66.表─人工ダンジョンでの訓練③
「う~ん…もう少し」
「ステラちゃん、リコちゃんご飯出来たって」
「うん…」
「リコちゃん、どうしよう? ステラちゃん起きる気配が──」
遠くでリコちゃんとセリアちゃんの声が聞こえる。
「ウォン!」と、声が耳元で聞こえたと思ったら、つまみ上げられる感覚と座らされる感覚、後美味しい匂い──?
「ん、おはよ…」
「おはよう、ステラ。後、ウル流石です」
「ウォン!」と嬉しそうにリコちゃんからご飯を渡されて、嬉しそうに尻尾を振るウルを見ていたら、目が覚めて来た気がする。
とりあえず、何とかご飯を食べ終えて野営場所を片付けて上層の集合場所へ向かうと。
皆、それぞれ疲労の顔を携えながら集まって来ていた。
貴族の子も人によっては従者を伴わない方針と、伴う方針の子とかで状況は顕著なのだろう。
顔にその疲れが良く出ていた。
と、言っても私達を避けているから、余計に見えるという事もあるのだと思うけれども。
「よーし! 集まったな! 昨日はご苦労さんだ! 何事もなく、皆が無事で良かったぞ! 今日は中層で軽く戦闘訓練に入る! っと、言っても浅い階層で済ませるぞ? あくまでも、実戦を踏まえるって言うのが大切なんだ。模擬と実戦は別物なのを感じるだけでいい! 各グループで討伐に当たってくれ。これに関しては採点方式は無い。皆に一定の点数を既に与えるから、無理はしないように! その後はまたこの上層で野営をして、この訓練は終わりとなる! 家に帰るまでが訓練だからな? 気を抜くなよ! 以上! 先に先行するのも有り、俺ら教員と共に向かうのも良し! さて、行くか! 一応、中層の入り口で点呼は取るから、覚えとくように!」
「私達はどうします?」
「う~ん?」
「ゆっくりでも良いのでは?」
「……中層でのご飯も考えて、色々と採取しながら行こっか?」
「ウォン!」
賛成! と言いたげなウルに皆、少し頬を緩ませながら、私達は採取をしつつ、中層へ向かう事にする。
中層では点呼の後には入り口付近で焚き火を軽く起こしては食事を取ったけれども、同じ方針のグループは多かったみたいだ。
先生でさえ、食事をとっていたが。やっぱり従者を伴わかったグループはそこら辺が抜けていたのか、羨ましい目を向けてきているのが印象的だった。
「セリアちゃん!」
「は、はい! えっと、ファイアボール!」
「これでトドメです!」
ボコッとリコちゃんのメイスが魔物にクリーンヒットして魔物が倒れて消えていく。
基本的には下層からは本格的なゴブリンやコボルトなどの魔物だけれども、中層はリビングメイルが主体だ。
本当に訓練向けなのだろう。
色んな武器で襲い掛かってくるから、経験にもなる。
下層に近づく程に、スピードもパワーも技量も上がっていく仕様だ。
「略式になると魔法って威力がだいぶ落ちてしまうんですよね」
「想像力の違いだと思いますよ?」
「想像力?」
「前にアメリアも言っていたと思うけれども、魔法はマナにどのくらい想像力を働き掛けて、それを実現させる為のマナとかを操るか、与えられるかで変わるって言ってたかな。まぁ、私もそこまで分かってはいないんだけれどね。へへへ」
「ウォン!」と、ウルが鳴くので皆で見ると片腕を振るうと風の刃が発生しては遠くに現れたリビングメイルを両断していた。
「ウルちゃん凄い…」
「ウォン!」と、誇らしげにするウルを見ては笑いがこみ上げて来ては満足してしまう。
「そろそろ切り上げよっか?」
「そうですね」
「時間も良さそう?」と、セリアちゃんが時計を取り出しては見て、私達は入り口に向かうと同じように戻って来るグループも有って、先生が点呼確認しては全員居るのを確認して、上層へと戻って野営の準備をする。
「やっぱり、ここが一番だよね!」
うんうんと、私は頷く。
湖畔の近くは良いものだ。
いや、通常時は湖畔には魔物も居るから危険だから避けるべきなのだろうけれども。
この人工ダンジョンの湖畔は魚が豊富な位だ。
襲ってくると言っても食べに来る魔物も比較的穏やかな食用の魔物という位で、危険度も更に下がるというもの。
「腕の見せ所です!」
「ま、負けないよ!」
「あっ! 私も釣りするー!」
今夜のご飯は焼き魚は確定だ。
最終的にはウルがバシュっと綺麗に自分の分を確保した量が大漁だったが、ウルも満足そうだった。
「お休みなさい──」と、皆で一夜を明けたらもう訓練の終わりの日は早いものだと思った。
「皆、良く耐え抜いた! まぁ、中々得られない機会だと思って貰えたら助かる。ダンジョンを出たら、今日は各自解散とする! しっかり、寮に戻るか。自宅に帰るまでが訓練だからな! 寄り道はしないように! 寮の子は帰宅してから出掛ける際は門番にその申請をしてから出掛けるように! では! 訓練を終了とする!」
先生の終わりの合図を聞いて、私達は仲良く帰宅する事にする。
帰宅したら、アメリアが待ってるかな? と思いながらも、その足はルンルンと速さが増しているのは皆同じだったと思うのだった。




