44.表──不思議な旅人。
私はルーランの街で、それなりに長く商いをしては経営をしている。
まぁ、よく言えば商人だ。
取り扱う物は基本的には何でも取り扱っているので、便宜上は道具屋と名乗っている。
なので、物の買取も当たり前だがやっている。
そんな中で、不思議な客が店仕舞いをしようとした私の店に訪れていた。
「店主よ。まだ、営業はしているかな?」
「閉める前だが、客とあれば営業するぞ」
パッと見たら、不思議な服装だ。
そして、何という美人だ。
年甲斐も無く、ポッと見惚れてしまっていた。
「それは有り難い。買取をお願いしたくてね」
「ほほう、ほう? これはこれは?」
ジャラと机の上に出されたのはキラキラと輝く装飾品だ。
綺麗に宝石だと思われるものは加工されており、輝きが増すような技術が見られる。
「美しいですな。ああ、表で似たような美しい指輪が展示されていたから、どうかと思ってな」
「ふむ。これくらいでどうでしょう?」
「もう一声は難しいところかな?」
「うーむ? そうなりますと、困るところですな」
「ははは、それなら迷惑料で買取価格を下げて貰って良いから、情報を教えて貰いたい」
「ふむ? 情報ですかな?」
「私もこの子も身分証を失くしてしまってね。先程、街に訪れたばかりで、美味しい飯処や、良さそうな宿屋も知らないんだ。身分証の発行するにも久し振りの街でちょっとやり方がね」
「はぁ、身分証ですか。基本的には在住者には街を治める領主様などが発行しておりますが、旅の者ですよね? それならば、各ギルドで登録すれば、それが身分証としても効力があるから、オススメですな。それに、そこのウルフは従魔かな? 登録証も失くしているのなら、冒険者ギルドですな。宿と飯処は私の知り合いが営んでいるから、紹介をしましょう。では、情報量を下げるのは忍びないので、アレですな。紹介状分をサービスと言うことでどうでしょう?」
「ああ、ありがとう。助かるよ」
「いえいえ、これからもご贔屓にでは金銭と紹介状を認めて来ますので、お待ちを」
そう言っては私の取り出した装飾品を綺麗に閉まっては裏へと持っていって、暫くしたら紹介状と金銭が入った袋を持ってきてくれた。
私達は商人から宿と飯処が一緒になっている、知り合いの宿屋を教えて貰いつつ、本日はそこで一泊するのだった。
朝方には部屋もサービスも良かったので、追加の連泊の願いと宿泊料を収めては冒険者ギルドへと向かうのだった。




