63.私─王都の闇①
「さて…私も支度を始めるかな」
ステラ達を見送って、後ろ姿も見えなくなったのを確認したら私は手早く朝食を片付けては準備を始める。
「ステラも心配していたけれども、きな臭い空気は私も感じていたからね」
うん、きな臭いのだ。
それに王家の対応も以前に「自由にせよ」と応えられた時にさえ疑問が湧いていた。
王家にはセリアの未来のビジョンが結局の所、調べた結果は無いと私は判断した。
歴史を鑑みても、基本的には王子にしろ、王女にしろ貴族に取り立てたり、または嫁ぎに出したり、要職に付かせたり、それが当たり前になって行われていた。
それがセリアに限っては幼少の頃から、必要最低限の扱いで育てられ、成人後の対応に関しては空白になっている状況だった。
何よりも暗部が動いているのがきな臭い。
私は各種ギルドにも顔が利いていると思っている。
そのギルド各所に王立学校の人工ダンジョン訓練の際には、一定の人達には近寄らないようにお触れが出ていた。
私にも来ていた。
理由としては、疑われたく無いならば近寄らないようにと遠回しな何かを伝えて来た感じだ。
詳しくは職員の末端では分からないと言われたが、深掘りをする気は無い。
暗部が動いているのは、私がセリアへと視線を飛ばす変な視線に気付いてからだ。
元を辿れば、一般市民に紛れた服装をしていたが身体の捌き方が特殊だったので違和感を持ったのが始まりだった。
後は芋づる式で暗部の正体を掴んだのだけれども、碌でも無いの一言に尽きた。
この国が自由を謳っているのは監視と管理がしやすいからだ。
要は目立つのだ。
そのマークされた存在は常に暗部が目を光らせている。
全く、どうしようも無いものだ。
なら、その強固な管理すらも放逐されたセリアの将来など、想像に難くない。
「はぁ」と溜め息を零しつつ、準備を手は休めずに済ませていく。
っと、言っても着替えくらいだ。
基本的には亜空間に仕舞っているので充分だ。
服も特殊なものだ。
黒い目立たないような服装にしてある。
「どうか賢明な判断をしてくれよ」
どうせ、叶わないだろうけれども。
私はただ少しだけの期待を込めていうが、なるほど現実感が無いな。
「スキルは便利だな」
隠密スキルを発動させたら、私の存在は有るのに無い事に等しくなる。
そのまま、音を立てずに家を出たら、私は姿を隠しながら人工ダンジョンへと向かうのだった。




