59.私─充実した日々。
「「行ってきます〜!」」
「ウォン!」
「はい、行ってらっしゃい。気をつけて行くんだよー」と、玄関からいつも通り、ステラ達を見送る。
入学も無事に済ませて、もう数日が経過した。
どうやら、クラスの振り分けは一番良いところらしくて、早速友達も出来たとか教えてくれた。
まぁ、その友人も話に聞く限りは中々な気がするけれども。それを突っ込んで聞くのも野暮だろう。
本人達も分かって付き合っていると思いたいし、何事も勉強だと私は割り切っている。
何かあるならば、私がコッソリと助ければ良いとも思っている。
「う~ん! 私はどうするかな?」
チラッと遠目に書斎の方を見てみると、返却申請されているらしい本達がコッチを見ている気がする。
早速、司書の方たちには私は目を付けられているらしい。
うん、いや。目を付けられているというか、図書館に寄る度に小言が増えていっているのが現実だった。
でも、各ギルドからの保証も得られているから。有り難い事に貸し出し数量も結構緩い事になっている。
お陰様で書斎の机の上は本達が無造作に積み重なっている現状だ。
あの頃は古龍の寝床でタップリと時間を掛けて、全ての記憶と経験と数多の本を読み耽ったのだと。実際の人の生きる中での時間で読み耽っていると実感出来ていた。
なるほど、とても素晴らしい事だ。
そう、思える。
時間が有限で満たされないからこそ。そこから産まれる取捨選択が、彩りを与えるのかも知れない。
これがステラの言っていた「腹八分目」という概念にも近いのかも知れないと、私はふと思う次第だった。
「いやいや、違うな。そうだ、商業系ギルドで、販売委託の商品を渡して、後は錬金術ギルドで前の話にあった精錬した魔法金属を渡して──お昼も食べないと。いや、夕方迄の時間には図書館にも行きたいような。うーむ」
そう、悩みながら書斎を抜けては錬金術等をしている部屋に入っては素材を見ては在庫が少ないのも気になる。
「人工ダンジョン、行ってみるかな」
採取場所の定番でもある。
いつか、学校の授業の一環でもステラ達が潜るかも知れないとは聞いてるから、下見を兼ねるのも良いだろう。
うん、そう思うととても理想的な1日のプランが出来上がったと私は思う。
フフン♪ と、口ずさみながらも手早く支度をしては私は人工ダンジョンへと足を向けては歩み始めるのだった。




