57.私─セントリアでの過ごし方。
「さて、見送りも終わりかな」
私は不安だったのだろう。
本人達はそんな不安などは、おくびにも出さないでケロッとした表情でウルと共に王立学校のクラスの振り分けの試験へと向かっていった。
入学前にある程度の知識や実力を計っては王家、貴族、商家、平民、貧民までも身分は関わらずにクラスを振り分けるらしい。
らしいというのは、私はあくまでも聞いただけの立場だからだ。
でも、ステラもリコも実力は折り紙付き出し。その知性もしっかりとしている。まぁ、大丈夫だろう。
「問題は私かな?」
う~んと、背伸びをしつつ青空を見ては考える。
背伸びをした際に出る所が出ていたのだろうか。
物凄い視線で学校の門番からの熱い視線を浴びたが、私はケロッと気付かないふりを振る。
ペシッと、自分の執事やメイドだろうか?
子息や息女の子たちも私に視線を奪われたのか、数名はお小言と手を出されては正気に戻ったように学校の試験に挑みに行くのかな?
頑張り給え若人達よ。
「ふふふ、働かずなる者、食うべからず…か」
やれやれと首を振っては思考する。
とりあえず、私王都セントリアでの生活スタイルを決めないとかな。
定職だと、ステラやリコに何か有ったら困るから却下だろう。
そうなると、やっぱりギルドに委託しつつ、冒険者の街レイストみたいな生活が理想かな。
「ふふ。なら、今日はギルド巡りと洒落込もうかな? 後は図書館も探さないと」
学術区画として、貴重な本は立派な図書館に保管されているらしい。
月毎の契約で入館手続きや、場合によっては貸し出しも許可されてるとは伝え聞いてるので確かめないと。
ウキウキしているのを感じる。
なるほど、これが人の心というやつなのだろう。
機敏というのが、あの頃はピンとは来ていなかったけれども、今なら分かる。
こういうソワソワした気持ちなのだろう。
クゥ~というお腹も聞こえる。
「私のお腹からか…ふふ、ちょっと足りなかったかな」
私の分の朝食も多めに、あの子達に渡して上げたからだろう。
空腹も悪いものじゃない。
うん、ギルドに行く前にまずは各ギルド周辺の美味しい所のリサーチも必須だろう。
夕方頃には試験も終わるらしいから。自宅で合流の手はずにしている。
頑張れ、ステラ、リコ。
そう、最後に振り返って学校を見ては私はとりあえず歩き始めた。
「ああ。アナタがあのアメリア殿ですか」
時にはアメリア様だったが、私の事はある程度把握していたみたいだった。
卸し方とか相談したら、思いの外すんなりと事が運んでは「ん?」と首を捻る感じになったが、受付の方々曰く、中々マルチに動いている方も珍しい中で、冒険者の街レイストでも実力はそれなりに認められていたらしい。
すんなりと契約書等を作成して貰ってはサインをして、販売経路や委託の形が取れたのは嬉しかった。
王都にも周辺は森があるから、素材の採取にも困らないし、冒険者の街レイストと比べては一段は落ちるイメージだが、ダンジョンも点在している。
それに珍しい事に王都セントリアでは昔、勇者と呼称されているがダンジョンを踏破してはコアを壊さずに一時的に封印しては持ち帰り、国として人工ダンジョンの作製に成功しているのも大きいだろう。
主に学校関係者や、学術区画の方々の素材集めとかに使われている側面が大きいけれども、ダンジョンはダンジョンとして立派なものだ。
私も冒険者としてのライセンスもあるから、素材集めには困らないだろう。
ちょこちょこと錬金術ギルドや商業系ギルドにはお世話になる事が出来そうだ。
「ふふん♪」と、後は結構美味しい食事処の確認も私は余念が無かった。
やはり王都だからだろうか? 色んな調味料や素材が集まるからだろうか、レパートリーや食文化の派生も感じられた。
「おお!」と、図書館も即座にそれなりの金額になったが月毎の利用料を払っては身分証を掲示して、貸し出しの許可の申請もしておいた。
禁書指定の本も許可が下りるなら読めるらしいというのは大きいと思った。
結構、柔軟な思考の下に、この国は運営されているらしい。
毒にするか薬にするかを委ねているともいうが、私はそういうのは嫌いじゃない。
とりあえず、色んな文献も有って、気付いて読み耽っていたら、時間が夕方を過ぎる位になっていて、私は慌てて帰ることになるのだった。
ちょっぴりだけ、ステラ達の目が「む〜」と、拗ねる視線が可愛らしかったが「お疲れ様」と撫でてあげると、その眉間のシワも取れて安心した。
「ほら、色々と美味しい所も調べてきたんだ。行かないかい?」と言うと、ピョコピョコと耳が反応したように思える。
ふふ、と内心笑みを零しては私は夜ご飯へと皆を誘うことにする。
その後はいつも通りに皆でお風呂に入ってる時に、お互いに今日の話をしては、一緒に眠りに就くのだった。




