30.裏─黒い悪夢。
王立学校は未曾有の危機に陥っていた。
急に現れた黒い深い闇に生徒や教師、そして学校長までもが呑み込まれては食べられていたからだ。
全て、誰が何処に居て。
どんな癖や特徴を持っているかを熟知したような動きや搦め手で、立ち向かう相手は容赦無く喰らっていた。
最悪なのは、そのまま化け物は王立図書館へと潜入しては、そこの蔵書の全てと、禁書指定のもの。
合わせてはそこに封印していた王家の秘蔵の品も全てがしらみ潰しに食べられてしまったことだ。
後には塵1つ残っていなかったと報告には上がっている。
そんな、今しがた少し前に実際にあった嘘のような報告を王家の直属の騎士団の団長の私の下へと届いていた。
王は騎士団の派遣を命じられたが、騎士団もその化け物に喰われては、化け物の動きが変わっては、今度は狙いすました様に各所属のギルドを襲っては人材も、資材も全て、全てをたいらげては、最期は誰も知らないような王家の抜け道や金庫や宝物庫を根こそぎ拐っては悪夢は消えていった。
そうだ、消えたのだ。
王家、ひいては国の打撃は計り知れないものになった。
資金源も無くなり、各ギルドも崩壊。
騎士団でさえ、団と名乗るには人材も消えた。
冒険者も高ランクパーティー達が冒険者ギルドに月の切り替わりということで、訪れていたようで、彼らの消息は不明だ。
王立学校に関しても、教師陣含めて関係者。
貴族、商家、有望な平民からの子息、息女も飲み込まれてしまったらしい。
何ということだ。
どういう事だ。
その日を、黒い悪夢の日と誰かが言っては。
その黒い悪夢の日と呼ばれるのが通説になった。
そして、王都は、国は──その日を境にして今までの成長が嘘のように急速に失墜しては長い長い寒い冬のような時期が強制的に訪れるのだった。




