38.表─ある少女の話。
奴隷商人から何とか逃げ出して、私は駆けていた。
母は奴隷だった。
父も奴隷だった。
私にはそれくらいしか知らない。
けれども、少し前に。
ううん、さっきまで両親は生きていた。
けれども、私を逃がすために2人は犠牲になった。
次に運ばれる先は皆が死ぬと言わている場所だったからだ。
親は私に愛を注いでくれていた。
私は一目散に森に駆け込んでは逃げていた。
途中からは追い掛ける声や音がしなくなった。
けれども、私は怖くて怖くてずっと走っていた。
そして、何もなくなって、1人だと気付いたら、もっと怖くなった。
怖くて怖くて、どうしようもなくなっていたら──ボフンッという変な音を近くから聞こえた。
気になって見に行ったら、小高い丘の上で土埃が舞っていた。
こんな場所に?
私は気になって、観に行くと。
そこには穴が広がっていては、そこから覗くと人が──ううん、とても綺麗な人が横たわっていた。
ドクンっと、心臓の跳ね上がる音が聞こえた気がした。
助けないと。
そう、自然と思ってしまった私は降りれそうな所を見つけては、おっかなびっくりしつつも降りては彼女の下に辿り着いたのだった。
「うぅ──」
そんなうめき声と共に彼女の閉じた目がピクピクと動いては目が開いてはその綺麗な瞳は私を映すのだった。




