61.私─家に帰ったらお姫様が居た件について。
「うーん! 人工ダンジョン。少しだけ、舐めていたようだ。情報を修正しないとかな?」
難易度と言うよりは、その素材の充実性についてだ。
四季も、気候や温度、湿度、環境を整えては操っているのか。
鉱石から野草の1つまで、しっかりと自生してるような形だった。
それに魔力が来場者や、国に滞在している人から吸っているのだろうか? 魔力というマナも溢れていて、良い感じになっている。
魔物も場所によっては比較的大人しい食用にも魔物が溢れていて、上層はそんな形だが、中層からは一般人向けの訓練環境で、下層は騎士団とかお抱えの騎士達の訓練環境になっているみたいだった。
流石に、下層で1人で潜っていたらギョッとされたので、手早く苦笑いを浮かべては上層へと戻っていったが。
「なるほど。学生達の訓練の場所としても良いのかも知れない」と、私はそう結論を付ける事にした。
まぁ、分不相応の形で挑んでしまったら、命の危機はあるだろうが。しっかりと安全を意識して取り組めば上層には危険が少ないから大丈夫だろう。
最後に上層で軽く採取を再びしては私はルンルン気分で帰宅する事にする。
すれ違う冒険者や学者、研究者の方だろうかは? 荷物を多く持ち歩いてる印象だが、私は亜空間に仕舞うだけだ。
そう、困るものでもなく。便利なものだ。
さて、そろそろは外食べばかりだと不味いだろうと私は思っていたと歩いていて気付く。
何となく、美味しいお店が多く自然とそちらに足が向いてしまっていたが、そろそろ目ぼしいお店は行けたとも思う。
「そろそろ、私の腕の見せ所というやつだろうか?」
ふむ、と呟きつつ。まだまだ、開いてる商店に寄りながらも買い物を済ませては帰宅する事に私はしたのだった。
……だったが。
「えっと、お客様?」
「ウォン!」っと、ウルが駆け寄ってくるが「うんうん、ウルはカピカピだからね。お風呂してからね」私へと突進してこようとしていたウルをやんわりと断ると「クゥン」と悲しそうな声を上げるが、いや、何だかビチョビチョなのだ。
うん、分かってくれウル。
「それで、えっと、お客様かな?」
「ち、違うよ! お友達だよ!」
「あぁ、前に話してくれたクラスのお友達?」
「ううん! それは仮クラスのお友達! 今日から本格的にクラス振り分けて、そこで会ったの! セリアちゃんって言うんだよ!」
「ん? セリア? それにその容姿……なるほど?」
「あっ、アメリアさん。セリアちゃんは1人で生活してるみたいで…それで…」
「1人? えっと、名前と容姿からすると、王家に連なる者かな? でも、そうなると1人っていうのは?」
「あ、あの…初めまして。い、いえ。1人なのは…私が近くに居ると呪われると言われてて、移ったら大変だと──」
「う~ん? 移るというのはどういう意味だか分からないけれども。遺伝子的な話だとしたら、お子さんに継がれるかも知れないと言うことかな? でも、そもそもに祖先からの受け継いだ遺伝子に既に組み込まれてるんじゃないかな? う~ん、あー……知識がそこまで情報が進んでいないのか。う~ん、これは減点かな。この国は結構、緩いというか、寛容だと思っていたけれども。そっか、そっか…辛かったね。何、居たいなら居ても良いよ。私が許可しようじゃないか」
「え?」
「良かったね、セリアちゃん! 流石、アメリア! あっ、でもお泊まりするなら、親の申請が必要なんだって、そうだよね、リコちゃん?」
「ええ、はい。まだ、学校は開いてるので申請は大丈夫だったはずです?」
「ふ~ん、分かったよ。なら、この食材は冷凍室に入れておいて貰えるかな? 後のはテーブルの上で大丈夫だよ。ちょっと学校の方に私から連絡を入れておくよ」
ちょっとだけ、セリアという子はポカーンとしていたけれど。あれは脳の処理が追いついていないのだろう。
「ククク」と漏れ笑いが出てしまったが、まぁ、良いだろう。
ステラとリコもそれを望んでいるのだ。
そのくらいの甲斐性は私も見せるさ。それに1人なのは寂しいのは分かる。
そう、思うのはきっと私が人として存在するようになったのと。今思えば、無知だった私は誰かと繋がりたいという欲求から知識を求めていたのかもと思い至るのだった。
兎にも角にも、私は無事に申請を済ませて。
向こうの親、いや…国王からの返答は家臣からだろう。
「自由にせよ」との一言で済ませられる範囲で、あの子セリアの待遇が推し量れたのは悲しい事だった。
「アメリア! お帰りなさい! どうだった?」
「そうだね。う~んと、セリアで良いかな? 君はずっと此処に住みたいかい?」
「え? それはどういう…」
「言葉のままさ。伝えづらいけれども、向こうからは「自由にせよ」の一言だったからさ。ものは試しにそれなら、君が求めるなら、期間は無期間で滞在許可を出せるか聞いたら、特に反応もなく「自由にせよ」とまた、言葉が返って来ただけだったからさ。ふふ、私はとりあえず無期間で申請を出しておいたよ。学校側は慌てたようにしていたから、泊まりの際は子供達の方から門番にでも連絡させると伝えておいたから、自由に泊まりなさい」
「いいのです、か?」
「勿論。それが大人の余裕でもあり、私の優しささ。どうするんだい?」
「……します」
ポロポロと俯いて、涙が沢山零れ落ちてしまっていた。
「あらあら、辛かったね。大丈夫だよ。ほら」
「お願い…します。ありがとう御座い……ます」
と、抱き締めた私の胸元でセリアはボロボロと泣き出してしまうのだった。
「これは部屋は…一緒でも良いか。でも、お皿とか足りないかな。う~ん。流石に手料理にしようと思ったけれども、お皿とかも色々と買い足しつつ、お外で食べようかな? あ~、でもアレか」
ウルとかを見るとカピカピだ。
それに私も探索で少し汚れている。
「いや、皆は先にお風呂に入っていなさい。少しだけお皿とか買い足して来るから。後は帰宅したら、私も入ろうかな。そしたらご飯にしよう。分かったかな?」
「はい!」と、ステラに合わせて、返事が返ってきては私は頷きつつ、手早く買い物を済ませては帰宅する。
その後は私もお風呂に一緒に浸かっては【遺伝子】の話をセリアから求められたので、【ここだけの話】として改めて、軽く皆には教えておく。
どう見ても、遺伝子とかの話は私もあの世界が文明が随分と進展した時に知り得た内容だ。
同じ文明レベルを求めるならば、この世界はもっと混沌としているし、人を人として見なさないで解剖等でもっと禁断に触れているレベルだ。
ただ、話としては理解したけれども。思考は追いつくのはピンとは来ていない様子だったのが可愛らしかった。
セリアに関してはとても興味深く聞いているのと最後に「人は知らないというのには、とても怖がるのですね」と、胸を押さえて言っていたのが印象的だった。
そのまま、私の久し振りの腕を見せては料理を披露して、食後は各自マッタリと…私は素材を振り分けたり、軽くポーション類を作ったりとかしたら、随分と時間が経っては遅い時間になっていたので、慌てて皆を寝かし付ける事になったのだった。




