26.裏─王立学校の噂話。
「ねぇ、知ってる? 新しい噂」
「噂? 何かあったかしら?」
「1つは図書館のお化けよ! 真っ暗な図書館に物音がするんですって! でも、何も無いんですって!」
「えー、でも図書館って警備が厳重じゃん。誰も入れないだろうし、そんなホラ話なんて、昔からあるようなものじゃない」
「で、でもでも! 今回は違うらしいですの!」
そんな姦しくも女子生徒は噂話に華を咲かせていた。
「なぁ、知ってるか?」
「なんだよ、俺は今眠いんだよ」
「いや、良いから聞けって。男子風呂のさ、行方不明だった男子生徒の話だよ」
「なんだよ、それ?」
「誰も見たことの無い生徒が入浴してるらしいぜ!」
「いや、そんなの分からないだろ。俺たちだって、全校生徒を知るわけじゃないし。偶然、知らないやつが居るって発言が多かっただけで、そもそも入学してないと風呂は使えないだろ」
「だから、行方不明の男子生徒なんだよ!」
「はぁ、馬鹿馬鹿しい。寝る」
そう言って、夜更けの際に噂話に興じる男子生徒が居たり。
「アナタ、聞きました?」
「何をですか?」
「いえいえ、変な噂ですよ」
「どんなのですか?」
「1つは学食のコックやシェフが食材を時々、紛失してる噂よ」
「それは噂じゃなく、事実じゃない。帳簿と合わないからって、連日大変だった時があったじゃない」
「後は、お風呂場がヤケに綺麗って噂!」
「生徒が綺麗に入るようになったのでしょ? それだったら、学校自体が、最近、綺麗になってきてるじゃない。所々まで掃除が行き届いているようで、教職陣営や学校長でさえ、満足していたじゃない」
「でもでも、私たちは何も変わってないのにおかしくないですか?!」
「さぁ、どうなのかしらね? アナタは午前の仕事、終わらせたの?」
「い、いえ、まだ」
「なら、噂話なんかに興じてないでお仕事しなさい。クビになるわよ。私を巻き込まないで」
そう言って事務職員がそれぞれ別れていく。
不可思議な事象としては、確かに表沙汰にはならない程度に違和感の芽は確かに学校には根を張り巡らされてはいたのだった。




