53.私─冒険者としての日々。
この街に訪れて、幾月か過ぎた。
進展があった事と言えば、庭付きの物件を借りた事だ。
冒険者ギルド近くの提携している宿屋に主に寝泊まりしていたのが、毎回、湯屋の時間を考えては切り上げたり、場所もサイクルが早いのか長期借りるのが難しかったりで、最終的にはお風呂付きの物件を借りる事で落ち着いた。
そして、私は自分のスペースが出来た事でやりたい幅も増えたので、ちょっとした錬金術で装飾品を作ったりして、たまにダンジョンで取れた魔石と合わせては小洒落た商品を生み出しては商業ギルドも登録しては一角を借りて、露店販売やギルド内の販売ブースを借りては売るようになっていた。
錬金術ギルドと薬師ギルドにも所属したので、近く魔法薬や回復薬も売り始める予定だ。
但し、治療目的などに踏み込んでしまう治癒師ギルドという教会関連の職業の領域なので、そこら辺は線引きしてやらせて貰う事にしている。
お風呂も大きく、一匹と2人が一緒に入っても良い感じだ。
ウルとステラの部屋も用意しようと思ったのだが、寝るのは一緒が良いとのことで、結局は寝室兼個室? になるのだろうか? は1室で、他は私のお仕事部屋になってしまっている。
外食の回数も減ったと言える。
本格的に料理を始めてみては、まぁ失敗も時にはあるが楽しいものだ。
これだけでもお釣りが来るとは思うが、何よりも時間を気にせずダンジョン内で寝泊まりしつつもクエスト依頼を受けれるのがステラとウルには大きかったようだ。
但し、やっぱり休日は挟むようにしつつ。思いの外、私は心配性だったみたいで、クエストに出かける際は必ず同行するようにしている。
良くも悪くもまだまだ幼いのだ。
幼いのだ、幼いのだ──と思い続けて、ステラとウルも初級、中級と言われるダンジョンも踏破出来るくらいには立派になった頃にギルドマスターからお呼びがあって、会いに行くと思ってもみなかった提案があった。
「いやな? うちのギルドでステラと同じくらいの受付嬢が居るのは知ってるか? アイツを王都の王立学校に行かせたくてな? 名目上は休日は向こうの冒険者ギルドで研修みたいな扱いで、な。冒険者ギルドの本部からも、生え抜きで将来希望な子の支援は謳われていてな。それで、なんだが、一緒に同行するパートナーでステラ、どうだ通ってみないか? 王立学校、良いところだぞ?」と、そんな風にギルドマスターがニコニコとステラに勧誘をしてきていた。
「パートナーというのはなんなのだ?」
「あー、そうだな。いや、人によっては執事やメイドを同伴する制度だったんだが、今や尚家や平民出からも通う優秀な子が多くてな。王家の場合は未来の近衛になる感じか。まぁ、とりあえずだ。商家の場合は側近の小間使いだったり、平民出の場合は同じく優秀な友達だったりも一緒になるような制度になりつつあるというか、まぁ、なってるんだ。それで、どうだろうって、話だ。悪い話じゃないだろ?」
「住まいとかはどうなる?」
「向こうの学園寮もあるし、希望なら通いもあるが。通いの場合はうちの受付嬢リコも一緒に通いになるな。パートナーとは一緒の行動っていうのが原則みたいだからな。ど、どうだ?」と、ちょっと、コチラを結構窺う素振りでギルドマスターが聞いてくるが「アメリア、ウル。私どうしたら良いかな?」とステラは尋ねて来たので「これはステラの人生の話だから、決定するのはステラだよ。でも、私に助言を求めるならば可能性の幅は広げた方が、将来の選択肢が広がるからオススメかな。何、通いにするか、学園寮に住むとか、色々と考えるのは後で一緒に考えてあげるよ。ステラの思った気持ちをそのままで良いと私は思うよ」と私が言うと。
「うーん、うん。狩りとか討伐とかは最近はもうお腹いっぱいだと思ってて、アメリアのお手伝いするかとかも考えてたけれども。私、行ってみたい!」と、元気に答えてくれたので、ステラの頭を撫でつつ「そっか、そっか、分かったよ」と私は答えつつ。
「そういうことになる。ギルドマスター、ここは1つ私からもよろしく頼みます」と頭を下げると、「ハハハ、お願いするのはコチラだ。リコにも話をこれから聞いてみるが、ふんわりと受付嬢仲間で聞いた時は色よい返事だったから大丈夫なはずだ。色々と詰めないといけない部分もあるが、また相談させてくれ」とギルドマスターも頭を下げては手を差し出して来たので、私はその手を握っては握手する。
そっか、王都か──。
少しだけ、懐かしいような痛みを感じるような。
何とも言えない胸中になるが、今は隣でキラキラとこれからに期待しているステラを見ては、その頭を大事に大事に撫でるのだった。




