抱え乗せられては馬は軽快に街という所へと駆け出していた。
馬は殺意に敏感らしい。
私は殺意を殺すやり方を山賊から学んだ。
強さは分からなかったが、色んな事を知れた。
それが私には美味しかった。
美味しいは良いことだ。




