45.私─冒険者ギルド。
「おいおい、こんな女子供が冒険者ギルドなんて来る所じゃないぞ? なんだ、このちっこいワンコロは」
ゲラゲラと笑う、身なりが悪い男に私は囲まれていた。
とりあえず、ステラとウルを庇う形で私は前に進み出る。
「おいおい、優しさで言ってあげてるのよ? それか? 俺たちと遊ぼうかお姉さん? ほらッ」
私は虫の居所が悪かったらしい。
そんな表現の意味を本で読んでも分からなかったのに、今は分かる。
ステラとウルを小馬鹿にされたのが許せなかったらしい。
この私が、だ。
それに気付いたのは、私に手を伸ばして来た男の手を軽く捻るつもりが、グルンっと、回転させては床に叩き付けていたからだ。
「グヘッ」と、踏み潰されたゴブリンのような声を発しては男はグッタリとしている。
一部始終を見ていた冒険者は我先にと視線を外し、囲んでいた男達は目を丸くしていた。
奥に見える受付嬢もコチラを驚いた目で見ていた。
受付嬢なら、仲裁位はして貰いたいものだと、あの世界で働いた事がある私は漠然と思ったが「あら、ごめんなさい。加減が悪くて」と、一声謝っては「ステラ、ウル。行くわよ」と言っては受付嬢の所まで歩いていくと、自然と道が出来ては譲って貰った私は受付嬢へと真っ直ぐ来る事が出来ていた。
「えっと、冒険者ギルド内の暴力は──」
「ゲラゲラ絡むのは良いの?」
「えっと──」
「どうなの?」
「すみません」
「身分証の発行ついでに冒険者登録をステラと、後はウルと私の従魔登録をお願いしたい」
「は、はい! 今、用意しますので少々お待ちを!」
そう言っては受付嬢はパタパタと駆けていく。
「アメリア、カッコいい。それに口調、昨日と違う」
「ふふ、ありがとう。口調は時と場所と相手によって変えるのがコツなのよ。覚えとくと良いわ」
「は、はい!」
「いい子ね」とステラの頭を撫でると、ウルも撫でて貰いたいのか、身体を擦り寄せて来たので一緒に撫でてやる。
暫く撫でてやっていると受付嬢が戻ってきては記入用紙を出して来ては「文字は書けますか?」と聞かれたので、私はまずは用紙を見てみると文字が読めたので「なるほど」と呟いてはペンを取っては走らせると文字が書けた。
ふむ。自動翻訳、自動書記のスキルでも働いているのだろうか。
けれども、ステラは書けない様だったので書いてやった後に、物はついでに受付嬢に読み書きを習う事は出来るかと聞くと、冒険者ギルドで受講料を払えば読み書きやスキル、戦い方を学べる──所詮は初心者講習と言った所だろうかがあるという事で。私はステラと私自身の分を支払っては講習を受ける事にした。
ステラと私は良くも悪くも世界を知らない。
私は言わずもがな。ステラも奴隷育ちだ。
ステラに学べる事を伝えると嬉しそうに笑ってくれたので、私の顔も意図せず緩んでしまっていた。
ウルの従魔登録を済ませては、講習はこれからあるという事だったので、そのまま私とステラは受講をする事にしたのだった。




