28.裏─王都の冒険者ギルドの新人受付嬢。
非常に優秀な新人の受付嬢が移動してきたらしい。
そんな噂が一人歩きをしては、気になって見に来る奴が多かった。
元々、受付嬢というのは言い換えてしまえば冒険者から見たらアイドル的な存在でもある。
そのお披露目となれば、推しの受付嬢が出来るかもと観に来る冒険者が居るのも事実だった。
そして、そんな冒険者1人1人の心を射止める受付嬢が確かに移動してきていた。
非常に優秀なのでは無く、驚異的に優秀なのだと後に周りは思うのだった受付嬢は最初は冒険者1人1人の名前を的確に覚えていた。
冒険者は冒険者だ。
それ以上でもそれ以下でも無い。
しかし、新人受付嬢はもう一歩踏み込んでは彼ら、彼女らという個人まで焦点を当てては認識していた。
当然、彼ら、彼女らは気を良くするし、心を許すというやつだ。
彼女の働いて居ない時の冒険者ギルドは少しだけ悶々と過ごす冒険者が生まれてしまう程だった。
そう、彼女は受付嬢をしつつも冒険者からの握手などの肉体的接触も拒む事が無いのも大きかった。
基本的に彼ら、彼女らは身綺麗を心掛けてはいるが、それでも出来る限度はある。
やはり、臭うのだ。後は、返り血等で汚れていたりも当たり前だ。
でも、その新人受付嬢は嫌がる素振りも無く、心から嬉しそうに握手をしてはちゃんと労っている程だ。
それだけでも彼ら、彼女らのハートは鷲掴みだった。
内務の事務作業も彼女は優秀だった。
処理速度が早いのだ。
右から左へと書類を精査しては纏め上げては、計算や読み書きもこなしている。
最初に軽く教えたら、その後はスポンジが吸収する速さ程ではない。
水を注いだら、注いだ速度で吸収しているような物だと私たちベテランの受付嬢の談だ。
その働きから、私たちの冒険者ギルドの信頼を勝ち取っては貴重品等、冒険者ギルドでの取り扱いの金庫や倉庫の管理も彼女は手を伸ばしていた。
時に、1点1点、しっかりと精査してはチェックを付けており、やはりその真剣さにはギルドマスターも納得顔で頷いているのだった。
いつか、彼女は冒険者ギルドではマスコット的な立ち位置に収まっては愛されるようになるまでは時間の問題だった。
そんな彼女は今日も笑顔で冒険者達を捌いては握手やハグを受け入れている。
うん、向こうの冒険者ギルドでも言われていたようだが、控えめに言っても天使だと私は思う。




