67.私─王都の闇③
「うーん! 朝か」
ダンジョン内でも気候の設定を組んでいるのか。
朝も夜も訪れる。
ダンジョンらしからぬとは思うけれど、それは人工ダンジョンならではと言われたら納得するしかない。
とりあえず、伸びをしつつ整理した記憶を思い出してみる。
計画だとこの時点でセリアは亡き者にされていて、その罪は近くに冒険者が居たら、残念な事に擦り付けられる可能性もあったし、無いとしても表立っては学校側の責任追及で有耶無耶にする予定だったらしい。
杜撰と言えば杜撰。
逆に権力の横行と言えば横行だ。
「そして、今日は定期連絡が無ければ第2陣がやって来ると」
その気配はまだ無いけれども、何かあったらでは遅い。
ウルも居るから直接的な被害は抑えられるだろうけれども、それで安心出来る私でもない。
集合場所に向かうステラ達を隠密状態で見送っては湖畔で手早く魚を数匹捕まえては魔法で火炙りにして食べる事にする。
「採れたては美味しいね。さて、私も後を追わないと」
その後は中層で頑張るステラ達を見守っては周囲を警戒しては上層の野営に至るまで、私は隠密状態を維持しつつ周囲を漁っていたけれども。
うん、やっぱり来たか。
夜に切り替わっていき、視界も暗くなって来た頃にセリア達の場所も把握したのか昨日と同じ装いの暗殺者達が現れていた。
「一班はどうしたというのだ?」
「隊長。痕跡も何も有りません」
「何かあったのでしょうか?」
「いや、落ち着け。都度、警戒を怠るな。それに任務遂行は決まっている。寝静まったのを確認次第、抹殺する」
「「了解」」
うん。私の中での抹殺は決定した。
虎の尾を踏んだ君たちが悪い。
恨むなら恨んでくれても良い。
けれども、娘達には指一本触れさせない。
「そろそろ、時間だな」
「そうだよ、時間だよ。君たちの終わりの、ね?」
「「!?」」
「誰だッ!」
「誰とは物騒な聞き方だね。私からすると君達こそ、誰だと聞きたいよ。全く、本当に愚かな選択ばかりする」
「何奴…」と隊長さん達一同が武器を取り出しては構えるけれども、昨日の集団よりは型落ちだろうか?
散開もしないで未だに集まっている感じに、集団戦に重きを置いている気がする。
「いや、詳しくは君達の記憶と心に聞けばよいか。逃がそうとは思っていないよ。ごめんね、恨むなら恨んでくれていいから、ね?」
「な、にを言って──」
バクンッと私の影が苦しまないように彼らを呑み込むのは直ぐだった。
──幾ばくかの……更新しました。
──対象の記憶、経験、スキルを得られます。
「なるほど、暗部はそう多くないみたいだ」
それに彼ら、昨日の一班。本日は二班で、優秀な部類を集めているようだ。
後にも続くみたいだけれども、どちらかというと何かに偏ってるイメージだ。
後続は無いみたいだ。
あくまでも後詰めとして用意されていたようだ。
「とりあえずはこれで終わりかな?」
ふぅ…と、胸を撫で下ろしては私は今晩の寝床を探す事にする。
小腹は空いてるけれども、我慢だ。
そして、訓練の終わりを見届けてはステラ達が帰宅する前に帰宅出来るように家に帰ってきた私だが。
久し振りにやっぱり、慣れない事をした代償はあるのか心は重たく感じるし、お腹も空いてるしで、お風呂に入る事も気怠く感じてしまい、テーブルで伸びてしまっていたら、ステラ達が帰ってきては、だらし無い私を発見されてしまった。
でも、慣れないのだ。
人としての心が私にあるからには人を亡き者にするのも負担が大きく感じる。
化け物だと言われたけれども、私はやっぱり人なのだと思うのだ。
緊張していたのだろう。
これが守りたい者を守る為に張っていた緊張の糸というやつなのだろうか?
やっぱり、発見されても身体を動かそうとしたけれども気持ちは沈んでいた私が居たのだった。




