62.表─人工ダンジョンでの訓練①
楽しい時間が過ぎるのは早いというのは本当だと思う。
前にアメリアがそんな言葉を教えてくれたけれども、生きるに必死だった私には実感が伴わない言葉だったけれども、今は違うとハッキリ言える。
「おはよ〜!」
「「おはようございます」」
「ウォン!」
「あぁ、お寝坊さんが起きて来たね。ほら、ご飯出来てるよ。今日から人工ダンジョンでの訓練なのだろう? ちゃんと食べて、気をつけて行ってくるんだよ」
「うん!」と、私が応えてアメリアを見るけれども。
その視線の高さも近付いて来ている気がする。
昔は大きいと思ってたアメリアは世間的には少しだけ小柄な女性なのだろうか?
背筋を伸ばして、姿勢が良いのと雰囲気が大きく魅せてるのだと最近、私は気付いて来てる。
そう、セリアちゃんもお迎えしてから既に3年は過ぎている。
4年目に関しては学校の方のカリキュラムも自由になっていて、ある意味進路を考える期間になっていて、3年目の今日から始まる人工ダンジョンでの連泊を通しての訓練が最終的な進学試験とも言える行事だったりする。
「美味しい…!」
「はは、セリアはいつもありがとう。いつもと変わらないご飯なんだけれどもね。私の愛情がスパイスと言っておこうかな?」
セリアちゃんも笑顔が増えたと思う。
まぁ、学校では私達は針の筵みたいな形で扱われてるけれども。3年目となれば慣れたものだ。
それにアメリア曰く、そういうのは放っておけば良いと言っていた。
けれども、ちゃんと世間と言うのには目を光らせないとも教えてくれた。
そういう意味ではセリアちゃんへの風当たりは余り良くないと言える。
最近はそれが顕著になってるとも言える。
何かと言われると分からないけれども、ダンジョンとかで探索していたら、罠があるなぁ…危険だなぁと気付いた時や、その前の空気感みたいなものだ。
リコちゃんはセリアちゃんの進路に関して、王家が難色を示しているし、各貴族が変に意識してるからかもと言っていたけれども、私は不安だ。
前にコッソリとアメリアに聞いてみたけれども、子供は今は心配しなくても大丈夫だよとニッコリと教えてくれたけれども。
アメリアのニッコリはたまに怖い時があるから、ソレに近いニッコリを見て、私は「あ、大丈夫だ」と思ってしまったのも秘密だ。
まぁ、セリアちゃんがニコニコしてくれてるのなら私も嬉しい。
そして、私の最近の役目は週に1回、リコちゃんは王都の冒険者ギルドで働いてるけれども。
受付嬢として立ち始めた頃から、野暮な冒険者がリコちゃんに過剰に接した時のお灸を据える役目だ。
リコちゃんも綺麗になったと思う。
まぁ、アメリアはみんな可愛くなったと言ってニコニコだけれども。
そして、私の事は見事に進化を果たしてウルフ系の中でも最高位の進化を果たしたウルちゃんが見張ってくれてるから安心安全だったりしていた。
大きくなるかな? と不安だったけれども、大きさは大きいけれども、そのままで、もっと毛並みが綺麗になった感じだった。
まぁ、アメリアはもう一段階先があるかもと言ってたけれども、私も知る限り、その先というのは神の領域と言われてる神獣のフェンリルだ。
ウルちゃんがウル様になってしまうのだろうか?
「ウォン?」
フェンリルは喋れるとも聞くし、その時はお話が…いやいや、その前に人化という術もあったような…え、ウルが人に?!
「ステラちゃんー? 食べないの? ん?」
「はっ! た、食べるよ!」
い、いけない。
思考がそれていた。
セリアちゃんの言葉に促されては私は朝食を食べるのに取り掛かる。
そして、パクパクと食べきっては昨夜用意した冒険お泊まり道具をしっかりと最終確認して王立学校へと皆で向かうのだった。




