49.私─討伐をする。
「受諾されて来ました!」
「ウォン!」
「そっかそっか。よしよし」
自然とした手つきで頭と、そして身体を撫でていた。
人間とは変わるものなのだと、自身を通して理解する。
感情とはそれだけでも素晴らしいのだ。
「どれどれ。一角ウサギ、ゴブリン。低ランクの魔物討伐か。丁度良さそうだ」
「うん。色々と回りながら狩れるモノを選びました!」
やっぱり、ステラとウルは優秀だな。
ああ、コレが可愛いと言うやつなのだろう。
そして、そのまま門衛の方々とも今は顔見知りだ。
行きの間にお昼のご飯などを買い付けては街を出る際には挨拶を交わしては私達は狩りへと向かう。
「うーん? ウル、居そう?」
「クゥン」
「居なさそう、だね」と、鑑定を掛けつつ広範囲で探してるみたいだ。
ちゃんと言いつけを守っては実践しては採取を行っていたら、見事にステラとウルは鑑定スキルが生えたようだった。
後は使えば魔力を多少は消費するがスキルとは育つものなので、小まめに使う事を勧めている。
コツは対象を絞ったり、または広範囲に掛けたりと意識する事だと今は伝えている所だ。
それが出来るようになったら、今後は詳細な見方へと深掘りしようと私は育て方を考えていた。
後は、そう簡単には居ないものだ。
街の周辺は冒険者がそもそもが狩っているから、自然発生するペースよりも狩るペースの方が早いのだ。
それ程までに平和だとも言い換えられるが、でも今回は当たりみたいだった。
「ウォン!」とウルが嬉しそうに鳴いては、まるでそこに急に現れたかのようにガサガサと一角ウサギが出現していた。
魔物の生まれるパターンは何通りかはあるみたいだが、この場合は魔力が集まっては生まれたパターンのようだ。
その他のパターンは魔物同士の交配から順当に生まれる場合とダンジョンを通して生成される場合だろう。
この自然発生みたいな形で魔物が生まれる光景はこの世界を創った神様のシステム的な働きなのだろう。
一度、創られた世界とは言え呑み込んだ私には、そんな微細な当たり前とこの世界に働き掛けては疑問に思わないようになっているのか、小さな事だが、大きな事が目に見えては世界の在り方を俯瞰しては見ているのだった。
まぁ、ステータスや鑑定。
レベルアップにスキル。
自然ではない生命の創造と練成。
手に取るように神様と思われる手の入れようを感じる。
まぁ、良いさ。
これはこれで私は満足しているのだ。
「てやっ! ウルちゃん! そこッ!」
「ウォン!」と、一鳴してはパクっとウルは一角ウサギを横から噛み付いては見事に狩りを成功させていた。良い連係だ。訓練の成果が十全に発揮されているといっても良いだろう。
うんうん、素晴らしいかな。
「アメリアー! 狩れたー!」と、嬉しそうにコチラを見ては手を振るステラに、コチラも手を振り返す。
ウルも嬉しそうに尻尾を振りながら、誇らしげに私の下へと一角ウサギを連れて来ていた。
「じゃあ、血抜きをしておこうか。鮮度を保つにもその後はアイテムボックスに閉まっておいてあげよう」
「ありがとう!」
よしよし、と頭を撫でてはステラとウルが血抜きをする作業を見つつ、アイテムボックスに関して考える。
コレの習得方法は何とも言えないが、確かに物の持ち運びには便利だ。アイテムカバンなんていうのもダンジョンでは宝箱から見つかることがあるみたいだ。
きっと、ピッタリなのだろうと。
「アメリア、お願い!」
「ウォン!」と、ウルが血だまりになった穴を埋めてはステラが持ってきてくれた一角ウサギを仕舞う。
「もう、周囲に魔物は居なさそうだね。戻りながら、素材を採取しては帰ろうか?」
「うん!」
「ウォン!」とステラとウルの返事を聞きながら、私達は歩き出す。クエストは討伐依頼だけれども、素材の採取も買取はやっている。ランクアップ的な信用ポイントというか、それに基づいてる部分のアレには反映されないだけだ。
反映されなくともステラとウルは昇級試験には挑める位には信用が溜まっているらしい。それは私も同じか。
とりあえずは、一人と一匹の誇らしげな姿を目に収めつつ、私も素材を採取しては帰るのだった。
図書館の本に関しても、良い感じに読み進めることが出来ている。
以前のように睡眠を要らない身体では無いから、常に読み進める事は出来ないが、それでも人間の括りとしては結構な速度で読んでいると自負している。
まぁ、睡眠を必要な身体とは不要なものだと以前の私は利用価値で推し測っていたから、そんな風に思っていたのだろう。
今は違う。
ステラとウルと一緒に眠る布団は幸せなのだ。
幸せとはこういうものなのだと理解出来た。
睡眠とは良いものだと理解出来た。
そして、夢というのも人間になって見るようになった。
ああ、食べては人の人生を見る作業は夢とは全く違ったのだ。
ズキッと心が痛んだが、この痛みも私だ。
考え事をしていたら、採取をしようとしていた手が止まっていたらしい。
こんな隙を見せるのも人間になってからだ。
「おーい!」と、そんな私に気付いては、少し遠くからステラが私を呼ぶ声が聞こえてくる。
これじゃ、どちらが保護者なのだか。
私はそんな不甲斐無い私も好きになりつつあった。
心がじんわり温かくなっては素材を採取して、立ち上がってはステラ達の所へと歩いて行くのだった。
──世界はこんなにも素晴らしく温かい。




