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32.裏─古龍の記憶。
一番古い記憶は何だったろうか。
私が私を産まれたと自覚した時には私の世界はそこにあった。
まだ、生命という数も少なく。
今でいう人という種族も居なかった。
ある長く生きる者、所詮はエルフといつかは呼ばれていた存在は私を世界を創りし者と言っていた。
それは不思議な事だ。
私は私として居た時は既に世界は有ったのだから。
ただ、私と同じような存在は居なかった。
同じ龍種、またはドラゴンと呼ばれる竜種も居たが何処からか生まれ出でたようだった。
私はその私すらを産み出した存在を彼らの言う神だと仮定している。
私には本能がある。
それは世界のバランスを壊さないようにする事。
だから、影響が大きい私は籠もることにしては生命が訪れる事が無いように結界を張ってはゆっくりと眠る事にした。
安寧の世界が続くように祈りながら、浅い薄い記憶を薄氷の上を歩くように生きていた。
──そんなある日、私の記憶は途絶えたのだった。




