39.私─世界に順応する。
「大丈夫ですか?」
そんな声が目の前の少女からした。
あぁ、言葉は分かるようだ。
なら、私の言葉も「大丈夫だよ」と伝えたら、少しの間の後に少女はコクリと頷いていた。
「少し待って貰いたい」
そう、伝えては先程、処理を終えた記憶や経験、スキルを整理する。
その工程は驚くほど、スムーズであっという間に終わったのと、今までの幾らかしか得られなかった分の、不足分、そして、それ以降の処理分。全て充足な量が私の記憶、経験、スキルとして得られるようになっていた。
原因は分かる。この7つの大罪スキルの影響だろう。
コレは公にはしてはいけないスキルだと直感スキルが伝えているし、これが産まれた原因は私の背後にある機械装置が原因だろう。
機械装置の中の世界でも同じ事をしようとしていたのを記憶で思い出す。
世界を想像してはそこから無限のエネルギーを取り出しては半永久的に運営する方式だ。
ただ、アレには現在の状況と私の大量の知識と知恵を合わせると1つの仮説が生まれた。
生み出した世界と現在の世界が食い合ったのでは無いかという推論だ。
結局は魔力というものも、あやふやな物なのだ。
古龍という存在の本能にはそういうのを防ぐ為の機構としてバランスを保つ必要性を植え付けられていた。
要は、食い合わないようにしようという発想だろう。
だけれども、それを私が食ってしまった。
結果、知らない内に私の居た世界とこの世界は食い合う事になって滅んだのだろう。
そして、滅んだ後も機械は動いていたが管理している存在が──いや、それだと私の生まれの辻褄が合わない事に?
そう思い、機械をつぶさに調べてはログを見つけては読み取ると、機械を起動した瞬間に食い合ったのか、管理機能が消失しているのが見て取れた。
あぁ、失敗したと言うわけか。
そして、バグから私が生まれてはバランスを司る古龍を食べては、内包世界でも管理しきれなくなってきては私が盛大に食べ尽くしては、エラーの末に壊れてはバグとして私は排出されたのは良いが、何故身体が?
最も重い罪と言われる傲慢の可能性が高いのか。
私という存在を定義づける為に、その結果が身体が生まれた? でも、その為のエネルギーは……私が食べきったのか。
そうだ、私は多くの罪を重ねて産まれて来たから7つの大罪スキルが付いたと言う訳か。
生み出した人が似合いだろうに、皮肉な事だ。
でも、この世界には魔力が溢れている。
機械の方も初動で食い合った事で、安定して内包世界のエネルギーで賄っていたのだろうか?
なるほど、興味深い。
「あ、あの──」
「うん?」
「大丈夫、ですか?」
あぁ、彼女の存在を忘れていたね。
そっか、でも誰の目にもついてないから──。
いや、違うな。
私はそう。
【人間】なのだ。
ならば、私は世界に順応しないといけないだろう。
そして、この大罪を背負っているからには何かを考えようじゃないか。
「ああ、大丈夫だよ。それで君の名前は?」
「わ、私ですか?」
「そうだ。ちなみに私はアメリアという」
ステータスと言えば、なるほど便利だ。
自分の表記が出てくる。
これはこの世界に生まれた時に本能に付け加えられた情報だろう。
何となくだが、その時点で神的な存在を私は感じたが、世界が一度滅んでも放置していた存在だ。
あの世界と同じ事をこの世界でやってしまっても見向きもされないだろうし、私という存在を得た今は無用の心配だ。今の私の目的は、また今から作ればいい。
「えっと、私は──」
私のステータスは名前と種族以外は偽装を施している。
人に見せられたものでは無いことは、既に考えずとも想像がつく。
目の前の少女を鑑定しては名前が空白なのが分かる。
「私は──」
そう、言葉につっかえては少女は泣いてしまう。
「そうか、名前が無いのか。なら、私が付けてあげよう」
「え?」
「ん? 嫌か?」
「いいのですか?」
「構わんさ。名前くらい安いものさ。そうだな、君の名前はステラだ。意味は星だ。私を見つけてくれたのだからな、一等星だ。そして、ステラーと長く呼ぶと、私が良く口にする、素晴らしいという意味にもなる」
「へぇ~……」
と、少女は目を輝かせては私を見てくる。
「ありがとう。……お母さん」
「ん? お母さん?」
「そうだよ? 名前を付けてくれる人はお母さんなの」
「それはお前を、ステラを産んでくれた人なのではないか?」
「うん。でも、名付けをしてくれるのもお母さんなの。でも、私のお母さん、お父さんは奴隷で死んじゃったから。お母さんは名前はいつか、育ててくれる人に付けて貰いなさいって、その方が可愛がられるからって」
「なるほど、確かに理に適っている」
確かに、人は愛着を持つと優しくなると聞くし。
その知識は私にも食べた者達の中にもある。
「だから、お母さんなの。……だめ?」
「高い買い物をしてしまったようだな。良いだろう」
どの道、新しい目的を探そうとしていた所だ。
私自身も人として種族が決まっていると言う事は寿命はあるはずだ。
……いや、待て。
古龍のスキルを確認すると不老不死があった。
少しだけクラッと立ち眩みをしては、でもそうだと思い付く。スキルはスキルで打ち消せる。私には大罪スキルがあるのだ。
私自身が終えたいと願うときは、その時は打ち消しては、その生を終えたら良い。
とりあえずは、お腹が減った。
それによく見れば、少女はステラはボロボロだ。
私もよく見れば、何も纏っていない、あられのない姿だ。
亜空間は──素晴らしい。
そして、やっぱりと思う。
亜空間が世界を、創られた世界のも内包しているのなら。
世界とは亜空間みたいなスペースを挟んでは保っているのでは無いかと。
それなのに世界の中にダイレクトに世界を創造したのだ。クッションの亜空間が無ければ食い合うのは必然だったのだろう。
そうなると、亜空間を間にすれば世界は創造出来ることになるのでは?
あぁ、それがダンジョンなのか。
そして、アイテムバッグも似たような物か。
答えはすぐそこに合ったじゃないか。
青い鳥はなんだったかな。そんな書物もあったな。
人は──いや、今はそれは私も該当するのだろう。
なんと、愚か者なんだろう。
「ほら、コレを着たまえ。いや、その前に髪を切っては洗ってやろう」
水魔法で水を浮かべては火魔法で適温にしては、適当に洗髪剤等を亜空間から取り出してはステラを洗ってやる。一緒に私自身も洗っては、ステラの髪を切ってやって、乾かしては、私もステラも服を着て、そのまま亜空間から取り出したご飯を食べて一息つく。
「ステラはこの世界には詳しいか?」
「分からない。私は奴隷だったから、ごめんなさい」
「謝る事はないさ。私も似たような者だから。ならば、色々と旅をしては世界を知っていこうじゃないか」
「うん」
さて、少々埃っぽいけれども、敵の姿も無いと見える。
一眠りしてから行こうじゃないか。
そう言って、私とステラは仮初めの家族して始まり、そして、眠りに就いたのだった。




